第4話 飛竜と戦うとかヤバすぎるだろ!
「よし、行くか」
俺は、覚悟を決めてから勢いよく森の中を出て広場の周りを走り出す。まずは、
“グルアァァァァァァァァァァァァァ!”
自分で出しておいてなんだがこの世のものとは思えないような声だった。案の定、今の声でこちらに気づいた飛竜が、猛スピードでこっちに向かって走って来る。
とりあえずは、走る。けど、どうせすぐに追いつかれる。だから、すぐそこまで近づいたところで、次は、
だが、その一瞬で俺は飛竜の視界から抜け、飛竜がそのまま、勢い余って目の前の大木に直撃する。木は真っ二つにへし折れ、飛竜はその場に倒れる。
よし、今がチャンスだ。
「食らいやがれ、
黒い玉が当たり、黒い膜が飛竜を覆う。が、ほんの数秒で黒い膜が吹き飛び、飛竜が立ち上がった。
まあ、最初から通用するとは思ってなかったけど。それにしても、結構な勢いでぶつかったはずなのにぴんぴんしてらっしゃる。むしろ、怒っているのか、さっきよりも元気になっている。よし、こうなればプランBだ。
まずは、
しばらくして俺が広場の中央まで逃げて来た頃に振り向いて、俺は叫んだ。
「
黒い霧が飛竜に直撃……しなかった。飛竜は空を飛んで霧を避けていた。そのすぐ後、飛竜が口から炎を吐く。
「くそ、
間一髪でそれを避けたが、すぐに、二発目、三発目が飛んできた。なんとかそれを避けたが、カスった。熱い、痛い。
おいこら、空飛ぶなんて卑怯だぞ、降りてきて正々堂々と戦え。
あ、そうだ、さっきエールから貰ったこれが使えるじゃねえか。俺はポケットの中から小さな玉を取り出し、それを飛竜めがけてぶん投げる。
それは、飛竜の目の前で弾けとび、俺が腕で隠していても眩しいと感じるほどの閃光が発生した。
光を直接見てしまった飛竜が、叫びながら落ちてきた。ざまあみろ。
ズドン!!!!!
地響きがするほどの大きな音を立てて、飛竜が俺の正面に落ちてきた。
「よし、今だ。
今度こそ、黒い霧が飛竜に直撃する。飛竜の周りの地面がへこむほどめり込んでる。効いてる効いてる。よし、プランB成功だ。
「ふう、あとは、エールを起こして、倒してもらえば万事解決だな」
しかし、俺がエールのいるところへ行こうと後ろを振り向いた瞬間、飛竜が唸り声を上げながら立ち上がった。
「へ? いやいや、何で立ち上がれるの? 2Gあるんだぞ。こいつ、足の筋肉どうなってやがる!?」
立ち上がった飛竜は俺を見て、大声で叫び、突進してきた。流石に2Gもあればそれなりに遅くなっている。
「よし、ここは確実に避けて反撃を食らわせてやる。
先程まで酷使させた足が悲鳴をあげている。さっき治すの忘れてた。
!? やばいもうすぐそこまで来ている。
……これ、間に合うか?
