眠いけど頑張りたいときは(眠気防止剤のお話)
当エッセイに、テーマのご要望を頂戴いたしました。
リクエストは『眠気覚ましの薬』について。ずっと気になっていらっしゃった、とのこと。
誰しも一度は戦ったことのある睡魔。やつらは不滅で、何度でも襲ってきます。
強大な影響力の前に、耐えるしかできない人類。だからこそ、一つでも多くの対抗手段を用意しておきたいものです。
大したことはお話しできませんが……承りました。
本日は眠気覚ましの薬についてお話いたします。
「眠くなくなる薬ってことぉ? なーんかヤバみを感じちゃうんですけどぉ……」
ヤバくありません。『眠気防止薬』なんて名称でくくられることが多い、合法の医薬品です。使用年齢は15歳以上がほとんどですが。
ドラッグストアでは比較的メジャーな商品で、価格も比較的お手頃。錠剤や液体タイプなどがあります。
気になる成分ですが、特別なものではございません。
眠たいときに飲むものと言えば……コーヒーですね。眠気を覚ましてくれるカフェインが含まれていますから。
このカフェインが、眠気覚ましの薬の主成分なのです。
「ちょっと待って調べるから。えーと、カ……フェ……イ……」
グーグル先生に聞かずとも、簡単にですがご説明いたしますよ。
カフェインとは、主にコーヒー豆や茶葉に多く含まれている成分。
脳の覚醒作用があるため、眠気を覚ます他に、集中力アップにもつながります。
その他にも、体のエネルギー作りや脂肪燃焼のお手伝いをしたり、だるさを抑えてくれたり。頭痛緩和を目的として、風邪薬に入っていたりもしますね。
色々なサポート能力を備えた成分なのです。
「眠気覚ましって言やぁ栄養ドリンクだと思っていたんだが……どう違うんだ?」
栄養ドリンクにもカフェインはよく含まれています。なので、効果としては期待できますよ。違いはカフェインの量です。
製品によって様々ですが、通常サイズのビン(約100ml)にだいたい50mgでしょうか。これはコーヒー1杯あたりに含まれる量とほぼ一緒です。
他の商品とも比べてみましょう。
眠くて眠くて仕方がない気分を打ち破ってくれそうなドリンクや、目がしゃきっと覚めそうなドリンクは、コーヒー約2杯~2杯半分のカフェインを含んでいます。
「元気出すなら、やっぱエナジードリンクっしょ! 今どきは絶対コレ!」
バリエーション豊富なエナジードリンクは、製品によってカフェイン量がコーヒー約1杯~2杯半と大きく異なります。最近の主流はこちらでしょうか。
対して、眠気防止薬は一回分の服用でコーヒー約3~4杯分を摂取できます。用法・用量を守れば一日に8~10杯分の摂取が可能。
飲み物でカフェインを摂ると、水分量も多くなります。だから薬は、もっとも効率の良いカフェイン摂取アイテムなんですね。
「やだなあ~怖いなあ~、カフェインの摂りすぎ……背中がゾクーっとしたんだ」
怪談を話す稲川淳二さんばりの怯え方じゃないですか。怖い話は嫌いじゃないですが、店内でのロウソクのご使用はお控えください。火災報知器が反応する可能性がございますので。
たしかにカフェインの取りすぎは体に悪いです。
過剰な摂取は神経が刺激され過ぎて、めまいや不安などを引き起こします。消化器管も刺激するので、吐き気を感じたり、お腹を下すことも。
じゃあどれくらいまでなら問題がないのか。
実のところ、日本には明確な定めがありません。カフェインの影響は個人差が大きいので、決められないらしいです。
海外の管理機関の発表によると、一般成人(体重70kgの人)は一回に200mg以下、一日に400mg以下であれば悪影響は出ないそうです。あくまで目安ですよ。
妊婦さんや授乳中の女性は異なるので、注意しましょう。
「薬やカフェインについてはよく分かったけれど……実際効くのかな?」
これも個人差です。使用してみなければ分かりません。
普段コーヒーを飲んで眠気が抑えられる人は、眠気防止薬の効果も高いでしょう。
逆にコーヒーで目が覚めない方は、薬の効果が薄いかもしれません。カフェイン以外の成分も含まれている製品を試して、自分にベストマッチする眠気覚ましを見つけてください。
「よっしゃ! コンテスト応募に向けて、毎日飲んで書きまくってやるぜ!」
たまにならともかく、毎日はやめておいた方がいいと思います。
個人的に眠気防止薬の常用は、あまりお勧めできません。
こんな人もいますよ、って話なんですけれどね……。
入社して二年目の、ある冬の日の話です。
毎日忙しく、その日も職場を出たのは日付が変わってからでした。
車に乗って体をシートに鎮めると、急激に襲ってくる睡魔。
だけど日が昇る前に出社しなければなりません。
車内で仮眠も連日は辛い。せめて一度家に帰ってシャワーを浴びたい。
眠気を抑えるため、液体タイプの眠気防止薬を飲み干しました。
効果は抜群で、ここ一週間ほど、毎日頼っている必需品です。
カフェインが全身に回るのは約30分。効いてきた時間を見計らい、運転を始めました。
サイドブレーキを引いたのは自宅の駐車スペース。
エンジンを止めたところで、ハッとしました。
職場から自宅の駐車場まで運転してきた記憶がない。気がついたら家の前。
三十分にも満たない、今さっきの出来事にも拘わらず、まったく思い出せないのです。
実は先日も似たようなことがありました。
気がついたら業務を終えていて、過程の記憶はまったく思い出せない。
思い当たる原因は、短い睡眠時間をごまかすために朝晩飲んでいる薬くらい。
車を降りて外装を確認すると、バンパーがへこんでいました。まったく“覚え”がありません。
記憶が抜け落ちていることを自覚した時の恐怖。
それ以来、どれだけ眠くても、眠気防止薬を口にしなくなりました。
「作り話? それとも竹鋸さんの……」
一人称が誰かは置いといて。
カフェインの多量・継続摂取は気をつけて利用しましょう。
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