第10話 二日目 昼(2)

僕は解散したあと、再び寺口の小屋に来た。っというのも広場を出る際に神川に声をかけられたからだ。彼の遺体は既に施設内にある花畑の中に埋葬したため血生臭はあるもののいくぶんかましになった。

「犯人、いや人狼はなぜ寺口を殺したのだろうか……もともと寺口に因縁を持っているやつか?」

「たぶん一番怪しかったからだと思う。一番人狼だと思う人が人狼に襲撃されてたら錯乱状態になるからね。だからもともと因縁がある線は低いと思う」

「なるほど、……だがもう一つ謎がある」

「謎?」

神川は小屋の奥にある机の上にあるメモ帳を手に取った。

「このメモ帳なんだが、最初のページが破られているあとがあるんだ、なのにゴミ箱にはそれに合うような紙はなかった」

僕はそのメモ帳を手に取り確認した。確かにそこには破られている後があった。しかし机の周辺からゴミ箱まで見たが、その後に合うような紙はなかった。僕は言った。

「……つまり人狼が持ち去った?」

「ああ、そういう事になるな」

「その紙には何が書かれてたんだろう……」

すると小屋の前に荒井がやって来た。

「やっぱアンタたちここにいた。出来れば来るなら報告して欲しいわ、探すの大変だから」

「あ、ごめん」

「まあ、いいわウェルナー君ちょっといい?」

「あ、了解」

僕は荒井に外に呼び出された。そしてこう言われた。

「あなた視線でいいわ、誰が一番黒っぽい?」

なるほど、皆にこう聞きに言ってるわけか、確かに個別に聞くだけはある。

「グレーで考えると桜田さんか菊岡かな、特にこれっていう理由はないけどなんとなくね」

「うん、わかったわ。……なんかわかった事ある?」

「それは神川に聞いて、僕よりも断然いい答えが出ると思うから」

「……わかった、じゃあ神川君呼んで」

「了解」

僕は彼女の元を去ると神川に伝えて再び周りを見渡した。しばらくして神川も帰ってきた。聞かれた内容は同じだった。そして投票の30分前に広場に集まれという命令が出された。まだ時間に余裕があった。

「占い師に二人いるときは真と狂人である確率が高いんだよな?」

神川の質問に僕は答えた。

「うん、人狼が占い師を語るのはなかなかみない」

「なるほどな、狂人は誰が人狼かがわからない……だから初日は適当に白だしするわけか」

「……流石だね……」

この短時間でここまでルールを理解できる初心者がいるだろうか。

「とりあえずこれ以上一緒にいると疑われてしまう。またあとで会おう」

「う、うん了解」

僕は寺口の小屋を出た後寺口の墓場である花畑まで行った。するとそこには手を合わせている先客の姿がいた。

「あ、ウェルナー君どうも」

雷ヶ浜だった。彼女は少し無理をしたような笑顔だった。

「雷ヶ浜さんも寺口のお参りに?」

「……うん」

僕は雷ヶ浜の隣に並ぶと同じく手を合わせた。僕は日本人のこういう精神が好きだった。

「……驚きだよね……ただの人狼ゲームのはずなのにほんとに死ぬなんてね……」

「……」

何も言えなかった。確かにこれはただの人狼ゲームだ。なのに、寺口という犠牲者がもう出てしまった。これはただのお遊びからデスゲームへと変わったのだ。たった一日で。

「……寺口く…ッん……ごめ……ッんね……」

隣を見たら雷ヶ浜は泣いていた。僕はしばしどうすべきか迷ったが、側にいて泣き止むのを待ってあげる事にした。

「…………ッありがと、ウェルナー君、もう大丈夫だから」

彼女は泣き止んだらしく笑みを浮かべてこちらを見た。僕はそんな彼女に集合時間を伝えそのまま小屋へと向かった。

 既に集合時間まで残り一時間をきっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る