第11話 11

「おまえ、人間じゃないな?」


蛍の前にナメクジ先生が現れた。


「そういうおまえこそ妖怪らしいな。話は死神の詠様から聞いている。私は薬の調合が趣味のナメクジの妖怪。人は私のことをナメクジ先生と呼ぶ。」


ナメクジ先生はドヤ顔である。


「気持ち悪い・・・。」


蛍はゲッソリする。


「おまえも妖怪なら人間の味方などせずに、詠様の、妖怪の味方をすればどうだ?」

「嫌だ。」

「なぜだ?」

「ご飯が食べれないじゃないか。」

「ズコーッ!?」


蛍の理由は単純明快であった。ナメクジ先生はズッコケるしかなかった。


「旅の途中で人間の女の子を助けてしまったんだ。その子のお姉さんを生き返らせてあげないと、俺みたいに一人ぼっちになっちゃうんから。クソガキなんだけどね。」


蛍は楓のことを言っている。


「だから、今のまま旅人でいいんだ。」


蛍は楓との旅を、実は楽しんでいた。蛍が今のように温かい気持ちになったのは久しぶり出会った。


「お主も大変なんだなめ。」


ナメクジ先生は蛍に同情する。


「そうそう、そうなんだ・・・て、おい!?」

「すまん、すまんなめ。」


敵なのにナメクジ先生は蛍に同情する。


「俺はおまえを倒す!」

「望むところだ! 私の眠り香で眠らせてやる!」


仕切り直しである。


「な、なんだ!? 眠くなってきた? ま、まさか!?」


蛍の視界がぼやけてくる。


「その通り! おまえと会話している間に眠り香を周囲にバラまいていたのだ! これでおまえは眠るだけだなめ!」

「し、しまった。」


蛍、絶体絶命の危機。


(俺は眠ってしまうのか? ・・・また守りたい者も守れないのか?)


その時、蛍の心に呼びかける声がする。


(蛍、蛍。)

(!?)

(蛍、あなたが私に会いに来てくれるのを待っていますよ。)

(ひ、姫!? おみつ姫!?)


声の主は死んだと思われる、おみつ姫であった。


「いつ蛍が光るか知っていますか?」


フラフラの蛍はナメクジ先生に問いかける。


「夏の夜なめ。」

「違う! 悲しい時に光るんだ! 蛍の光!」

「眩しい!?」


蛍の体から無数の蛍の光が放たれる。体内蛍自家発電といったところだ。


「おまえの臭気は全て蛍の光で消し去った。」

「なんだと!? 私の臭気が!?」


形勢が逆転した。


「ナメクジ先生! 覚悟! 光れ! 蛍!」

「やめろ!? 卑怯者!?」


妖刀、蛍光刀を青く光らせ蛍がナメクジ先生に襲い掛かる。


「氷壁。」


その時だった。上空から冷たい雪交じりの冷たい北風が放たれ、ナメクジ先生の前に氷の壁を作る。


「うわあ!?」


蛍は突撃を止め、冷たい風を避けるため後ろに飛ぶ。


「悪いけど、ナメクジ先生はやらせないよ。」

「何者だ!?」


上空から女の声がする。


「私は雪女。詠様から派遣されたのは、ナメクジ先生だけじゃないんだな。」

「なに!?」

「私を含めて3人いるのだよ。」


蛍が見ると雪女の子供がおり、あの死神の詠の手下だという。


「数は関係ない。ただ斬るのみ。」


蛍は2体1でも戦意を失わないで刀を構える。


「こ、こいつバカか!? それとも自殺死亡者か!?」

「悲しい蛍なめ。でも油断すると痛い目に合うなめ。雪オカマ。」

「誰が雪オカマだ!?」

「雪男も雪女も多すぎるから、個性を尊重すると雪オカマになったなめ。」

「私は女だ!」


薬師のナメクジ先生と雪女の雪オカマは仲良し。


「もういいか? こっちはおにぎりを握らないといけないんでな。」


蛍は一撃で仕留めるつもりで、妖刀は青々しく光っている。


「そこまで。」


また違う方向から声がする。


「楓!?」


蛍が振り向くとカラスの若者が気絶した楓を抱きかかえている。


つづく。

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