6 朝の対決。昼の対決②
♦♦♦
「どおおりゃああああ!!」
「しゃあああああっ!!」
ともちゃんの回し蹴りが空気を切り裂き、撫ちゃんが絶妙な間合いでそれをかわす。
続けてともちゃんの軸足にローキックを放って体勢を崩すと、一気に懐に飛び込んだ。
その脳天に向かって、ともちゃんの必殺の肘が襲いかかる。
いつも通りの見慣れた光景、教室は今日も平和だ。
どうも、
竜野宮第四中学2年4組。身長体重……あ、興味ないですか。そうですか。
ともちゃんもすっかり機嫌が直ったみたいで、いつものように撫ちゃんと仲良く喧嘩をしています。
傍から見ればどう見ても本気の殺し合いですが、毎度のことなので、この教室には気にする奴なんか一人もいません。
しかしまあ、毎日毎日飽きもせず、よくこんな喧嘩ばかりできるもんだよ。
感心しちゃうね。
「ねえダイキ、ホントにあれ止めなくていいの?」
キャンディが隣で動画を撮りながら、聞いてくる。
実はキャンディは隣のクラスなのだが、しょっちゅううちの教室に遊びに来る。目的はもちろん、ともちゃんと撫ちゃんだ。
この変態外人は、留学当初からともちゃんに目を付けて勝手にライバル視し、その後すぐに仲良くなって、痴漢行為を続けている。
撫ちゃんはそのついでみたいなもんだったんだけど、一目見た瞬間に「カワイー! 欲しいー! おうち持って帰るー!」と叫んで抱きつき、ともちゃんに殴り倒されていた。
「止めるって、どうやって? あいつらの間に割り込んだりしたら、こっちが殺されちゃうよ」
「デスヨネー」
今日の喧嘩の原因は、ええと、おっぱいです。
つい5分ほど前のことでした。撫ちゃんが机に突っ伏して寝ていたところにともちゃんが来て、正面によっこらしょと座ったのです。
するとなんと、ともちゃんのおっぱいが撫ちゃんの頭の上に乗っかって、いい感じにはまってしまいました。
ともちゃんが「撫子そろそろ起きなさい」と撫ちゃんをゆさぶりますが、その時撫ちゃんは、おっぱいで頭を抑え付けられて起きるどころか窒息しそうになっていたのです。
で、「殺す気かこのバカおっぱい! 今日こそその脂身をもぎ取ってやる!」となった訳です。
「トモエのキックはすごいね、こっちまで音が聞こえてくる。あ、見えた、シマシマ」
「ともちゃんは、小さい頃からお父さんの道場で空手を習ってるからね。有段者だよ」
「オウ、カラテマスターね」
しかもあの体格。男子並みのパワーで、全身が凶器だ。
でも、そんなともちゃんも凄いけど、そのカラテマスターと何の訓練もなしに互角に渡り合う撫ちゃんって、ホントにすげえって思う。
考えてみれば、ともちゃんと毎日これだけやり合ってりゃ、バスケのディフェンスを躱すくらいは楽勝だよな。
「ナデシコもすごい、ニンジャみたい」
「さすがキャンディ、わかってるな。よく見てみ? 時々撫ちゃんが二人に見えたりとか、ともちゃんも手が2本とか3本に見えるだろ?」
「うん、ホントだ」
「あれが忍法、分身の術だ」
「ワオ! サスケね!」
「古いの知ってるな!」
しかし冗談じゃなく、あいつらの体捌きはマジで分身レベルだもんな。ああ恐ろしい。
と、撫ちゃんがともちゃんの放った手刀を左腕でいなし、隙を突いて両手でしっかりとおっぱいを掴んだ。
「引っ込めおっぱい!」
「あんっっ!」
勝負あり。撫ちゃんの勝ちだ。
「ぐほ!」
いや、同時にともちゃんの膝が、撫ちゃんの腹部を捕らえていた。今日は引き分けか。
「Oh……」
キャンディが声を漏らす。
それにしても、どうして撫ちゃんは、こんなにもともちゃんのおっぱいを目の敵にすんのかね。
そりゃあ、二人の胸を見比べれば聞くまでもないだろうとは思うけどさ。でも、あのやたらと掴みたがる様子は、どう見ても嫌いじゃなくて、おっぱい大好きにしか見えない。
実は、以前一度だけ聞いてみたことがあるんだけど、その時の撫ちゃんは怒るでも笑うでもなく、何か微妙な顔をしていたんだよな。
あの顔がなぜか忘れられなくて、あれ以来聞いてないけど。でも、今日の喧嘩の様子なんかを見ていると、ただの見間違いだったんじゃないかという気もしてくる。
うーん。
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