羊を数えるその前に(睡眠改善薬のお話)
「休憩いただきまーす……ふぁ~あ~ぁ」
おっきなあくびですね。大学で勉強した後のアルバイトは大変でしょう。
「いやおれ、ここんとこ寝つき悪くて。なんか寝られないんすよ。だるぅ……」
寝不足は早めの解消が望まれるバッドステータスです。あまり続くようなら、真剣に対処を考えた方がいいかもしれません。
不眠について、ちょっとお話しましょうか。おやつ食べながらでいいですよ。
睡眠が大切なのは、体と心の回復に必要だからです。
特に記憶や意識など知的な活動を担当する大脳は、起きている限り休めません。しっかり眠ることでようやく脳も休息できるのです。そして脳が休息することで、精神的な疲労も癒されるわけですね。
不健康は免疫力を減少させ、発病の可能性や持病の悪化に繋がります。気持ちも消極的で鈍くなりますが、やはり影響が大きいのは記憶力や集中力の低下ですね。
あらゆる作業効率の低下。例えば文字を読むスピードが落ちたり、文章構成能力や閃きといった、執筆の質にも関わる問題……あ、えーと、レジュメの作成とか。
「ちょっとは寝てるから大丈夫かな、って思ったら全然眠いんすよ」
眠りが浅いと回復にはつながりません。
『レム睡眠』と『ノンレム睡眠』って言葉、聞いたことありますか?
二種類の眠りが90分1セットで繰り返されながら、体を元気にしてくれるんですね。ローテーションが乱れてしまうと、体調不良につながるとか。
浅い眠りが体に良くないのは、脳がちゃんと寝ていないからなんですよ。
「おれだってちゃんと寝たいんす。でもなんで寝られないのか分っかんなくて」
不眠の原因は様々ありますが、約80%は心理的な原因だそうです。
生活環境の変化、仕事に関するストレス、身の回りのトラブル、日々の心配事などなど、不安や緊張が眠りを妨げてしまうんですよ。
また、不眠にもタイプがあります。
疲れているのに寝るまで時間がかかる、夜中に何度も目が覚める、早く目が覚めてしまい眠れないなど。
多いのは、睡眠時間のわりに寝た気がしないタイプで、
いずれにしても、不眠で悩んでいる人は思っている以上に多いんです。
「ふーん。じゃあ睡眠薬って結構売れてるんすか?」
うちの店ではコンスタントな販売実績があるますね。日本で初めて睡眠改善薬が販売されたときから、一定数売れ続けている商品だと思います。
「なんかなー、危ない薬って感じがして飲みたくないんすよ。分かります?」
副作用が怖い、依存症になりそうといったイメージはまだまだ強いみたいですね。あとは病人が飲むもの、飲み過ぎると命に係わるなんて印象も持たれているそうです。一般的な薬とは思われていないのが実際のところ。
だからこそ、安全な薬があれば使いたいと思っている人も多かったみたいです。
そこで登場した市販の薬は、世間が求めるニーズに合致していたわけですね。病院に行かなくても簡単に手に入るのは、重宝します。
「そうでしょうけど……なんか成分とかヤバそうなやつじゃないっすか?」
現在主流として使われているものは、風邪薬や鼻炎薬にもよく配合されていますよ。『塩酸ジフェンヒドラミン』という成分です。
鼻水やくしゃみに効果があり、眠くなる副作用があります。薬が効いてくるとウトウトしてしまうのは、この成分の働きなんですね。
それを寝るために利用すればと作られたのが、睡眠改善薬というわけです。
ウィークポイントを武器にする、まさに逆転の発想。小説なら「おおっ!」とテンションの上がる展開ですね。
医療用として処方される薬よりは穏やかな効き目なので、利用時の不安が少なくて試しやすいのが特徴でしょうか。
「じゃあ風邪薬と一緒に飲んだら効果が二倍ってことっすか! すげえっす!」
ダメっす! 同じ成分や同じ効能の薬と併用してはいけません! 効果が重なるなど、体に負担になってしまいます。せめて時間をずらして利用してください。
1日3回タイプの薬は4時間以上、2回の持続性タイプなら12時間以上置いてから封用するのが目安です。もちろんアルコールもご法度です。
使用に適した症状は「一時的な不眠」です。具体的な範囲は一週間。これ以上不眠状態が続く場合は、病院で適切な治療を受けることをお勧め致します。
「効き目が弱いって言われてもなんだかなあ……抵抗があるっていうか」
正しく使えば便利と知っていても、個人的にはご案内しにくいお薬ですね。私自身も抵抗があります。売り手側がこんなことをいうのはなんですが……。
だからまずは、取り組みやすい改善策を試すのはいかがでしょう。
厚生労働省が睡眠障害についての治療ガイドラインを出しているので、そこからいくつか抜き出してみます。
食生活の面では、就寝前のカフェイン摂取は避ける。朝食はしっかり、夜食は軽めに取る。寝酒は眠りを浅くし、夜中に目覚める原因になるので控えること。
眠りが浅い時は遅寝・早起きを試してみる、布団の中に長くいると熟眠感が減って深く眠れなくなる、仮眠は30分以内が良いというデータもあるようですね。
睡眠に適した環境も大切です。明るさや部屋の温度を変えてみたり、寝具を心地よいものにしてみるのも効果的でしょう。お風呂に入るのも体がリラックスするので眠りやすくなります。
あとは気を楽に持つことですかね。緊張状態は寝つきを悪くします。
無理して寝ない、眠たくなったら寝ればいい。こう考えるだけでも多少変わってくると思いますよ。
悩みを解消するのも安眠に繋がります。ちなみに、いま気になっていることはありますか?
「……大学出たらどうしようって。やりたいことがないから就職もなんか違くて」
ターニングポイントですね。同じ悩みを抱えている人は少なくないと思いますよ。私も今の仕事には特別な思い入れがあって就いたわけじゃありませんし。
まずは時間いっぱいまでどんな選択肢があるか探してみてはいかがでしょう。道を決めた後にやりたいことが見つかったら、そのときにまた考えればいいんです。
一本の道に絞るなり、二足を履くなり自由に。人生はフリーシナリオですから。
「はあ。そっす、ね。まあいろいろ考えてみるっす。コンビニ行ってきまーす」
答えが見つかって、ぐっすり眠れるようになってほしいものです。
みなさまも自分に合った方法で、日々の安眠を確保してくださいませ。
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