第8話 Route:B

 死「今日もどこも出かけないのか」

 男「デス子さんと一緒にいれればそれでいいですもん」

 死「……まだ言うか」

 男「死ぬまで言いますよ」

 死「あと少しだろ。それに私はもう人間と恋をする気は――」

 男「『もう』?」

 死「……デス子さんも仮に君を好きになったとして、君はあと3日で死ぬんだ、お互い辛いだけだろう」

 男「じゃあ好きにならなくていいですから、俺が健やかに死ぬ時まで一緒にいてくださいよ」

 死「それじゃあお前が――」

 男「恋したことあるなら、分かるんじゃないですか」

 死「恋なんか――」

 男「誰だって、好きな人とは一緒にいたいんです」

 死「……わかったよ」

 男「そう言うと思ってました」

 死「うるさいよ」

 男・死「健やかに死んでもらうためだ」

 男「でしょう」

 死「なんか腹立つな」

 男「息ぴったりですね」

 死「そーですねー」

 男「……昔何があったかわかりませんけど」

 死「ん」

 男「デス子さんが幸せであればそれでいいです」

 死「自分の幸せはいいのか」

 男「好きな人の幸せは、俺の幸せ、とか言った方がいいですか」

 死「ははっ、若いね」

 男「若いついでにもうひとつ」

 死「ん?」

 男「いつまでも昔の男引きずってんじゃねーよ」

 死「っははは、引きずる女もいないくせに」

 男「すいませんねぇ〜」

 死「挙句変なもんに恋しやがって」

 男「ある意味デス子さんが俺の願い叶えたんじゃないですか」

 死「全く……私も罪な死神ね……」

 男「やかましいわ」


 男「明日から、残ってる金全部使って遠くに行きませんか」

 死「おぉ、やっと死ぬ前感出てきたじゃない。どこ行くの」

 男「海見たいなぁ、暖かい方の」

 死「いいね、行くか」


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