第一章
第1話 異世界転生したら美少女と出会った!
――――暗闇の中で意識だけが目覚めた。どうやら生きているみたいだ。
へへっ、ラッキー。まだゲームとお別れは嫌だからな。
それにしても電車にはねられて生きているとは、我ながら自分の生命力が恐ろしい。というかなんで俺がこんな目に遭ってんだよ。俺ってそんなに悪いことした? なんでどこの誰かも分からないやつに突き飛ばされなきゃいけないんだよ。
チクショー、あの時ちゃんと顔さえ見ていれば、警察がきたときに役に立つのに……。あれ? 俺ってもしかして役立たず?
そうこうしてるうちに体の感覚が戻ってきた。俺は少しずつ目を開く。光が差し込んで来たが、暗闇に慣れてしまった目に光が当たり、眩しさのあまり反射的に目を閉じる。
そしてもう一度ゆっくり目を開く。それと同時に、ゆっくりと自分の体を起こす。
やがて目が慣れてくると周りの景色が見えてくる。俺はその景色を見て愕然とした。
「ココ、ドコ?」
思わず片言になってしまった。
ひとつだけわかることは、明らかにここは病院でないということだ。マスクみたいなやつもなければ、点滴とかの管もついてない。服装も、アニメでよく見る患者が来ている様な服じゃなくて、なんというかパジャマだ。そもそも木造の建物の中で、しかも天井にはランプがぶら下がっている。ベッドも一般的な家庭にありそうなものだし、ややこしそうな機器もない。なにより病院特有の清潔感のある白さがない。
ここで、俺はある違和感を覚えた。体を動かしたはずなのにどこも痛くない。普通あれだけのことがあれば、全治4,5年ぐらいはありそうだが……というか、そもそも生きているのも不思議なくらいだ。
俺はベッドを降りて部屋の中を歩く。見れば見るほど、普通の家庭っぽい部屋だな。
「とりあえず、この部屋の中を調べてみるか。地図的な物を見つければ、ここがどこだか分かるかも知れないし」
そう言って俺は、部屋の中を物色し始める。ところが、部屋を物色中俺はまたある違和感を覚えた。この部屋には電子機器が見当たらない。今どきどんな田舎にも電気ぐらいきているだろうに。というかそもそも、この部屋何にも無いな。
俺がそんなことを考えているとドアが開く音が聞こえた。
「目が覚めたんですね」
そんな声が聞こえて俺はその方へ視線を向けた。そこに立っていたのは一人の少女だった。身長は俺より10センチほど低いが、スタイルはモデルみたいで、白いワンピースを着ていて、なんというか清楚な感じがする。肩にかかった髪はとても綺麗な銀髪で、眼の色が赤い。まあ分かりやすく一言で言えば超絶カワイイ美少女だ。
俺がその容姿に見とれていると、彼女がそんな俺の様子を不思議がるように首を傾げ話しかけてきた。
「どうかしましたかシンティ? さっきから何をしているんです?」
「い、いやなんでもないよ。ただちょっと探し物をしていたんだよ……ん? ちょっとまて、シンティって誰だ?」
「あなた以外の誰がいるんですか。ダイ・シンティ、それがあなたの名前ですよ。大丈夫ですか?」
なんてこった……。
「OK、よくわかった」
俺はある確信を持った。それと同時に足から力が抜け、膝がガクっと落ち、その場に崩れ、人生で一番大きな声で、心の底から叫んだ。
「俺、異世界転生してんじゃねえかよおぉぉぉぉぉぉぉ!」
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