第8話 エルフ戦ついに決着!

 え? 早くね? 見つかるの早くね? なんでこんなに早く見つかったんだ……って、絶対この魔法陣だろ。だってこれ結構目立つぞ。


 ていうか、これどうしよう……。

 やばいよ、絶体絶命の危機だよ。隙を見て魔法陣に飛び込んで見るか? いや、多分後ろ振り返った瞬間にぶった斬られるような気がする。

 しょうがない、今さっき考えた『一か八か作戦』をするか……。

 その方法は至って単純、両手を上げて降参するだけ。


「ほう、自ら降参するとは、随分といさぎよいじゃないか。せめてもの情けだ、痛みが無いよう一瞬で葬ってやろう」


 エルフは俺に近づいて、ゆっくりと剣を抜いた。

 気づけば、もう眼と鼻の先まで来ている。そして、剣の刃を俺の首元に近づけた。


「バカめ、かかったな!」


 俺はエルフの腕を掴み、そのまま後ろへと飛び込んだ。俺の後ろには当然、あの魔法陣がある。


「ちょっと一緒に来てもらおうか!」


 魔法陣に入った瞬間、俺らの体が光って塵みたいに崩れていった。

 おいこれちゃんと元に戻るんだろうな。2人だからエラーが起こるとかないよな。



 気づいたら、俺はさっきの村があった場所にいた。どうやら成功したみたいだ。


「ふぅ、助かった……」


 そういえば、あのエルフどこに行った?さっきまで掴んでいたはずの腕も、エルフの姿も消えている。

 立ち上がってエルフを探そうとした時、


「シンティ!」


 横からエールの声が聞こえた。


「大丈夫ですか?」


 なんか、このセリフ毎回言われている気がするんですけど……、まあ俺が弱いから心配されるのは仕方ないか。


「ああ、大丈夫だよ。それより、あのエルフは?」


「二人同時に転送されたので、おそらく座標に誤差が生じて、少し離れた所に転送されたと思います」


「なるほど、じゃあもう少しは大丈夫なのか」


「その間に、あなたに話しておきたい事があります。実はあのエルフ、何者かに操られてるかもしれません」


「操られてる?」


「あくまで推測ですけど、その可能性が一番高いです」


「誰に?」


「これも推測ですが、エルフ程の者を操るとなれば、魔王軍でも幹部クラスの仕業でしょう」


「じゃあどうやったら、その洗脳は解けるんだ?」


「術者を倒すか、あのエルフが自力で解くか、あとは……、待ってください、来ました」


 エールが森の奥を指さすと、あのエルフが姿を表した。それはもう、大層お怒りのご様子だった。


「よくもやってくれたな、貴様ら絶対に殺してやる!」


 そう叫んだと思えば、こちらに向かって走り出して来た。


「シンティ、どうにかして彼女の動きを止められませんか?」


「無茶言うなよ……」


 正直一つだけあったんだけど、一か八か作戦、もとい諦めた振り作戦はさっき使っちまったし、さすがに同じ作戦に二度は引っ掛からないだろ。

 ……まあ、最終手段としては1つあるんだけど。


「どうにかしようと思えばできるんだけど、一つだけ確認してもいいか?」


「なんですか?」


「どんな重傷を負っても治すことって出来るか?」


「出来るか出来ないかと聞かれれば、一応出来ますけど、一体何をするつもりですか?」


「それだけ聞けりゃあ十分だ!」


「え、ちょ、シンティ!?」


 俺はエルフに向かって全力で走り出す。

 あのエルフも拍子を突かれたのか、一瞬だけ動きを止める。その間に、俺は瞬間加速アクセルモーメントで距離を詰める。


「くそ、喰らえ!」


 エルフは剣を俺の心臓に向けて突き出す。しかし、それは咄嗟のことで反応が鈍っていて、遅く、威力がない悔し紛れの一撃に過ぎなかった。

 だから、簡単に避けられる。

 ……はずだった。


「ぐ、ガハッ!」


 しかし、俺はあえてこの攻撃を避けなかった。むしろ、逆に自分から剣に向かって刺さりに行った。目的は一つ、エルフの動きを止めるためだ。

 心臓に剣が突き刺さり、激しい激痛に耐えながら、俺は力いっぱいエルフの腕を掴んだ。


「この、離せ!」


 本来ならすぐに抜けられるほど、俺とこいつの力の差は圧倒的だ。

 しかし、動揺してエルフの力が入っていないのか、俺の力が急激に強くなったのか分からないが、俺はしっかりとエルフを捕えている。


「エール、今だ!!」


 口から血を吐きながらも、全力で叫んだ。

 その叫び声が響き渡るよりも前、気づけばすぐ横にエールは来ていた。


「ありがとうございます、シンティ。あとは任せて下さい」


 エールは静かにそう言い、エルフの頭に手をかざす。


強制排除エンプション!」


 エールがそう叫ぶと、薄い青色の光がエルフの体を包んだ。やがて光が消えると、今度はエルフの全身から黒い煙の様なものが溢れ出た。


「ぐっ、があああぁぁ!」


 次の瞬間、エルフは剣を離し、頭を抱えて叫び出した。そしてすぐに意識を失い、力なく倒れた。


「や、やったのか?」


 安心したせいか、足から力が抜けてその場に座り込んでしまった。

 その時、俺は思い出した。自分の心臓に剣が突き刺さっていることに。


「あー、やっべ、こりゃもう手遅れだわ」


 俺の心臓からは、全身の血が無くなるんじゃないかと思うほどに出血していた。

 それから間もなく、糸が切れたように意識を失ってしまった。

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