【ターゲット】魔女

 世界に呪いを振り撒く異形の怪物。それぞれが固有の結界を持つが、アッシュワールドやモノクロ世界では何故か結界が無効化されている。独特の発語で叫び、意思疏通は不可能。




「茶会の魔女『リギリリリリリス・ネバーエンド』」


・外見

 全長三十センチの小さな黄色い縫いぐるみ。リスのような身体に黄色いお洋服を着せられている。その顔には何一つパーツはなく、白いハットが影を落としている。その身体中にリボンが巻き付けられていて、無風状態でもうようよ蠢く。


・戦闘方法

 リボンで絡み取るように束縛してくる。縛った相手を献身的にもてなすが、死ぬまで離さない。また、魔女が腕を振るうと地面から鎖が生えてきて獲物をがんじがらめに縛ろうとしてくる。さらにその身を震わせると、魔女本体から大量の布束が溢れて獲物を捕らえようとしてくる。

 とにかく傷つけずに束縛する。それが魔女の全て。




「飛沫の魔女『エラー』」


・外見

 全長五メートル近い深海魚。その鱗は深い青でメッキされている。天空を浮かび、ゆったりと宙を泳ぐ。目玉をくり貫かれて、その眼窩からは大粒の涙が一滴ずつ落ちていく。口は大きく、エラまで裂ける。


・戦闘方法

 落とした涙は地面で剣山と咲く。獲物を串刺しにするために次々と涙を落とす。また、その巨体を活かした体当たりや丸噛りも脅威。剣山はしばらくすると水状化して大地に溶ける。

 気に入らない悪は八つ裂きにする。それが魔女の全て。




「幽鬼の魔女『フェードアウト・フーチャー』」


・外見

 全長一メートル半の赤い陽炎。表情も輪郭も曖昧で全容が掴めない。滑るように移動する。基本は無手だが、気付くと何かしらの武器を握っていたりと安定しない。


・戦闘方法

 魔女本体は摂氏三千度に匹敵する。その全ての熱量は中心に向かっていて、周囲の空間には影響を与えない。だが、その身にまともに触れれば即座に焼き殺される。また、魔女の身体は自在に伸び縮みして、気まぐれに気まぐれな武器を持っていたりして、そのどれもに触れても摂氏三千度の餌食となる。

 どっちつかずに虚ろっていく。それが魔女の全て。




「園芸の魔女『スコップ・スコーン』」


・外見

 不自然に広がる芝生が魔女の本体である。奇怪な植物が次々と顔を出してこんにちわ。時々綺麗な花を実らせる。


・戦闘方法

 謎の植物は全て食肉植物であり、近付いた獲物を補食する。また、実った花は種子を飛ばして魔女の勢力圏をじわじわと伸ばす。

 遊び、育て、広がる。それが魔女の全て。




「寂寥の魔女『ミミノ・マモムーモ』」


・外見

 一本足の小柄な少女。長い髪に全身が覆い隠されて詳細な姿は分からない。声はやたら可愛いがあんまり喋らない。


・戦闘方法

 気付くと近くにいる。大体二メートルくらいの距離を保っていて、近付くと離れてしまう。こちらには一切攻撃してこないが、常に付きまとってくる。どこか慣れたような気がしてくると、ふとその姿が消えてしまうのだ。すると、堪らない寂しさが込み上げてくるのだ。ちなみに、遠距離の攻撃手段があれば簡単に倒せるが、その悲鳴を聞くと堪らない罪悪感に襲われる。

 人は失って初めてその大事さに気付く。それが魔女の全て。



「童心の魔女『グルメル』」


・外見

 針金のように細長い人型の魔女。その顔は妙に細長いパーツで成り立っている。常にお腹を空かしているが、頑張って涙を堪えている。攻撃時には奇怪な笑い声を上げるが、その表情はどこか無邪気。


・戦闘方法

 両手に持つ巨大な棍棒で磨り潰してくる。しかし、その重量に細身の身体は耐えられず、少しずつ自己崩壊を続ける。やがてバラバラになった魔女はそのまま死滅するのだ。

 その身の破滅を余すことなく楽しむ。それが魔女の全て。




「彼岸の魔女『トロイメライハート』」


・外見

 全長五メートルほどの巨大なハート。黒くなったり赤くなったりしながらふるふると震えている。触るとふんわり気持ち良く、ほんのりと温かい。


・戦闘方法

 サイケデリックなフラッシュを連発する。まともに直視すると身体に異常をきたしたり、幻覚に囚われたりする。近付けば近付くほど幸せな感覚に囚われて精神をじっくりと腐敗させる。また、時々繰り出す突進攻撃も非常に強力。

 現実を溢れんばかりの幸福で塗り潰す。それが魔女の全て。




「終演の魔女『リコール・ノン・アンコール』」


・外見

 全長十メートルを超える巨大な砂時計。傾いた状態で宙に浮いている。その周囲には暴風圏と無重力空間に満たされていて、時間経過で世界をバラバラに崩壊させる。その砂が落ちきった時、それが世界の崩壊。


・戦闘方法

 何もせず、ただそこに在るだけ。ただそれだけで世界が崩壊していく。実は世界の始まりから存在していたらしいが、世界の終わりまでその存在を眩ましている。その砂粒の一つ一つが運命の種子であり、仮に砂時計を破壊できたとしても世界は壊れて崩れ落ちる。

 世界を支える舞台装置は静かに終わりを示す。それが魔女の全て。





「裏話」


 意味不明な怪物たち。意味不明な心が具現化したような意味不明たち。まともにコイツらと戦っていると、どんどん気が狂ってくる。だから、魔法少女たちはどこか頭のタガが外れているのだ。魔女は、そんな頭のタガが外れた少女たちの成れの果て。

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