ぺらぺらだけど優秀なんです(マスクのお話)

 いらっしゃいませー。何かお探しですか。

 ……小学生、いや、中学生かな。短パンは活動的に見えるけど根は内気そう。


「マスクを買いに来たんだけど、ボク、使うの初めてだから」


 いっぱいあって困っていたというわけですね。

 近年では病気の予防だけでなく、花粉対策から装飾品ファッションとして年中売れる商品になりました。私も乾燥から喉を守るため、寝るときには必ずつけています。


「どれがいいのか分からなくて……ごめんなさい」


 こちらこそ気がつかずに申し訳ございません。知らない人に声をかけるって、ドキドキしちゃいますよね。大人だってそうなんですから。

 かしこまりました。では私がマスクについてご説明させていただきます。


「本当ですか! ありがとうございます、おにいさん!」


 お兄さん……昨日の子供にはおじちゃんって言われたのに……なんて良い子!

 よーし、お兄さん張り切ってお話しちゃうよ!



 マスクは大きく三つの形があります。


 ひとつ目は『平型』タイプ。シンプルで、昔ながらのという印象でしょうか。

 口まわりに密着するので常に唇が触れてしまいますが、暖かい温度と湿気を保ちます。素材によりますが、洗って繰り返し使えるのが経済的ですね。


 ふたつ目は、折り目がたくさんついている『プリーツ型』マスク。プリーツスカートの「折りひだ」と同じ意味です。使い捨てマスクと言えばこれですね。

 口を動かしてもズレにくい。折り目を広げれば口元の空間に余裕ができ、圧迫感を減らすことができます。


 みっつ目が、顔のラインに沿った形状の『立体型』マスク。キャシャーンみたいな……って今の子は分からないか。えーと……ひだのない、かっこいいマスクです。プリーツ型の進化系ですね。


 顔の輪郭に合わせてデザインされているので、ピッタリした着け心地。それでいて口まわりにも空間ができるので、息苦しさも少ないでしょう。リップクリームを塗っても安心して装着できます。他の二つに比べて、ちょっぴり値段も高めでしょうか。


「いろいろあるんですね。最初はどれにしよう」


 初めてなら一番売れているプリーツ型がいいと思いますよ。こちらが見本です。


「……ぺらぺら。これで病気の予防になるんですか?」


 薄くて頼りなさげですが、実は高性能なんです。

 一般的なマスクは中にフィルタが挟んであって、ウイルスを含む飛沫ひまつ——しぶきのことですね——や異物の侵入を防いだり、自分がくしゃみをしたときに飛び散るのを抑えてくれるんですよ。


「そんなに飛び散るの?」


 せき1回にはウイルスが約10万個含まれていて、2~3m先まで飛ぶそうです。くしゃみはなんと約200万個で、3~5m先まで放出されると言われています。標準的な教室の黒板が横幅3.6mらしいので、結構な距離を飛ぶんですよ。


 他にも外気を温めてから体に吸い込む保温性とか、口から肺に続く気道きどうを湿らせて、侵入したウイルスの増殖を抑える保湿性が期待できますね。

 冷たい空気や乾いた空気を吸うとせきが出やすい方は、症状の緩和になります。


「すごいなあ……でもウイルスってすごく小さいから、通り抜けませんか?」


 私も小さい頃は同じことを考えていました。

 例えばインフルエンザウイルスの大きさは0.1μmミクロン、1000分の1ミリ程度なので、普通のマスクフィルタでは通り抜けてしまいます。


 ですがウイルスは小さくて軽いため、自力で飛ぶことができません。通常は唾液などの飛沫に含まれて広がり、大きさが5μmになるので捕まえられるんです。


「このぺらぺらの中にフィルタ? が挟まってるのかあ……全然分かんないや」


 家庭用マスクのフィルタは、ほとんどが不織布ふしょくふですね。

 織らずに熱や機械で絡み合わせたもので、糸にして織った布よりも薄くて、目が細かいのが特徴です。2003年頃から使われた素材で、品質を格段に向上させました。

 日常生活での使用を目的に、快適さや形状を追求した結果が今の品ぞろえです。


「ボクでもちゃんと使えますか?」


 裏表や上下の向きを間違えず、耳にかけるだけですから簡単ですよ。

 一般的なプリーツ型であれば、耳ひもの接着面は内側に、鼻当てがついている方が上に向きます。商品によって異なる場合があるので、ご確認ください。


 気をつけるとすれば、顔とマスクの隙間をなるべく作らないこと。性能が良くても、フィルタを通過した空気を吸わないと意味がありませんから。


「ぴったりしていた方がいいんだ。でもサイズなんて測ったことないです」


 自分の顔はどの大きさか、という質問は多いですね。一応、測る方法があります。


 まず親指と人差し指でL字を作ってください。親指の先を耳の一番上の付け根に、人差し指は鼻の付け根から1cmくらいのところに当てます。メガネを着けている方は外して測りましょう。二つの指の間の長さがサイズの目安になります。


 10.5~12.5cmなら小さめ、12~14.5cmならふつうサイズ、14cm以上だと大きめサイズがおすすめなのですが……物差しとサイズ表がないと調べられませんよね。

 あらかじめ計測しておくと、スムーズに買い物ができるかもしれません。


「このくらいになりました」


 ではメジャーで測ってみましょう。12.5cm……小さめだと少し窮屈かな。ふつうサイズがいいかもしれません。


「え、でもふつうは男の子、小さめは女の子って意味じゃないんですか?」


 それもよく聞かれるのですが、大きさと性別は関係ありません。大切なのはフィット感です。小さいサイズが合う男性もいますし、逆も然り。外見でマスクがどの大きさかなんて分かりませんし、気にしなくても大丈夫ですよ。


「よかった。じゃあこれにしよっと……小顔に見える、化粧が落ちにくい」


 ああ、そちらは大人の女性を中心に売れています。細かな部分に気を遣わなければならないことを、男は汲み取らなきゃいけませんね……。


「へえ。ボクも大人になったら使ってみます。おにいさんありがとう。じゃあね」


 ありがとうございまーす。

 皆さんも自分に合ったマスクを選んで、ウイルスに負けない生活を送りましょう。



 ………………あれ、女の子?

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