第9話 End:B

 男「可能な限りの旅3日目。いつも通りアホな話をして、海だ海だとはしゃいで遊んで、日が沈みきってから旅館に帰った」


 男「あー、風呂に入るのも最後だったぁー」

 死「随分と長風呂だったもんな」

 男「ほんとですよ、棺に入れる時清めなくてもいいくらい洗ってきました」

 死「いや、どうせやられるから」

 男「えぇ、じゃあ普通に上がってくればよかった」

 死「後悔するほどではないわ」


 男「なんか、ドキドキします」

 死「……そうかい」

 男「寝つけません」

 死「眠くなったら寝ればいい」

 男「そうですね」


 男「俺、デス子さんに会えて幸せでした」

 死「何だ急に」

 男「ずっとストレス溜まってたんですよ、今まで」

 死「楽しいことだってあっただろうさ」

 男「あったけど、ここ最近嫌なことばっかりで」

 死「そうかい」

 男「こんなに笑ったり怒ったりしたの久しぶりでした」

 死「それはよかった」

 男「だから、ありがとうございました」

 死「……どういたしまして?」

 男「来世もまた、俺の魂取りに来てください」

 死「それはどうかな」

 男「また、デス子さんに会えるの、楽しみにしてますから」

 死「あんたの運次第だね」

 男「そう言えばデス子さん」

 死「ん?」

 男「本当の名前は、何ていうんですか?」

 死「……アネモネ、だ」

 男「……なんかしっくりきませんね」

 死「なんだって?」

 男「俺は、デス子さんの方が、好きです」

 死「そう……か」


 男寝る


 死「人は死んだらそれまで、生まれ変わったらもうそれはあんたじゃないのさ」

 死「分かってるのに、ねぇ……」


 暗転

 サス


 男「それから眠るように死にました。致死性不整脈と言うらしいです」


 暗転

 料理をする音

 徐々に明転

 皿を持って立つ男

 鍵の開く音


 死「……えっ?」


 急ぎ足の音


 男「おかえりなさい、ご飯できてますよ」

 死「はぁ???」


 死「ある日、一人暮らしの家に帰ると夕飯ができていた」

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素敵な邂逅 蒼野海 @paleblue_sea

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