第14話 楽しい事

てくてくてくてく


最近どこかへ向かうお客さんが絶えない。

「何今の?」

「いっぱいお客さんが……あっちに何かあるのかな?」

「んー……みんな何て言ってるんだろぉ……あたし聴力悪いから代わりに聞いてよぉ……」

「僕も聴力悪いんだよ……ごめん……」

「あ、私聞くよ」

まあ聴力はいい方だし……飼育員として!

聞き耳立てて……

「コツメカワウソショーってあっちよね?」

「そうだぜ。一緒に行こう。」

「うん♥」

……フルルとグレープとかリア獣は爆発しないでほしい。

「ただしリア充は爆発しろぉ!」

「「「……はぁ?」」」

何言ってんだこいつと思われた。


「「「コツメカワウソショー?」」」

「うん……確かにそう言っていたよ」

聞き間違いではないはず。

「んーもしかして……」

「ネイタ何か知ってるの?」

「コツメカワウソには特技があるから……それを披露してるんじゃない?」

「例えば例えば?」

ゴキブリが興味を示す。

「10種類以上の声を使い分けたりお手玉したり……」

「すごーい!」

コツメカワウソもすごいが……それを知っているネイタもすごい。ネイタは本当にベテラン飼育員なんだなぁ……

「私行きたーーーい!」

「ゴキブリ落ち着いて……まあショーに行くのもいいね」

「あたしも行きたいなぁ……」

「じゃあみんなで行こうよ!」

「「「「おーーー!」」」」

こうしてみんなで『コツメカワウソショー』を観る事にした。


「ここかな?」

「もうみんな集まってるねー」

周りは賑わっている。

「ふふーん!とうちゃーく!」

滑り台の上にコツメカワウソが出てきた。みんな歓声を上げる。

コツメカワウソ……水中で待機していたのか。

「わーい!たーのしー!」

滑り台を滑るコツメカワウソ……本当に楽しそうだな。

「みんなー!今日は来てくれてありがとー!最後まで楽しんでねー!」

ゴキブリはコツメカワウソのショーに釘付けになっている。


「この石でお手玉するよー!まずは1つー!」

1つの石を絶対に落とさずパフォーマンスをしてみせた。

踊ったり走ったり跳んだり。

その器用さに自然と拍手が起こった。

「たーのしー!」

そして石は3つに増えた。石が増えてもその器用さは変わらなかった。

すごいなコツメカワウソ……


「石はやめるよー!泳ぎながらパフォーマンスー!」

石を捨て、水中に飛び込んだコツメカワウソはとにかく泳いだ。

でもその泳ぎも1つ1つが綺麗で、観ていて気持ちが良かった。

「バタフラーイ!」

バタフライ……カワウソなのに蝶々……?まあいいか。


「最後は歌を歌うよー!聞いて下さい!『たーのしーたーのしーたーのしー!』」

コツメカワウソは歌を歌い出した。可愛い声……みんな聞き惚れている。

……あっ、この歌詞……


こうしてショーは終わった。

「~♪」

「それさっきの歌の鼻歌?」

「……まあね。」



『たーのしーこと、たのしーと思えることが 絶対絶対絶対一番たーのしーから!』

いつか歌詞を覚えてゴキブリに歌ってあげたい。ゴキブリにはたーのしー思いをしてほしい。

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