染みるし痛いし喋りにくい!(口内炎のお話)

「竹鋸さん俺を助けてくれぇぇぇぇ!」


 入店からのスライディング土下座⁉ ちょっ、一体どうしたんですか?


「彼女に口内炎が出来ちまった! このままじゃ食事できずに餓死しちまう!」


 あー……愛の深い彼氏さんですね……。

 たしかに痛くて食事がつらくなります。会話も一苦労ですし、集中力も削られて執筆や読書どころではありません。早めに治したい症状です。


 では口内炎の売り場へご案内いたします。防ぎ方もご紹介いたしますね。



 口内炎とは、口の中や周りの粘膜に現れる腫れのこと。現れた場所によって舌炎、歯肉炎、口角炎など呼び名は異なります。


 10~30代での経験者が特に多く、とりわけ女性の発症率が高いそうです。珍しい症状ではないので、多くの方が知っている痛みではないでしょうか。


「俺も苦しかったよ。だからこそ、あいつがこの苦しみを味わっていると思うと」


 この方はツッコむとキリがないタイプですね……話を進めましょう。

 口内炎には種類があります。いちばん多いのは『アフタ性口内炎』と呼ばれる症状で、白くて円形の潰瘍かいよう——ポコっとへこんだ見た目が特徴。

 痛みは強いですが、1~2週間ほどで自然に治ります。


「そいつだ彼女の命をおびやかすのは! アフタの野郎、絶対に許さねえ!」


 我慢してご飯を食べればいいと思います……とは言いにくい激情。

 ちなみに、腫れを少しでも抑えるためには熱い食べ物、濃い味付けなど刺激の強い食事は控えるといいですよ。タバコやアルコールもお休みした方が回復は早いです。


 話を戻して。

 境界線がはっきりしない腫れは『カタル性口内炎』と言います。誤って噛んだ際に菌が繁殖したり、熱湯などの物理的刺激が原因です。

 痛みは少ないのですが、口臭や味覚の妨げになるので、早めに治したいですね。


 他にもアレルギーやニコチンが原因と考えられる症状や、ウイルス性の口内炎があります。ウイルスや菌が原因の場合、治療薬は薬剤師のいるお店でしか買えない第一類医薬品となるので、購入には注意が必要ですよ。


「それで、彼女を救うためにはどんな薬を使えばいいんだ。後生だ教えてくれ!」


 症状がアフタ性口内炎ということで、ご案内させていただきます。

 形状にこだわりがなければ塗り薬が使いやすいでしょう。指の届く範囲であれば、狭い場所にも対応できます。


 飲食の痛みを抑えたいならパッチタイプがおすすめです。シール状の貼り薬なら患部を覆ってくれるので痛みも和らぎ、薬を舐めとる心配もありません。自然に解けてなくなるフィルムタイプもあるので、剥がして捨てる手間も省けます。


 口の奥であればスプレータイプが便利でしょう。錠剤タイプもございます。

 飲み薬は他の三種類とあわせて使える製品もあるので、早期治癒をお求めの場合は併用が効果的です。


「なら貼り薬を。それも口内炎が跡形もなく消せる、とびっきりの奴を頼む」


 効き目で選ぶなら、ステロイドという強い成分が配合された商品があります。効果が良い反面、副作用によって感染症を悪化させる場合もあるので、アフタ性口内炎以外の場合は使用を控えてくださいませ。


 なかなか治らない、広範囲にできる、再発が著しい場合は受診をお勧めします。



「これであいつを救える。でもまた口内炎が現れたら……俺の愛は通用するのか?」


 アフタ性口内炎になる原因は、実のところよく分かっていません。

 考えられる原因としては免疫力の低下、睡眠不足、栄養不足が上げられます。対策としてはバランスの良い食事や睡眠の確保、ストレスを溜めないことですね。

 ……なんて、現代社会ではハードルの高い条件ばかりです。世知辛い。


 彼女さんに思い当たる生活態度はありそうですか?


「夕食代わりにポテチを食べ、明け方までゲーム実況の配信動画を見てるだけだ」


 はい確定です。愛があるなら今晩から改善に努めてください。ずっと視聴してしまう気持ちはよく分かりますが、体調を崩さない程度に楽しみましょう。

 他にも口内炎を防ぐ手段はあるので、実践しやすいところでお話いたします。


 簡単なのは歯磨きとうがいです。細菌の繁殖も原因と考えられるため、常に清潔を心がけるだけでも発症率は変わってくるでしょう。

 殺菌成分を含むうがい薬を使うと効果的ですが、水だけでもブクブクガラガラと音を立てて一分間うがいをするだけでも、口の中が綺麗になります。


 ブラッシングの時間がないなら、こまめに緑茶を飲んではいかがでしょうか。抗菌作用のあるカテキンが含まれていれば、繁殖を抑制するプラスワンになります。

 乾燥状態も好ましくないので、アメやガムで潤いを保つのもよいでしょう。


「あいつがポテチ以外の物を口に入れるかどうか。愛が試されるところだな」


 ポテチ大好きでいらっしゃいますね……お菓子だけで食事を済ませると栄養不足を招きやすいので、愛の力できちんとした食生活に導いてあげてください。


 食事に関する対策なら、ビタミン剤も手間がかかりません。治っても再発しやすい方はビタミン不足も考えられるので、栄養を補ってあげるのも方法の一つでしょう。

 ビタミンA、B群、Cが治癒力や免疫力アップを助けてくれます。


 ストレスに関しては対策が難しいところですが……お風呂に入ったり、趣味に没頭したり、リラックスすることが大切です。忙しい方も口内炎を防ぐためと自分に言い聞かせて、家でゴロゴロしてみましょう。心身の充実が一番の薬かもしれません。


 精神面で言えば、ストレスによる胃の不調も原因と考えられています。

 定期的に口内炎で悩む方は、調子を整える胃薬をお試しいただくのも改善の手段かと存じます。


「薬も知識も手に入った、あとは俺の愛であいつを助けて見せる! じゃあな!」


 ありがとうございましたー。熱量の高いお客様でしたね。ですが、相手を思いやる気持ちはビシビシ伝わってきました。今後も幸せな関係を続けてほしいものです。

 ひと言添えるのであれば、お菓子の食べ過ぎは控えましょうね。

 

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