【アッシュワールド】【vs100】ゾン子（【異世界社長戦争】【vsカリカチュア】）【vsアルファベット】

vsアルファベット

Re：プロフィール

『ゾン子・リベンジ』

「外見」

　死体にありったけの魂を詰め込んで創られたゾンビ少女。暗黒大陸の神の名を冠し、憑依させた屍神（ししん）。

　身長150程で痩せ型。白のワンピースに麦わら帽子。慣れないブーツに四苦八苦しながらも、赤いアンダーリムのグラサンでお洒落に決めている。それでも、その顔に浮き出る死相は隠せない。

「性格」

　ゾンビなので性根が腐っている。が、最近性根を叩き直されている。

　飽きっぽく、一人称がころころ変わる。派手好きで自信過剰。迂闊な行動でよく足元を掬われるが、悪知恵を働かせて窮地を脱することも。虚言癖が目立つ。

　その一方で家族思い。とってもお兄ちゃん子。口を開けば憎まれ口だが、屍神の仲間たちは皆家族、と大切に思っている。

　飄々としているが、動揺すればするほど動きがぶれていく。

「経歴」

　暗黒大陸某国にて製造される。一応長女。

　『王』に付き従い、七の屍神の第三として活動する。とある理由から欧米日露への破壊工作を敢行。欧州に打撃を与えた後に、日本皇国の軍事の要たる『頂機関』に攻撃。あっさりとバラバラにされる。

　また、隠密行動中なので目立つ行為は厳禁である。迂闊な行動で巨大企業から恨みを買い、現在オセアニアの某所に謹慎中。その間、兄貴分に修行をつけてもらっており、生物との呼吸、駆け引きを身に付けた。

「装備」

・水のタリスマン

　自らの頭蓋、効果は水の精霊への干渉。腐っても神である。周囲の水分を自在に操り、攻撃を行う。色々出来るが、超高水圧から放つウォーターカッターがマイブーム。死ぬ気になれば自分の血液でも攻撃できるが、あっという間に干からびて死ぬ。装備なので自由に取り外し可能。

・うるおいボディ

　製造に若い女性の死体と魂を多く使われたため、もちもちのうるおいボディを手に入れた。腐っても女の子である。乾燥に強い。装備なのでもちろん取り外し可能。

・観察眼

　鵜の目鷹の目金糸雀の目。ある真っ直ぐな目をした少女の魂を喰らい、自然と一体化する修行を経た結果、生体の筋肉の動きを捉え、行動を予測する力を身に付けた。呼吸や感情の機微をも判断材料とするが、生体以外には効果が薄い。

　装備なので取り外し可能。飛び道具にもなる。　

「能力」

・不死身

　虐げられた歴史は死者の魂を孕む。死体に幾千もの魂を詰め込まれ、『神懸かり』によって一個の生物兵器として統合された彼女は、数多の魂の数だけ完全復活する。数えきれない命のストックは、実質不死身。もちろんストックが尽きれば死は避けられない。

　無駄遣いは止めるよう厳命された。

・虹蛇の権能

　虹の化身としての権能を行使する。原理不明の命を蝕む呪術を放ち、死体を召喚・使役する。全力展開すればガチですんごいらしい。生体以外には効果がない。

・怪力

　肉体のリミッターを強制解除出来る。その代償に肉体が自壊するが、不死身のゾンビには関係ない。最近のマイブームはデンプシーロール。

・死んだふり

　カンパニーの戦闘実験を経て編み出した必殺技。必ず殺されたと思わせる技術。死体の死んだふりである。

・駆け引き

　相手の呼吸を読み、行動を予測して優位に立ち回る力。不死身故に読み外しを恐れる必要はない。でも、機械の心は分からないんだ。

「経緯」

　オセアニア某所。

「なんでお前がここにいんの？」

　二メートルを越す長身。二対四足、巨大な虫の化け物。そんな怪物から見下ろされても、くりくりとした眼のせいか愛嬌が感じられた。

「オマエ二アイニキタ」

「いやん、照れちゃう！」

　身を捩らすゾン子だが、その目は笑っていなかった。潜伏行動中なのだ。居場所が筒抜けなのは流石に洒落にならない。妙に愛嬌のあるこの怪物とは殺しあった仲ではあるが、カンパニー脱出に手を貸してくれた恩人でもある。恩虫人だ。

