第12話 12

「楓!?」


蛍は楓が人質に取られたと悟る。


「数は関係ない? 関係ない訳ないだろうが。アホ―。雪オカマがこっちは3人いるって教えてやったのに。2人の相手をしていたら、もう1人は自由に行動できるに決まっているだろうが。アホー。」


カラスの若者が蛍を罵る。


「誰が雪オカマだ!? アホガラス!?」

「あ!? アホガラス言うな!? オカマの分際で!?」

「何を!?」

「やるか!?」

「二人ともやめるなめ。」


雪オカマとアホガラスのケンカをナメクジ先生が仲裁する。


「蛍!」


そこに桜がやって来た。


「桜さん!? どうして楓が!?」

「ごめんなさい。私、幽霊だから戦えないのよ。」

「おにぎりは握れるくせに?」

「さあ! 妹を助けましょう!」

「・・・無視ですか。」


蛍と桜は楓を助けるために一致団結する。


「楓を返せ!」

「そうだ! そうだ!」

「こうなったら力づくで!?」


蛍たちはアホガラスに楓を返せと要求する。


「おっと動くな。この子が死んでもいいのか? アホ―。」

「卑怯な!?」


アホガラスは短刀を気絶している楓の首筋に当てる。


「何とでも言え。こっちは妖怪だからな。アホ―。」

「俺も妖怪だ。」

「知るか! アホ―。」


確かに蛍も人間ではなく妖怪だった。


「娘を返してほしかったら、野盗、源夜叉のアジトまで来い。ただし無事にたどり着けたらの話だがな。カッカカッカー! アホ―。アホ―。」


語尾にアホ―がつく、アホガラスからの挑戦状であった。


「さらばだ! アホ―。」

「アホアホうるさいんだよ! アホガラス!」

「ちゃんと来てなめ。」


3人の妖怪は消えていった。


「楓!?」

「クソッ!?」


蛍と桜は、楓を人質に捕られ何もできず立ち尽くすことしかできなかった。



「神様! 仏様! 蛍様!」

「・・・。」


一晩が明けた。野盗から救ってもらった越後谷のおっさんの態度が180度変わっていた。


「野盗から我が越後屋を救ってくださり、ありがとうございます!」

「は、はあ。」


蛍は御馳走を振る舞ってもらい、他の用心棒たちはお払い箱となった。


「つきましては、我が越後屋の婿になってくれませんか?」

「え?」

「娘のあんです。」

「あんと申します。」


蛍は越後屋に娘との縁談を進められる。


「私、強い殿方が好きです。」

「いいんですか!? 俺なんかで!?」


蛍はきれいな娘に花の下を伸ばして興奮していた。


「ダメ!」


蛍の隣にいた桜がキレる。


「蛍! あなたはうちのカワイイ妹の楓を助けに行くんでしょ! お金持ちの婿養子になっている場合じゃないでしょう!」

「俺だって将来が不安なんだ!? 無一文貧乏キャラの俺のことも考えてくれ!?

「呪い殺すぞ!」

「楓を助けに行きます! 失礼します!」


蛍は食べるのも途中でやめ逃げ出した。


「お待ちください! 蛍様!」

「待って! 未来のあなた!」


越後屋の親子が声をかけるが、桜が怖い蛍は立ち止まらない。


「なんて妹さん思いのお兄さんなのかしら。」

「私は蛍様を越後谷の婿に決めたぞ!」


こうして蛍は越後屋からも狙われる羽目になる。


「でも、どこに行けば楓がいるのやら?」

「本当ですね。困りました。」


外に出た蛍と桜は道端で困っている。


「野盗のアジトなら知っているぞ。」


そこに火の妖刀使いの築が現れた。


つづく。

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