第8話 8
築の刀が火に包まれる。それを振りかざして構える。
「・・・。」
逆に蛍は刀も抜かず冷静に立ち尽くしている。
「んん!? どうした!? 刀を抜かないのか!? 舐めやがって!?」
蛍の態度に築は逆上する。
「やめておけ。おまえでは俺の相手にならない。」
蛍は戦う前から、刀を交える前から築の力量を計っていたのだった。
「な、なんだと!? 言わせておけば!?」
遂に築が耐え切れずに蛍に斬りかかる。
「だああー! どりゃー!」
蛍は次々と繰り出される築の火の刀を軽やかにかわしていく。
「蛍ちゃん! カッコイイ!」
「蛍! 戦え!」
楓桜姉妹も蛍を応援する。
「逃げてばかりいないで戦ったらどうなんだ!? この男女!」
築は蛍を挑発する。
「やめておけ。おまえでは俺には勝てない。」
「なんだと!?」
「まず、その手。火傷だらけだ。油を染み込ました偽物の妖刀では、おまえの体が持たない。」
「ううっ!? (見抜かれた!? ついさっき会ったばかりの奴に!?)」
図星を突かれた築は動揺する。
「おまえはいったい何者だ!?」
「ただの通りすがりの者です。」
「・・・。(勝てねえ・・・悔しいが、男女に勝てないとは・・・。)」
築は悟った。自分よりも相手の方が強いと。
「俺の負けだ。」
「ん?」
「だが! これならどうだ! 火爆!」
「なに!?」
築は隠し持っていた油を刀に垂らし、刀の火に引火させ爆発を起こす。爆発で煙が発生する。
「やったか!?」
もちろん技を繰り出した築は大火傷を全身に負う。
「蛍!?」
「蛍ちゃん!? 死なないで!?」
楓桜姉妹も心配する。
「勝手に殺すなよ。クソガキ。」
煙が晴れてくると顔に黒いススは着いているが無傷の蛍が現れる。
「蛍ちゃん! 生きてると思った!」
「楓、言ってることが無茶苦茶よ!?」
楓桜姉妹も蛍が無事で安心した。
「いつ蛍が光るか知っていますか?」
「ああ?」
「蛍は悲しい時に光るんですよ。」
「あ、青く光っている!? 青い妖刀だと!?」
蛍は青く光る刀、妖刀、蛍光刀を抜いた。
「夏の世の光!」
蛍は蛍光刀を振り抜く。
「うわあああ!?」
築は蛍が空を舞うように宙に飛ばされ地面に落ちる。
「・・・。」
築は気絶していた。
「蛍ちゃん! 強い!」
「蛍! カッコイイ!」
「・・・。」
楓桜姉妹が蛍に駆け寄ってくる。
「手当をしてやってください。」
「え?」
蛍は楓桜姉妹に築の傷の手当てをお願いする。
「どうして!? 蛍ちゃんを殺そうとしたんだよ!? 木の枝で突こうよ!」
「この男は自分の負けを認めていた。その上で負けるのが嫌で自爆したんだ。」
「え!? そうなんですか!?」
「立派な大道芸人ですよ。」
刀を交えた蛍は、紛い物の妖刀ではあるが築のことを認めていた。
「ツンツン。」
「こら!? やめなさい!? 楓!? 本当に死んでしまうでしょ!?」
楓は築を死体にしようと木の枝で突いていた。
「チイッ! つまんない!」
子供の蛍はおもしろくないのだった。
「蛍ちゃん! 遊ぼう!」
「嫌だ。俺は蛍の大道芸の開発に忙しいんだ。」
「蛍ちゃんのケチ!」
「何とでも言え! クソガキ!」
「ベーだ!」
蛍たちの旅は、まだまだ続くのであった。
つづく。
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