「で、どうしてここに？」

　水気がざわめく。互いに手の内は知れている。

　なんで、ではなく、どうして。どうやって。理由ではなく方法。虫人はわざとらしく小首を傾げた。

「オマエ、ハッシンキシコマレテル」

　肉体に埋め込まれている、と。螻蛄は自分の左胸を指した。

「心臓？　あたしが不死身だって忘れちゃいないよねん。心臓ごと怪しい機械をむしり取っちゃえばいい話っしょ」

　からかうようにゾン子が笑った。彼女はどうもこの虫人を下に見たがる節があった。対するオケラはにへらと笑う。

「……待て。あれから胸のしこりが気になると思ってたんだ。死体にもおっぱいの成長期があるって信じてたのに！！　てめえ、てめえらぁぁあああ！！？」

「ヒダリチクビ。エキタイキンゾクデドウカシテルカラセツジョヒツヨウ」

「左方のチビクロちゃんに何してくれちゃったのっ！！」

　死体でも前代未聞である。死ねば肉体は完全復活してしまうため、肉体と同化してしまうと、切り取ったまま生きなければならない。不死身の殺し方の新しい切り口だ。

　虫人がにへらと笑った。その笑い方が気に入ったらしい。

「へえ――――失態だな」

　武骨、というより骨を被った大男が音もなく現れた。オケラがびくりと身を震わせた。左手に持つ半月刀（シャムシール）がぎらりと光沢を放つ。首を落とそうと思えば、この一瞬で完遂出来た。

「珍しいな、友達か？　この隠れ場まで行き着くなんて熱烈な娘じゃないか」

「そんなんじゃないやい！」

　両手を上げたゾン子がぷんすか怒る。

　彼は屍神の二。頼れる兄貴分だ。仲睦まじそうな間柄を見て警戒を解いたようだった。骨の奥から真っ直ぐ見つめられて、虫人が視線を下げる。

「アノ」

　直立不動。ぎこちなく腰を曲げる。小さな翅がぷるぷる震えていた。

「パパヲ、タスケテクダサイ」

　懇願。震える姿を見てゾン子が顔色を変える。死体でも修行の末に感情移入が出来るようになった。

　異世界螻蛄。突然変異との殺し合いに敗れたゾン子は解体を待つばかりだった。そんな中、事件は起きた。pwカンパニー社長の分裂現象及び、前社長オルガノ・ハナダの逃走。彼を一番のパパと慕う虫人は、脱走の手助けと引き換えにゾン子を救い出したのだ。その他様々な助けがあって、ゾン子はあの巨大企業から辛くも逃げ延びたのだった。

　事件の全容は未だに不明。しかし、踏み込む蛮勇など彼女には無かった。それはゾン子にとっての本筋ではないのだ。

「カゾクヲ、タスケテ」

「まだ狙われてんのか？　自分でやりな」

「そいつは無理な相談だ」

「あ？　何でだよ、レグ兄」

　骨被りの男は右手をオケラに向ける。あれほど強靭な強度を誇っていた高密度外骨格が見るも無惨にズタボロにされていた。文字通り、虫の息。

「……ここまで一人で頑張ったのか。よくやった」

　男の大きな手が虫人の頭に伸びる。びくりと震えた身体が崩れるように倒れ、やがて甘えるようにその身を預ける。すすり泣くような小さな声が聞こえた。本当に、もうどうしようもなかったのだろう。最後の最後でここに頼るしかなかったのだ。

　ゾン子はむすっと頬を膨らませて二人の間に入った。両者を手で威嚇して吠える。

「あたしは行かないぞ。もう懲り懲りだって言ったんだ」

　あの研究者に。

「アイダ、お前が繋いだ縁だ。お前の運命だ。自分で交差路を歩め」

「…………交換条件、あたしのチビクロさんを戻せよな「あと、カンパニーの顧客情報を流して欲しい」んもぅう、何なんだよぉ！！」

「ああ、ちょっと確認したいことがあってな」

　伏し目がちに虫人が頷いた。カンパニーを取るか、父と慕ったあの男を取るか。その天秤は何があったのかとっくに傾いていた。でなければ、今ここにいない。

　覚悟に謀略を睨んだ男の口元が、にやりと歪んだ。

「この運命のタリスマンが幸運を約束する。運命の交差路を邁進せよ。この子の治療は仙術が使える俺が適任だろう」

「りょーかい、屍神の命なら仕方なし」

　男の不自然に強張った右手が、少女の頭に乗せられた。

　ゾン子は兄貴分にすり寄ろうとする虫人を引き剥がす。うるうると懇願されて折れた。自分より幾分も大きい相手を包み込むように抱き寄せる。

（レグ兄のことだ。何か考えがある。落ち着いて考えて、正解を掴め）

「もう、お姉ちゃんに任せとけ。で、どこに行けばいいんだ？」

　甘えた猫のようにくたくたになったオケラちゃんが小さな口を開いた。

――――異界電力ベイエリア、と。