第10話 いざ、王都へ!
「そういえば、これからどうすんだ?」
一応、被害があった村に行くという当初の目的は果たされたわけだし、これからのことを知って置かないと旅を再開することも出来ないしな。
「それなんですが、とりあえず王都に行こうかと思ってます」
王都か……、前からちょいちょい話に出てきたけど、実際どんなとこなのか知らないから結構気になってたんだよな。
「ちょっといいか?」
「どうかしましたか? メイビスさん」
「王都に行って何をするんだ?」
「目的は2つです。1つはあなたにギルド登録をして正式に私たちのパーティーに加わってもらう事です。もう1つは、まあ端的に言うと祭りです」
「ま、祭り?」
「はい、3日後から2日間に渡って王都での建国祭があるんです。旅続きで中々休みが無かったので、休暇の代わりにと思って」
「な、なるほど……」
祭りねぇ、ゲームやアニメとかだとよく見るけど、建国祭って本当にあったんだな。きっと美味い食べ物いっぱいあるんだろうけど、お金持ってないから何も買えない……。悲しいな。
「あ、俺も質問いい? 王都ってどこ? ここから近いのか?」
「別に近くはないですけど、王都の近くには
転移門ってあれだよな。体が光って塵みたいになるやつ。あれはびっくりしたなー、心臓に悪いし。
「ふーん、ちなみに王都での目的ってそんだけ?」
「そうですね……、ちょっと国王にでも会っておきましょうか」
「いやちょっと待て、国王様ってそんな簡単に会えるもんなの?」
「まあ普通は無理ですけど、私は城への立ち入りが許可されているので平気です」
「何と言うかまあ、さすが勇者だな。でもなんで王様に会わなきゃ行けないんだ?」
「先程メイビスさんと話して分かったんですが、どうやら魔王軍の幹部が何か企んでいるようなので、それについて話しておこうかと」
「何かって?」
「分かりません、けれど
「ふーん、なるほどね」
確かに備えはしておいた方がいいと思うけど、今のままじゃ情報が少なすぎる。せめて魔王軍とやらの目的さえ分かれば、手の打ちようもあるんだけどな。けどそれも噂とかのやつじゃなくて確かなやつじゃないといけない。
魔王軍のやつに直接自白剤でも打って情報を吐かせられたらいいのに。この世界に自白剤なんてあるかどうか知らないけど。いや、実はそういう魔法があるのか? まあ、どちらにせよ魔王軍のやつを捕まえなきゃ話にならないか。
「なあなあ、そんな事ここで悩んでいたってしょうがないし、ワタシは早く王都に行きたいんだが」
どんだけ王都に行くのが楽しみなんだよ。いや、俺も楽しみにはしてるけど。
「そうですね、ここにいても始まりませんし、ひとまず王都に行ってから考えましょうか」
「まあそうだな、って何してんの?」
エールが唐突に落ちてた木の棒で地面に何かを描き始めた。傍から見たら、公園で落書きして遊んでいる子供みたいみたいだな。そしてその光景を座って見ている俺とメイビス。なんだこれ、めちゃめちゃシュールだな。
「転移門を作っているんです」
「えっ、転移門ってアレじゃダメなの?」
そう言って俺は奥の方を指さす。
アレとは俺が昨夜、逃げ回ってる間にこの広場まで来る時に使ったやつである。
「あれは出口用の転移門なので無理ですよ」
「出口用?」
「そもそも転移門とは、入口用と出口用があって、それぞれ対になる術式や刻印が必要なんです。出口用からは転移できませんし、違う刻印同士では転移出来ません」
「じゃあ転移門って毎回違う刻印とやらを書かないといけないのか?」
「いえ、一つの出口用の転移門があれば、入口用はいくら作っても問題ありませんよ。」
なるほど、つまり出口となる転移門を用意しておけば好きな所に入口用を作ってどこにでも行けるってわけか。いいなそれ、めっちゃ便利じゃん。というかやっぱりすげぇな勇者、なんでもありだな。
「2人とも、準備出来ましたよ」
そんな事を考えているうちに終わったらしい。転移門を見てみると、確かにこの間のとは違っていた。中心の刻印は鷹ではなくライオンみたいなやつになってるし、転移門から発せられる光も赤ではなく黄色だ。
その時、俺はある疑問を持った。
「中心の刻印って何か意味があるのか?」
「特には無いです。別に動物の刻印でなくてもいいですし、もっと言えば術式が違っていれば刻印も必要ないんです」
「じゃあなんでこの転移門や他のやつにはわざわざハイクオリティなライオンが描かれてあるんだ?」
「それは私の趣味ですね」
「あっ、そうですか」
動物が好きなんだな。だとしても、ライオンのような肉食獣なのは女の子としてどうかと思うけど、ここはあえて何も言わないでおく。
「いつまで話しているんだ、転移門が出来たなら早く行かせてくれ」
この人はこの人でさっきから落ち着きが無いな。王都に行くのどんだけ楽しみなんだよ。
「じゃあ行きましょうか。準備はいいですか?」
「もちろんだ!」
「お、おう」
「では、行きます」
そう言って手を合わせて、目をつぶるエール。その次の瞬間、俺達の体が光って塵みたいに崩れていった。
ちくしょう、またかよ! 本当に心臓に悪いからやめてくれよ。ていうか、これはエラーじゃなくて仕様だったのかよ。
「これ元に戻るんだろうな……」
という独り言を呟いた瞬間、俺の意識が飛んだ。
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