06.『表示』の力
移動による感覚の途絶の後、目の前には中世の西洋のような町並みの広場に立っていた。
時間は朝だろうか。涼しい風と、眩しい太陽が輝いている。
辺りには活気に満ちた人々が行き交う。
広場の中央には黒く高いオベリスクがあり、四方は大きな通りになっている。
この辺りは人気の場所なのか人々の喧騒で溢れている。
よく見ると近くにいるのは自分と同じ様にキョロキョロと周りを見渡している人々や、興奮している様子の人々がほとんどだ。
たぶんプレイヤーなんだろう。自分で言うのもなんだがよくこんな怪しいゲームをやったものだ。
今のところ良いゲームのようだが。
いや、待った。
そういえばプレイヤーのHPバーは消すことが出来ないから『表示』のスキルを使えば見れるはずだ。
すると、考えに反応したのか目の前にいたプレイヤーの頭上に赤いバーが出た。
自分の視界の端にも邪魔にならない程度の大きさで自分のHPバーが出ている。
別の人を視界に入れて注視してみると、今度はさっきのプレイヤーのバーが消え今見ているプレイヤーの頭上にバーが現れる。
どうやら一度に選べる対象は1つまでのようだ。
中には何か目的があるのか、通りを走っていく者や近くの店に入っていく者もいる。
早速パーティーを組もうとメンバーを募集している人もいる。
パーティーで行動するのも手だがまずは一人で色々と確認していきたい。
こういうゲームの場合、最初は冒険者ギルドとかに行って登録とかするんだろうが、あるかどうかも分からないし。
まずは情報収集をするか。
街の地図なんかがあればいいんだが。
そう考えたところで視界の端の方に地図が現れる。
「おお、マップ機能も付いてるのか!便利だな!」
少し驚いたが想像以上に『表示』スキルさんが有能である。
と思ったのも束の間、マップは俯瞰図のように街の形状はわかるものの、場所や建物の名称は一切分からなくなっていた。
仕方ないので近くに詳細な地図がないか探していると、広場の端の方にそれっぽいのが見えるので、走って見てみる。
ビンゴ。
街の主要な建物などの名称が載っていた。
自分以外にも気がついたのか他のプレイヤーも近づいて見ている。
この地図によると、どうやらここは冒険者街と呼ばれるエリアのようだ。
マナリアは円形をしており、中央から闘技場と神殿、市街地となっている。
東西南北に正門が4つあり、中心からそこに向かって大通りができているようだ。
更に市街地が大通りを中心に四つのエリアに分かれている。
西が今いる冒険者街で、北に生産街、東に学生街、南に商業街がある。
今いるのは西のエリアの冒険者街の正門に近い広場のようだ。
あるかどうか疑問だった冒険者ギルドも、今いる広場から伸びている大通りを中央に少し向かえばあるようだった。
ほかのエリアも気にはなるがまずは冒険者ギルドに行ってみよう。
気が付くと視界のマップにエリアの名前や冒険者ギルド、その他地図に載っていた重要施設の位置が追加されていた。
『表示』スキルはちゃんと働いているみたいだ。便利便利。
<『表示』のレベルが上がりました。>
お、プレイヤーを見たり地図を確認してたからか?早速レベルが上がった。
いまいち実感がないというか『表示』ってレベルが上がるとどうなるんだ?
そんなことを考えていると、バーが表示されているプレイヤーが2人になっていることに気が付いた。
どうやら、レベルが上がると同時に表示できる対象が増えるようだ。
地味だが、表示できる数が多くなれば便利そうだ。
特に確認することがない場合でも常時使っておくことにしよう。
ギルドがある所まで歩いているといくつか出店のようなものがあったから焼鳥っぽい料理を買ってみたが、味覚の再現度も凄かった。
少し塩っぱくも甘いジューシーな肉汁と鶏っぽい肉の香り、少し歯ごたえのある食感。
喉を通り腹に収まる満足感まで再現してあるのには驚いた。
大満足だ。
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