第6話 第一村人発見!
「あー、よく寝た!」
疲れていた分、沢山寝られて目覚めが素晴らしく良かった。
てか、超久しぶりに沢山寝た。転生してから1日しか経ってないけど。まあ、する前から真っ暗な部屋で生活してたから、時間感覚なんて完全に狂ってるが。
そういえば、エールはどこに行ったんだろう? テントの中には居なかったし、外で朝飯でも作ってるのかな。
「まあいいや、とりあえず起きるか」
俺はテントの外に出る。エールは……あれ? いない。近くにいる気配もしないし、どこに行ったんだ?
その時、後ろからガサガサという物音が聞こえた。俺はゆっくりと後ろを振り返る。
そこにいたのはエールだった。何だ、脅かすなよ。てか、どこいってたんだ? まあいいか。
「何だエールか、おはよう。いい朝だな」
「おはよう、じゃありません。もう昼ですよ。いつまで寝ているつもりですか」
あれ、もうそんな時間? というか今何時? そもそもこの世界は俺の世界の時間感覚と同じなのか?
まあ、こんなこといくら考えたってキリがないし、難しいことは分かんないから気にしない方向でいこう。
「いやホントにごめん。昨日疲れていたから、寝すぎちまった」
「い、いえ、まあ昨日は色々ありましたし、それなら仕方ないですね……とにかく、ご飯の用意が出来てますから、はやく食べて下さい!」
顔を真っ赤にして、そんなに大きな声出すなんて、なんでそんなに怒ってるんだよ。俺そんなに悪いことはしてないぞ。
「ところで、目的地まであとどんくらいで着くの?」
俺は昼飯の焼き魚を食べながら聞いてみた。どうでもいいけど美味いなこの魚、塩加減が絶妙だ。
「あと30キロぐらいですかね」
「長っ!? 昨日あれだけ歩いて、それしか進んでないの!? まだ半分も行ってないじゃん」
「昨日は割と遅めに進みましたから。なので、出来れば今日中に目的地に着きたいです」
それはつまり、俺に死ねと言ってるのか? 昨日のあのペースで進んで、あんな事があってめちゃめちゃ疲れたんですけど……。
「あまり時間もありませんので、もう出発しますよ」
「お、おう」
エールは足早に歩いてく。昨日とは比にならないほど速い。俺はついて行くだけで精一杯だった。それにしても、本当に何も無い森だよな、つまんねぇー。
――数時間後――
「も、もう無理、限界……」
もう辺りが暗い。足がプルプル震えてるんですけど。もう途中から自分が何してるのか分からなくなってきたぞ。
「頑張ってください、もう少しですから」
「お、おう、任せとけ……」
5分ほど歩いて森が途切れ、開けた場所までやってきた。そこにあったものは俺が予想していたものとは掛け離れていた。
「な、なんだよこれ……」
元々はそれなりに、大きな村だったのだろう。けれど、残っていたのは焼け焦げた家の柱や、木片ばかりだった。酷すぎる。街はあんなに平和そうだったのに。
「誰がいないか探してみましょう」
エールは俺に木の棒を一本渡してきた。そして、パチンと指を鳴らすと、木の棒が燃えだした。なるほど松明か。
「よし分かった。じゃあ、手分けして探そう。その方が効率がいい」
「分かりました。お互い、何か見つけたら知らせること、30分後にここに集合してください。いいですね」
「OK、んじゃまた後で」
「はい、シンティも気をつけて」
エールと別れて、20分ほど経ち、俺は今比較的損傷が少ない、恐らく教会であろう場所にやってきた。もしかしたら誰かがいるかもしれない。
しかし、そんな希望は一瞬で打ち砕かれた。扉を開けて中を見てみると、そこには砕け散った、木製の椅子や、石像が転がっていた。
「うわぁぁぁぁ!?」
そしてその隣に、おびただしい数の人の焼死体があった。一人ひとりの表情が苦しみに溢れていた。中には、頭蓋骨が砕かれ脳みそまで飛び出してるものや、胴体が真っ二つに裂かれているような死体。
もう何人いるのかすら分からなくほどの、おびただしい数の死体がその教会にあった。
「う……うぉえぇぇ!!」
物凄い吐き気がした。グロアニメやゲームでは全然平気だったのに、これが本物ってやつなのか。ひとまず深呼吸だ。そして、神社でするように両手を合わせて、願った。
「成仏して下さい」
もう1秒でも長くこんな所にいたくなかった俺は、足早に教会から出ていく。
「はぁ、はぁ、一体誰がこんな酷いことを……」
……ここで考えたって仕方ない。もうすぐ30分経つな。とりあえずはエールと合流しよう。
「何かありましたか?」
「死体以外は特に見なかったよ。そっちは?」
「こっちも同じです。けど、そうですか…。もしかしたら、この村にもう生き残っている人はいないかもですね」
「すまねえ、俺がもっと早く移動出来ていたら……」
「いえ、この状況からして、ここが襲われてから、数日経っています。あなたのせいではありません」
「そんなこと言ったって……ん?なあエール、あれなんだと思う?」
俺は左の方を指さして、エールに知らせる。
あれは…、人!?
