第5話 5

「蛍ちゃん! 怖い!」

「お姉さん、楓を頼みます。」

「は、はい。」


蛍の顔つきが悪い。さっきの野盗とは違い、蛍も用心棒に嫌なものを感じている。


「何者ですか?」

「私は野盗に雇われている用心棒、詠と申します。」

「詠!?」


野党の用心棒の先生の詠が現れた。


「いけませんね。相手の弱点を攻める時は、相手が全力で反撃する可能性があるということを覚悟していないと。」

「分かっていたような言い方ですが、それなら助けることもできたんじゃないんですか?」

「助ける? なぜ? 野盗を助けるということは私の契約にはありません。私はあなたの相手をするために雇われたのだから。」


詠は血も涙もない冷酷な男だった。


「私が興味があるのは、あなた。」

「な!?」

「男なのに蛍ちゃんが好き!? あいつホモだよ!?」

「楓、黙りなさい!? 茶化したらダメよ!?」

「・・・せっかくの緊張感が崩れる。」


蛍は楓の性で疲れた。


「正確に言えば、あなたの持っている、その妖刀だ。」


詠は蛍の妖刀、蛍光刀を指さす。


「妖刀は人の命を吸いつくすもの。普通の人間には妖刀など、妖力を必要とする物を使いこなすことは無理というもの。」


妖刀は、とても危険な代物であった。


「おまえ、人間じゃないな?」


詠は蛍を人間ではないと言う。


「その証拠に、女の子の隣にいる幽霊が見えているでしょう? 普通の人間に幽霊は見えない。」

「・・・。」


詠の問いかけに沈黙する蛍。


「ええー!? 蛍ちゃん! 人間じゃないの!? じゃあ!? 宇宙人だ!?」

「宇宙人って何!?」

「・・・まったく騒がしい姉妹だ。」


蛍は楓桜姉妹にさらに疲れた。


「別に侍が人間じゃなくてもいいでしょう。それともあなたの許可がいるんですか?」

「要りませんよ。私はあなたの素性には興味が無いと言ったはずです。私が欲しいのは、妖刀だけです。」


詠の目的は、蛍の持つ妖刀、蛍光刀だった。


「妖刀が欲しい? あなたは妖刀の転売屋さんか何かですか? それとも幽霊のお姉さんが見えているということは、あなたも人間じゃないんですね?」


蛍は詠を指摘すると共に、自分が人間ではないと認めた。


「はい。死神です。」


詠の正体は、人の姿をした死神であった。


「し、死神!?」

「蛍ちゃん、死神って何?」

「人間の魂を集める人のことを言うんだよ。」

「蛍ちゃん! 頭いい!」

「俺、賢い。」

「あなたたち!? そういうもんだいですか!?」


死神は人間の魂が大好きなようだ。


「私は私の仕事の邪魔になりそうな妖刀使いを見つけたら、早めに殺すことにしているんです。だって成長して強くなったら殺すのに大変でしょ。」

「そんな心配しなくて大丈夫ですよ。」

「はい?」

「俺が先にあんたを殺してやる!」


蛍は詠に突進し斬りかかる。


「なに!?」


蛍の蛍光刀の一撃を、詠も刀で受け止める。


「私も持っているんですよ。妖刀を。」


詠の刀は、不気味に紫色に光っていた。


つづく。

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