3『第2相ダイジェスト』

乙「なんだかんだで前回も約2400文字ですか」

甲「意外と長くなってしまうもんだね。でも今回解説する第2相は話数として1番短いし、そこまで掛からないんじゃないかな」

乙「とはいえ、この頃の本文は『1話3000文字以内』ってルールが直近よりも厳密に守られていないですから、一概に最も少ない文字数とも言い切れませんが」

甲「ともあれ始めていこう。この回作っている時点で世間様はゴールデンウィークの只中だけど、一部のホワイト企業の方を除いて明日は平日だ。夜更かしはしたくないんだとさ」

乙「今回はサクッと終わればいいですねー……社会に出ると、本当連休が貴重になる……」





Q1 この相はどんな展開が起こる?


甲「前の相で書かれた通り、相変わらず気力のない石井が社内で過ごす一幕から始まるけど、早速新たな人物が出てくる」

乙「国内有数の大病院の長である『藤沢 芳也ふじさわよしや』氏ですね。彼の登場に併せて、何故石井があの振る舞いにも関わらず会社を首にならないか、という説明も為されます。個人的に課長が臍を噛む様子が笑えつつも同情するというか……」

甲「勤務態度は悪いけど、得意先のお気に入りで数字も挙げているって、一番質の悪い部下だよね。私なら絶対下に置きたくないなぁ」

乙「それ、あなたが言います?」

甲「普通の人間ならその厚遇ゆえの軋轢に、いたたまれなさのひとつも覚える所だけど……そこはさすがの石井と言うべきか」

乙「最も、彼唯一の担当先が藤沢氏の病院である事には、もちろん理由があるのですが……」

甲「そう。彼は入社以前から藤沢氏の病院に縁があり、継続的に治療を受けている」

乙「それが前々回の概要でお話した彼の特異な経歴と繋がります。過去に巻き込まれた凄惨な事故とその後遺症である記憶障害。藤沢氏はその両方の治療に携わっていました」

甲「いわばふたりは『顧客と営業』以前に『主治医と患者』という関係にあったわけだね」

乙「とはいえ事故が起きたのは石井が学生だった頃。就職した先でその仕事にも影響を与える事は、普通に考えれば有り得ないのですが――」

甲「そこにももちろんタネがある。更にそこで深く関わってくるのが、彼の務める会社『BE=SANGO』の敏腕社長である『三吾 啓示さんごけいじだ』」

乙「……藤沢氏と三吾氏。このふたりはプロローグB『キタナイ大人の会議は踊る』において登場した人物ですね」

甲「旧知の中である彼らは一国の大臣に対していかにもな裏交渉をしていた。そんなふたりにとって単なる患者、あるいは社員のひとりに過ぎない石井の身に起きた事に対し、何故異例とも言える世話を焼くのか。ここで一応の説明はなされるけど――」

乙「すんなり納得、とは言えない空気を残して場面が変わり、それと連動するようにある人物に変化の兆しが生じ始めます」

甲「ここから代わり映えのない回転せいかつを示してた彼の歯車が、段々と狂い始める。帰宅した後、石井の意識は第1相の冒頭と対を成す例の『悪夢』に移るのだけど、現実の軋みがそこにも影響を及ぼしていた」

乙「それまでは断片的で捉えどころのなかったその夢でしたが、その夜に限っては具体的な輪郭をいくつも帯び始め、最後はある決定的な事が起こります」

甲「――とまあ、ここまでが第2相のあらすじとなる。彼の生活にジワリジワリとが這い寄って来る。そんな不気味さを覚えてくれれば幸い、だね」





Q2 この相のキーポイントは?


甲「ここは単純だ。ずばり『同期の鏑木の身に起きた変化』と『いつもと事情の異なる悪夢』このふたつだ。そこにプロローグと第1相の展開を思い起こしてもらえば、それぞれの要素が絡み合ってうっすらと先が見えて来ると思うよ」

乙「個人的には第10話『貴方の風邪(?)はどこから』において最後に呟かれた「塩」というキーワードを推しますが」

甲「それはだぜ?けっこうなサービスになっちゃうよ」

乙「まあ個人的な無念も込めた、先取り大ヒントということで」

甲「後悔している?」

乙「さあ、どうでしょうね。現実にはそれこそ全ての展開を既に知っている人間なんて存在しないし、みんなその場その場で最善の判断をするしかないんです。少なくともあの時点では、判断を誤ったとはと思ってませんよ」

甲「……なら、そういう事にしておこう。その方がこっちも気楽だ」

乙「ええ。これ以上迂闊な事を口走る前に、締めに入りましょう」

甲「そうだね。ここらで宣言通りサクッと終わろう。後々に向けて文字数の貯金が出来たようで何よりだ」

乙「次回より一気に日常と非日常の拮抗が崩れ始め、展開も風雲急を告げます」

甲「エンタメ作品の本領発揮だ。果たして全てを3000字で収めることが出来るか」

乙「いや、そこにばかり注目されても困るんですけど……」


甲「ともあれそれでは」

乙「また次回」

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