服が食べられている⁉(防虫剤のお話)
暦の上では秋に入りました。これから半袖だとちょっと寒いかなー、なんて日もちらほら出てくることでしょう。衣替えの季節です。
「秋冬もオシャレに決めるぞーっていゃぁぁぁぁ! 服に穴がッ⁉」
あー、衣類害虫に食べられちゃいましたね。
半年間を無事に乗り越えるには、しっかりした準備で虫食いを防がねばなりません。
というわけで今回は、防虫剤のお話をさせていただきます。
「なんで服を食べるの! 虫は大人しく花の蜜でも吸ってりゃいいのよ!」
よほどお気に入りの洋服だったのですね。衣類害虫はウールやカシミヤなどの動物性繊維が好物なのです。しかし、綿などの植物性繊維や化学繊維の美味しさにも気づいてしまったようで、素材に限らずもぐもぐします。
「駆逐してやる! 家の中にいる奴ら全員を、一匹残らずな!」
心中お察しするので、伸ばしたカッターナイフをこっちに向けないでください。
もしかして今回は、この方と一対一で進める形式ですか……えぇー……。
虫は年中過ごしやすい温度の室内、とりわけ、暗くて湿気の溜まるタンスやクローゼットの中が快適空間。時折、開けっ放しにして風通しを良くすると、移住防止に繋がるでしょう。
あとは外に干してある衣類にくっついて、室内に引っ越してくる場合もあります。特に衣替えのシーズンの春・秋は元気に外を飛んでいるので、干したものを取り込んでから収納する場合は、気をつけなければなりません。
「半年前の私が注意を
そんなことありません、としか言わせない重圧……発言に自由がない……。
約半年間、無防備で収納するのは虫に食べてくださいと差し出しているようなもの。そこで活用していただきたいのが防虫剤です。秋冬の衣替えシーズンである9月・10月は特に売り上げの高い季節商材なんですよ。
「防虫? 生ぬるいこと言ってないで、殺虫剤を吹きかければいいじゃない」
ありそうでなかった発想! でも薬品まみれの服……着たいですか?
殺虫剤が攻撃特化なら、防虫剤は文字通り防衛特化。
成分が空気中に広がることで長期間、虫を寄せ付けません。さらに食欲や卵の孵化を抑制してくれるので、殺虫剤を吹きかけて収納するより効果的なんです。
昔は
今は匂いがなく、何かと便利な無香系製剤が主流になっています。近年ではせっけんや花などの香りつきも登場し、出してすぐに着られるものも。テレビのCMで「匂いのつかない~」なんて歌っているのは、こちらの成分でしょう。
無香系なのに香りつきってなんだよ、というツッコミはご容赦ください。
「もう無香系だけでいいじゃない。なんでまだ匂いつきが売っているの?」
有臭系製剤は和服や人形の収納に適した成分が多いのです。
匂いだって風通しの良いところで干しておけば、半日から三日ほどで消えるのですが、やっぱり気になっちゃいますよね。
1980年代に登場した無香系が、今や市場売上の約七割を占めるのも頷けます。
「売り場に来てみたけれど……なんだか種類が多いわね。箱もでかいし」
軽いので持って帰るのは楽なのですが、かさばっちゃうんですよね。
収納場所に応じた商品が各社から発売されていますが、ほとんどはパッケージに「〇〇用」と書かれているので、迷うことは少ないと思います。必要に応じた商品をお買い求めください。
「書かれている場所以外で使うとどうなるの?」
十分な効力が出ないかもしれません。例えばタンスとクローゼットでは広さが違うので、成分量も異なります。決められた場所で使用するのが無難でしょう。
また、服に使用されている素材によっても適する適さないがあるので、お気に入りのオシャレ着を収納する際には注意しましょう。
ちなみに使い残した分はチャック付きの食品保存袋などに入れて、冷暗場所で保存しておけば、次のシーズンも使えます。
使用方法はパッケージの裏に記載されていますが、簡単にお伝えしますね。
防虫成分は空気より重いので、衣類の上に乗せましょう。
衣類の詰め込み過ぎは、効果が行き渡らない場合があります。空間の二割くらいは開けておきましょう。衣類ケースであれば、しっかり密閉することも大切です。
「ちょっと、肝心の衣替えの仕方が書いてないじゃない。どうすればいいの?」
まずはカッターの刃を引っ込めてください。口頭でご説明しますから。
決行日は晴れた日で、最も乾燥しやすいの10~14時がベストです。
汗や食べこぼしは虫たちにとって食の進むトッピングなので、しっかり洗い落としましょう。収納場所の清掃も大事です。
湿気はカビの原因になります。しっかりと乾かすことはもちろん、クリーニングのビニールカバーも外してください。空気がこもってしまうためです。
この辺りは除湿剤のお話をしたときに触れました。あちらでも書いたように、除湿剤との併用もお勧めです。
衣服の素材にもよりますが、干しているときにくっついてくる虫が不安であれば、アイロンをかけましょう。熱処理で一掃できます。洗濯不可の衣類にも使える手段。
特に大切な洋服には、圧縮袋や防虫カバーを使いましょう。より衣服の生存確率が上がります。
収納にも一工夫を。
虫は上から下に向かって食べ進む習性があります。重ねて入れておくと、被害が拡大するリスクも……。収納の際には立てておくとリスクが減ります。たたみ方を変える必要があるかもしれませんが、半年に一度ならと思って試してみてください。
「次の休みに試してみるわ。これでまた穴が開いていたら責任取ってね。んじゃ」
ありがとうございましたー。ふぅ、とりあえず来年の春手前までは命が伸びました。どうかあの方の服が食べられませんように……。
みなさまも、お洋服は大切にしまってあげてくださいね。
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