第6話 6
「妖刀、街路刀。死神の鎌じゃなく期待を裏切って申し訳ない。なんせ日本は刀ブームなので、私も刀を使いたくなってしまったので。クックック。」
死神の詠の刀は、妖刀、街路刀。紫色に光る不気味な刀だった。
「おまえも妖刀使いだったのか!?」
「はい。」
「クソ!?」
詠の自信は、自分も妖刀を持っているので、蛍が妖刀を持っていても同じ条件で戦えるという所にあった。
「若者よ、自分だけが特別だと思うなよ! 闇斬り。」
今度は詠が姿を消して斬りかかる。
「うわあ!?」
詠の紫の刃を、間一髪で蛍は青い刃で受け止める。
「ほう、一の太刀を受け止めることができましたか。やりますね。それはあなたの実力ですか? それとも妖刀のおかげですか?」
「知るか!」
「蛍ちゃん!?」
「楓!? 危ない!?」
詠と蛍の戦いを楓桜姉妹も心配そうに眺めている。
「次は乱れ打ちといきますよ。一太刀でも受け止められなければ、あなた、死にますよ。」
「な!?」
「死の乱舞!」
詠の怒涛の乱撃が始まる。右から左から10撃20撃が撃ち込まれる。
「クッ!?」
蛍は必死に詠の攻撃を受け止めている。蛍の意志とは関係なく体が勝手に動いているようだった。
「あなた!? いったい何者ですか!?」
「ただの通りすがりの者です。」
詠は自分の攻撃を全て防がれて、蛍の素性に不安を覚える。
「この死神の私の太刀を受け止められる者など、そう簡単にはいないはず!?」
「気合と根性だ!」
蛍の反撃が動揺している詠の着物を斬る。
(なんだ!? この感覚は!? 私があんな若者に負けるとは思わない・・・だが、嫌な感じがする。ここで殺しておかなければ・・・。)
詠は蛍の今後の可能性に脅威を感じていた。
「あなたを殺すのは後回しです。」
「なに!?」
「先に女の子に死んでもらいます!」
「しまった!? 楓!?」
詠は体の向きを楓に向ける刀を構える。不意を突かれた蛍は態勢を崩す。
「ニヤっ、もらった!」
詠は再び蛍の方を向き構えた刀を蛍の胸に突き刺す。
「な!? なに!?」
詠は驚いた。蛍を殺したと思ったが、蛍の体の一部が無数の蛍になり、詠の刀をかわす。
「蛍ちゃん!?」
「蛍が蛍になっちゃった!?」
楓桜姉妹も人間の蛍化に驚く。
「いつ蛍が光るか知っていますか?」
蛍は刀を構える。
「蛍は悲しい時に光るんです!」
蛍が夜に輝くように刀が新たに青く輝く。
「夏の世の光!」
蛍は刀を振りぬいた。
「ギャアアア!?」
蛍の一撃は詠を捉える。
「蛍ちゃん! 強い!」
「蛍が勝った!」
蛍の勝利を喜ぶ楓桜姉妹。
「きょ、今日はあなたの勝ちです。ですが、これからも私はあなたを追いかけますよ。私は死神ですから。」
そういうと詠の刀傷を受けた体は闇に消えていった。
「ふーっ。」
蛍は目の前の敵が消えて力が抜けたのか、一息ついた。
「蛍ちゃん!」
楓が蛍に駆け寄ってくる。
「見ただろう? 俺はたぶん人間じゃないと思う。・・・俺のこと怖くないの?」
荒んだような不安なような顔で蛍は楓に問う。
「蛍ちゃんは、蛍ちゃんだよ! 蛍ちゃんの蛍、綺麗だったよ!」
楓は子供なので無邪気だった。素直に思ったことを言った。
「ありがとう。」
楓の言葉にハッとした蛍は、柔らかい表情になり楓に感謝を述べた。
「よかった、よかった、クスン。」
蛍と楓の仲睦まじい光景を見て、幽霊ながら涙を流す桜。
つづく。
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