松明を持っているが、フード付きの大きなマントを着ているため、顔までは分からないけど、あれは絶対に人だ。
「やったぞエール、もしかしたら生き残った人かもしれない!」
向こうもどうやら俺たちに気づいた見たいだ。松明を落とし、剣を抜いて走ってきた。
ん? いやちょっと待て、なんで剣持ってるの!? やべえ、もうすぐそこまで来てる。
「どわぁぁあぶねぇー!?」
あいつ絶対本気で殺す気で剣振りやがった。ギリギリで後ろに跳んだから避けられたものの、不意打ちとか、なんて卑怯なやつなんだ。
「大丈夫ですか、シンティ?」
「まあ何とかな。それよりも、おい! そこのマント野郎、いきなり攻撃してくるとはどういう了見だ!」
不意打ちとか人としてどうなんだよ。全く、なんで戦いになるとどいつもこいつも不意打ちばっかりしてくるんだよ。大して戦って来たわけじゃないけど。
その時、エールが小声で話し掛けてきた。
「シンティ、合図したら
「あ、ああ分かった。任せとけ」
エールは俺の前に出てきて、あのマント野郎に向かって言った。
「落ち着いて下さい。私たちはあなたの敵ではありません」
「うるさい! お前ら人間の言うことなんて、もう信じないぞ!」
声からして、おそらくこのマント野郎は野郎ではなく女なんだろう。そんなことを思っていたら、エールが唐突に俺に話してきた。
「シンティ、私から目を離さないで下さい。いいですね?」
「えっ?」
そう言い残して、俺の視界から一瞬でエールが消えた。いや、早すぎるんですけど。
「
エールもあのマントの奴もなんてスピードだよ。もうこれ完全にドラゴンボ〇ルの戦闘シーンと同じじゃんか。
ていうかあのマントの女、なんでエールと同じ速度で動けるんだよ。確かエールの素早さが俺の20倍ぐらいで、その動きについていけるとか、あいつ人間じゃねえぞ。エールも防戦一方だし、これ大丈夫か?
「っ! しまった!?」
落ちていた木材にエールが足を取られる。けど、この状況において一瞬の隙は即ち死に直結する。そして当然、相手がその隙を逃すわけが無く
「貰った!」
大きく構えて、渾身の突きを放つ。
だが、エールはまるでこの時を待っていたかのように、微笑して、片手で相手の剣を鷲掴みした。当然素手だからエールの手が切れて血が流れ出てくる。うわぁ、いたそー。
「くそっ、離せ!」
流石に相手も動揺が隠せていない。必死に剣を引き抜こうとしているが、剣はピクリとも動かない。
エールは自分の剣を離し、もう片方の手を相手の顔の前に出した。
「
そう叫ぶとエールの手が白く光った。
やばい、この距離でも超眩しい。あんなの至近距離で食らったら、
「ぐぅ、目が、目がぁ!?」
そりゃそうなるわ、ていうかもしかして今のがあの有名なム〇カのセリフなのか!?
「シンティ、今です!」
「おう!」
よし、やっと出番か。待ちくたびれたぜ。
俺は、エールの元へ全力で走り出す。
「
手を伸ばせばすぐに届くまで距離を詰める。あと少し、あと少しだ。俺は右手をマントに伸ばす。その時、
「!!?」
そいつは俺に気がついた様子でこちらを振り返って、俺の右側に飛び退いた。おい、なんで見えてないのに俺の来る場所がわかったんだよ。
まずい、俺は今スピードを出しすぎて止まることが出来ない。
それに、勢いよく飛び出して、腕も伸ばしきってるから体勢を変えることも出来ない。畜生、せっかくエールが作ってくれたチャンスなのに、無駄にして終わるなんて嫌だ。
「諦めてたまるか!」
体を右側に向かって全力でねじらせる。そしてそのまま、左手でマントを、
「掴んだ!」
俺は力を振り絞って腕を引く。よし、マントを奪えた。けど、これどうしようか。大してスピードは落ちてないし、地面に対して背中向けちゃってるし、こりゃ終わったな。とりあえず
「ぐぅっ……」
物凄いスピードで、背中から地面に突っ込む。摩擦のおかげで5、6mぐらい程度しか引きずられなくって助かった。
「いってぇ!くそっ、毎度のことだが痛いもんは痛いんだ!」
やがて砂埃が晴れ、視界がはっきりしてくると目の前にエールがいた。
「大丈夫ですか、シンティ!? 立てますか?」
うぉ!?ビックリした。いつもいつも、急に目の前に来るのやめてよ。
「ん、おお、大丈夫だ。それよりも見ろ、どうだ、マント奪ってやったぞ!」
「ありがとうございます、シンティ。ちょっとそのマントを貸してくれますか?」
いつになく真剣な顔で言ってきたので、俺は反射的にマントをエールに差し出す。いや、別に俺が持ってても特に意味は無いからいいんだけども。
「!? このマントもしかして……」
きっと何か重大な事に気がついたんだろうけど、俺が聞いてもどうせ何言ってるか分かんないし、ここは気にしなくていいか。
そうだ、せっかくマントを奪ったんだから、あいつの顔でも見てみよう。
「まじかよ……」
「どうかしましたか、シンティ?」
「なあエール、あれって……」
そう言って、自分の前方を指さす。俺が指さした方角をエールが見ると、彼女は目を見開いた。
「あれは、まさか……!」
『あれ』が指すもの、それはもちろん先程のマントの女の事だ。しかし、そのマントの中身は、俺の予想の遥かに上を行くものだった。
白に薄いオレンジを混ぜたような髪の色、透き通るような白い肌、そして、常人の2倍はある先の細い耳。これらの特徴が導く答えはただ1つ。
「なあエール、あれってもしかして……」
「はい、あれは
「「
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