この子はだあれ?ご主人様
春が来て、夏が終わり、秋も冬も過ぎ去って。そんなことが何回も繰り返されて、ご主人様は高校生になった。
毎日学校や塾で忙しそうなご主人様。だけどボクの散歩は、欠かさずやってくれている。ボクはそんなご主人様が、やっぱり大好きだ。
「ハチミツ、散歩に行くよ」
今日もまたいつものようにボクはリードをつけられて、ご主人様と一緒に家を出る。それにしてもご主人様、すっかり大きくなっちゃったなあ。前はあんなに小さかったのに。
小学校に入ってすぐの頃は、散歩の途中で迷子になったりしていたけど、もちろん今はそんなことは無い。いつもの散歩コースの公園に向かって一直線だ。
途中横断歩道で信号待ちをしていると、ご主人様が言ってきた。
「今日は紹介したい子がいるから、仲良くしてあげてね」
紹介したい子?いったいどんな子だろう?
誰かは分からないけど、ご主人様の知り合いならきっといい子に違いない。ワクワクしながら公園に着くと、そこに張ご主人様よりも背が低い、小学校高学年くらいの男の子がいた。
男の子はご主人様を見ると、こっちに駆けてくる。どうやらご主人様と男の子は顔見知りみたいだけど、もしかして紹介したい子って、この男の子の事なのかな?
すると思った通り、ご主人様はその子をボクに紹介してくる。話を聞いてて分かったけど、男の子は最近ご主人様と仲良くなった小学生で、動物が好きだからボクに会わせてあげたかったようだ。
「ハチミツって名前なの。触ってみる?」
「はいっ!」
男の子はそっとボクの頭を撫でてくる。あ、この子からも良い匂いがする。さすがご主人様のお友達だ。何だか嬉しくなったボクは、男の子に頭をこすりつける。
「わっ、くすぐったい」
もっふもっふ、もっふもっふ、ボクは思う存分男の子にじゃれつく。男の子はとても幸せそうにボクの体をそっと撫てくれて、ちょっぴりくすぐったかったけれど、とっても気持ちがいい。
「人懐っこくて可愛いですね。そう言えば、どうしてハチミツって名前なんですか?」
「そんな感じの色だからだよ。ちょっと単純なつけ方だけど」
「そんなこと無いですよ。シンプルイズベストです。だよね、ハチミツ」
ボクは「わん」って鳴いてそれに応える。この名前はご主人様がつけてくれた、とっても良い名前だ。その良さが分かるだなんて、この子は良い子だなあ。
ボクは男の子とすっかり仲良くなって。帰る時間になってもまだ遊んでいたいって気持ちになっちゃった。けど、我儘を言ったらいけないから、これでサヨナラだね。
すると、男の子がご主人様に言ってきた。
「もし迷惑でないのなら、また遊ばせてもらっていいでしょうか?」
え、また遊んでくれるの?やったー、ボクももっと遊びたいー。
ボクは期待を込めて、ご主人様をじっと見つめる。するとご主人様はクスリと笑ってそれに答えた。
「全然良いよ。私も塾とかあるから毎日ってわけにはいかないけど。予定が合う日でよければ構わないよ」
「本当ですか」
良かった、これでまた男の子と遊べる。ボクはもう一度男の子に体をすり寄せ、全身で喜びを表現する。
新しい友達ができて、とっても嬉しい。男の子に喜んでもらえて、ご主人様も嬉しそう。
ご主人様、また皆で遊ぼうね。
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