「
俺がそう叫んだのとほぼ同時に、飛竜が俺に体当たりし、体ごと吹き飛ばした。俺は20mぐらい離れたところにある木に叩き付けられた。
「ガハッ、いってえ!」
けど、生きてるって事はどうやら間に合ったみたいだな。それにしても、えらく飛ばされたな、この野郎、なんてパワーだよ。あいつは……疲れてるのかな、全然動かないな。やっぱり2Gはかなり役立ってるみたいだ。
とりあえず、
「嫌だな、プランCやるの」
でも、生き残るためにやるしか無いよな。魔力もだいぶ回復したし。
「行くぞ、
今思ったが、魔力が全部無くなる時ってすごい疲労感があるんだな。そんな事を思っていると、辺りが何も見えなくなるぐらい真っ暗になった。それだけじゃない、匂いも、風も何も感じない。完全に隔離されてるみたいだ。
まあ、普通ならこんな所にいたら何も出来ないんだろうけど、俺には最後のスキル、
「ふぅ……いくぞ、
すごい、さっきまで何も見えなかったのに、今までよりもハッキリと見える。匂いも感じるし、音も聞こえる。
すぐ目の前にいる飛竜も辺りをキョロキョロと見回している。明らかに戸惑いが隠せていないようだ。それもそうだ、何も見えなくて、聞こえない、匂いも感じない。五感のうち3つも潰されているんだ。野生としては、この上ない大ピンチだろ。
「よし、今がチャンスだ!うおぉぉぉぉ!」
俺は剣を大きく振り、飛竜の足を斬りつける。しかし、刃は足に当たった瞬間に止まってしまった。…鱗固すぎんだろ。
刃が当たった感触を感じたのか、飛竜が足を振る。けど、見えてないのに攻撃しようとしたって無駄だし、それぐらい俺でも避けれる。
けど、こっちの攻撃も効かないんだよなぁ。あ、そうだ、鱗で覆われてない部分を斬ればいいじゃないか。頭良い、俺天才。
「んじゃ、まずは羽から。おりゃ!」
勢いよく羽を斬りつける。流石に羽はモロいからよく斬れる。
グガァァァ!
飛竜も痛みを感じたみたいだ。大声で叫んでいる。俺は少しずつ場所をずらし、何回も斬りつける。飛竜は凄く暴れているが、俺には一切当たらない。その隙に、俺はどんどん斬る。
―――い、いい加減倒れろよ…もう何十回斬ってると思ってんだ。タフにも程があるだろうが。
全く、大人しくなったかと思ったら、今度は全然倒れないし、周りが段々明るくなってきてる。というか、まずいな、もう
「ハァ、ハァ、これで最後にしてやる」
俺は、最後の力を振り絞ってジャンプして、飛竜の顔に斬り掛る。
「!!?」
その瞬間だった。飛竜が後ろに一歩下がり、体を一回転させて、大きな尻尾を振り回してきた。なんで見えないのに俺のいる位置が分かったんだよ、まさかこれが野生の直感ってやつか。
おまけに、俺の体は今空中にあり、避けることが出来なかった。
振り回した尻尾が俺の胴体に直撃、俺の体がメキメキと音を立てて、遥か後方へ吹き飛ばされ、黒い壁に叩き付けられ、そのまま倒れ込む。
「ぐ、ガハッ !」
口から大量の血を吐く。ちょ、これやばい、呼吸が出来ない。肺ら辺がミシミシいってる。これ、絶対あばら骨めっちゃ折れてるよ。
おまけに、お腹が超痛い。内蔵がいくつも潰れてるんじゃないのか。体に力が入らなくて動かない、もう声も出ない。
唯一の救いは
その瞬間、空間を覆っていた黒い壁が一気に消えていった。
……は? おい、ちょっと待て、ふざけんな! まだ全然体治ってないんですけど!?
飛竜は辺りを見回し、俺のことを見つけて、全速力で走って来る。俺の目の前まできた飛竜は、足を上げ、大きく、鋭利な三本の爪を俺の腹と、心臓部と肺に深く突き刺さした。
「!!!!??ぐ、ガァァァァァアアアアアアア!!!!!!」
痛い、とかじゃ言い表せないような痛みが俺の全身に広がる。
飛竜は足を上げ、近くの木に向かって振る。俺の体は、飛竜の爪から抜けて、木に叩きつけられる。背骨は間違いなく折れているだろうが、もはや、痛いのかすら分からなくなってきた。
俺、このまま死ぬのかな。くそ、たたでさえ短い人生だったのに、二度目の人生なんて、1日も経たずに終わっちまうのかよ。全く、死んでからも、俺の人生ろくなことがなかったな。
いや、一つ良いことあったな。美少女と出会えた。あ、やばい意識が
「ごめんエール、さようなら」
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