第9話 修行する
「光沢のある短くて黒い髪(多分ゴキブリの頭)。
お尻ら辺にある、アームカバーとズボンと同じ色のリボン(きっとリボンの細い紐がゴキブリの真ん中の足)。
足まで届くくらい長く、透き通った翅。
……綺麗だよねー!」
「あ、ありがとう……」
ネイタ……ミナミコアリクイが嫉妬するぞ!
「あたしはぁー!?」
ほら見ろ。
「『うぅー!』って感じの表情。
ふわふわした尻尾と服。
可愛くてワイルドな最強の威嚇ポーズ。
……可愛過ぎる!」
「そ、そうかなぁ……」
ネイタ、お前すごいな。
「あら、賑やかですね。」
「あ、クジャクだ!」
「あらネイタさん。」
クジャク……綺麗なのってオスじゃね!?と思ったが、カブトムシも女の子なのに角があったから今更感があるな。動物のオスも無理矢理ヒトの女の子になってしまうのだろう。
「色とりどりの飾り羽。
誰にでも優しい心の美。
濃く深い青い髪。
……マジで美しい!」
「うふふ、ありがとうございます。」
「あの。1つ聞きたい事が。もっと綺麗になるにはどうすれば?」
「え?あなたも充分綺麗ですよ?光って見える……」
「でも、私はヒトに嫌われ続けたので……私はもっと綺麗になりたいです!」
確かにゴキブリを嫌うヒトはいっぱいいるけど……
「……フレンズ化したから良いじゃん。」
返ってきたのは意外な言葉だった。
「良くない。」
「え、何で?」
「私の仲間はみんな、きっと気持ち悪いからという勝手な理由で死んでしまったんだ。だから私、死んじゃったみんなの分まで綺麗になりたい。」
ゴキブリらしい回答だった。
今ゴキブリは仲間が死んだ悲しみと恐怖を背負って生きている。
ならば、私がジャパリパークで楽しい思い出を創ってあげなきゃ。
「……分かりました。少し辛いかもだけど耐えれる?」
「……はい。頑張ります。」
「まずはウォーキング。ついてきて下さいね。」
「はい!」
「次はエクササイズ!」
「クジャクさんの腹筋速っ!」
「そして髪をとかしましょう!」
「くし?ってすごーい……」
「あ、あ、あ……」
「めっちゃ美しいーーー!」
ゴキブリはめっちゃ美しくなって帰ってきた。
「うふふ、ゴキブリ、仲間の分まで綺麗になってますよ。」
「本当?やった……!」
ゴキブリはとても嬉しそう。良かった……
「クジャクさん、ありがとうございましたー!」
「いいんです。私、ゴキブリの役に立てました。私も嬉しいです!」
「やっぱりクジャクは見た目だけじゃなくて心にも美がある!」
「いい話だなー!」
私はこれからゴキブリと楽しい思い出を創っていきたい。
悲しいカコを、忘れさせてあげたい。
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