05.チュートリアル

「それではアバターの設定も終わりましたので続いてチュートリアルを行いたいと思います」



「まずは現在お客様がお使いのアバターをハクト様のものに変換しますので少々お待ちください」



 アリスがそう言うと今まで目の前に表示されていた「ハクト」が端からポリゴン調になり消えていく。

 消えてしまうとすぐに自分のアバターが足元から「ハクト」のものに変わっていった。

 数瞬の内に自分がハクトになる。

 アバターの変換は無事に終わったようだ。



「どこかおかしな点がございましたらお申し出ください。」



 言われた通り体の具合を確認するが特におかしな点はない。

 今までの体とサイズが違うのでその分、脳と体で若干の誤差を感じるがこれは言われていたものの範囲内のものだろう。



「いえ、まだ違和感はありますが特におかしいところはありません」



「そうですか、よかったです。でしたら新しい体になれるために少し動かれても結構ですよ」



 彼女に言われるがまま軽い体操をしたり、走ったりした。

 まだまだ完全に慣れてしまうには時間がかかりそうだが、この分ならしばらく動き回っていたりすればどうにかなりそうだ。



 こっちの準備が整ったことを伝えると、チュートリアルが始まった。



「それでは、まず最初に『表示』スキルについてご説明いたします。このスキルは自分や相手、魔物など、知りたい情報があるものに対して使うものです。言葉に出してもいいですし、頭の中で考えるだけでも使えるようになっています。まずは試しに先ほどお決めになったご自分のステータスを見ようとしてみて下さい」



 言われたように考えてみると、先ほどアバターが消えた時に一緒に消えていたステータス画面が現れた。

 言葉に出しもいいと言われたが、必要ないのであれば言わなくてもいいだろう。

 言うと恥ずかしいしな。



 『表示』か。

 通常のゲームでいう『鑑定』みたいなものか。



================

Name:ハクト

Lv:1


HP:160/160


VIT:16

STR:18

DEF:16

AGI:16

DEX:16

INT:16

MND:16


ステータスポイント:0

所持金:5000G


【スキル】:『表示Lv.1』、『アイテムボックスLv.1』『格闘術Lv.1』、『槍術Lv.1』、『調理Lv.1』

【装備】:布のシャツ、布のズボン、革の靴、布の下着

【称号】:



================



「出来ましたね。このスキルでは対象の情報をこのように表示することができますが、対象について知っている情報しか表示されません。レベルが上がって行っても対象について知らないことは表示されませんのでご注意ください」



 『鑑定』みたいなスキルかと思ったがその劣化版だったか。



「ただし、誰かから聞いたり、書物、自身の経験によって知ることの出来た知識は随時表示されるようになっていくので、機会があれば積極的に情報を集められるといいでしょう」



 なるほど、仮に忘れたとしても『表示』を使えば分かると。

 ゲームの中の情報を全て覚えるのは大変だしな。

 助かる。

 それに、この説明の感じだとこっちよりも格が上の相手が対象の場合でも知識があれば表示されるんじゃないか?

 だとすると場合によっては非常に便利なスキルだ。

 『鑑定』の劣化版なんかではなかった。



「いまは『表示』のスキルを使ってもらいましたが、スキルはこのように考えていただくだけで基本的にお使いになることができます。そのため、意識して使われるというよりは、思い通りに行動して頂ければ自然とお使いになることができるようになるでしょう。『アイテムボックス』も同様に口に出して言ってもらうか、考えていただければ収納、取り出し、どちらも行えます。収納しているアイテムの一覧を知りたい場合も同様です」



「次は戦闘や生産についてですが、こちらは特にルール等ございません。先ほどお教えしましたようにスキル等をお使いになりながら、プレイヤーの皆さんのお好きなようにしてもらって構いません。もちろん戦闘や生産以外にもやれることはございますので」



「最後に戦闘での描写と痛覚の設定についてです」



「戦闘では相手を傷つけることになるので、血や部位を切断した場合に切断面の描写がございます。こちらは、残酷描写に当たるので18歳以下の方には自動でモザイク加工がされるようになっています。ハクトさまは対象外ですのでモザイク加工は無しとなっております。現実のものと同じではないのでそのままのされても大丈夫ですが、もしモザイク加工や軽い描写に変えられたいのであればメニューの設定欄から変更することが可能です。」



「また、このゲームでは痛覚も正確に再現されています。重度の痛みは脳にダメージが残る場合がございますので、一定以上のものは感じなくなっていますが、こちらも痛覚の再現度を低くされたい場合は設定から変更されてください。痛覚を0にされた場合でも触覚や衝撃等の感覚は残りますのでプレイに支障は出ません。ただし痛覚がある場合の方がより臨場感のある戦闘を楽しめるようにはなっています。また能力値の『頑丈』を上げていただくことで痛みを感じる度合いも変わってきますのでそちらもお考えになるといいでしょう」



 切断面の描写や、痛覚の設定はそのままでいいか。

 どうせなら臨場感を楽しみたい。

 どうしてもきつそうなら、その時にでも変えよう。



「以上でチュートリアルは終了になります」



 長かったチュートリアルもようやく終わりか。



「こちらは、ゲーム開始の記念にお使いください」


 お、何か貰えるのか。

 そう考えていると、手元に木の槍と、革のグローブのようなもの、鉄っぽい素材で出来たフライパンが現れる。

 どうやらグローブっぽいものはガントレットのようだ。

 『槍術』、『格闘術』、『調理』をとったからだろう。



「ありがとうございます。大切に使わせてもらいます」



 早速アイテムボックスを使い収納する。



「お疲れ様でした。このあとは魔法と学問の街マナリアからスタートとなります。」



魔法と学問か、魔法についてもちょっと調べたいしちょうどいい。

学問というと学校とか図書館とかかな。




「それでは良い旅を。<EEO>は皆様のゲームライフを応援しています」



 体が下から消えて行く。

 アリスに笑顔で見送られて俺はマナリアの広場に降り立った。


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