移動中もへっちゃらだよ(乗り物酔い防止薬のお話)

 いよいよ夏真っ盛りの八月。遊びの計画を立てている方も多いかと存じます。


「海にも山にも行くんだー! でも乗り物酔いがひどいから不安だなあ……」


 遠出するなら、長時間の乗り物移動は避けられないですよね。

 では、今回は乗り物酔い対策のお話をさせていただきましょう。

 少しでも旅を楽しむお手伝いができればいいなと思います。



 乗り物酔いとは、乗り物の揺れで気分が悪くなり、吐き気を催す症状。『加速度病』『動揺病』とも呼ばれています。


「なんで乗り物に乗っているだけで酔うの⁉ なにか悪いことした⁉」


 これ以上ない理不尽みたいに感じていらっしゃいますが……まず、酔ってしまう仕組みをご説明いたしますね。


 私たちの耳の中には、体のバランス調整を担当する器官が集まっています。これらがあーしろこーしろと脳に指示を送って、平衡感覚を保っているのです。


 脳にも情報を整理するペースがあります。

 そこへ未体験・予測不能の振動や加速がいっぺんに送られてくると、処理がだんだん追い付かなくなる。


 頭の中の平行情報と、目から実際に入ってくる風景情報にズレが生じ、混乱した脳は呼吸器官や消化器官などに誤った指示を出してしまう。

 パニックが連鎖した結果、頭痛・めまい・吐き気につながる……乗り物酔いはこうして起こるのです。


「なんだか、社会人の縮図みたい」


 次から次へと増え続ける業務で疲労し、休日出勤で曜日感覚は完全に麻痺、やがて心も体も壊していく……やめましょうこの話は! 誰も得しませんから!


 乗り物酔いの理由はこれだけではありません。

 体調に加えて、心配事や不安、恐怖感、ストレスなどの心理的理由。

 乗り物の種類や音、匂いと言った外的理由など、様々な要因があるのです。


「バスに乗っていると高確率で酔っちゃうんだよ。相性悪いのかなあ」


 乗り物酔いがもっとも起こりやすいのはバス、という統計があります。

 一般の車よりも座席の位置が高く不安定、走行中の揺れは浮くような緩さ。これらが酔いに繋がるそうです。


「じゃあ運転手さんって、相当鍛えられてるってこと?」


 自分の運転に自分が酔うって、あまり聞かないですよね。

 これは自分で操作しているためです。慣れにくわえて、揺れや加速も予測しやすい。脳も対応しやすいから、酔わないんですね。



 ではおくすりの話題に移りましょう。

 酔い止め薬の主な効能は「めまい・吐き気・頭痛の緩和及び予防」。

 時期に関係なく売れていますが、特に行楽シーズンはお買い求めが多くなります。


 乗り物酔いは一度起こると、なかなか引っ込みません。大切なのは酔わないこと。

 乗り込む30分から1時間前に薬を飲めば、効果発動状態で出発できます。これが予防としての服用です。


 薬のほとんどは眠気の副作用があります。しかし、移動中の睡眠は酔いを完全防御する最適行動。目的地に万全の態勢で到着するために寝てしまうのも、一つの手でしょう。


「来週シンガポールに出張なのだが、途中で効き目が切れたらどうすれば?」


 フライトは7~8時間くらいですか? お疲れ様です。

 終日移動の方には1日1回の持続性タイプがお勧めです。一日中効果があるので、長距離でも安心ですよ。

 目的地まで4時間くらいなら、持続性以外の薬が使いやすいでしょう。


「うちの子は小学生なんですけれど、すぐに酔っちゃうんです。何が原因かしら」


 これも統計ですが、乗り物酔いがもっとも多いのは10歳前後のお子様だそうです。理由は未発達で体の機能が安定しないため。

 さらに幼い場合は、脳の働きが未熟なので、逆に酔いにくいと言われています。


 精神面も大きく関わってきます。これはお子様に限ったことではありません。

 「酔ったらどうしよう」この不安だけでも、乗り物酔いになりやすい状態です。

 乗り物の中で吐いてしまった経験があると、排気ガスやその場の匂いだけで記憶が呼び起こされ、嘔吐感が出てきちゃう場合もあります。


「愛する我が子につらい思いをさせるのなら……忌々しき過去を封印するしか……」


 お宅のお子様は世界の命運を握る選ばれし子なんですか?

 なんだか悲しき物語が幕を開けそうなので、親御さんが封印の儀式よりも簡単に行える方法をアドバイスをさせていただきます。


 『これを飲めば、乗り物酔いなんてCHA-LAチャラ HEAD-CHA-LAヘッチャラよ☆』


 薬を渡すときに、不安を打ち消す暗示をかけてあげましょう。

 笑顔ウルトラZで言わなくてもいいので、とにかく安心させてあげるのです。


 こんな実験結果が。

 乗り物酔いの人に砂糖水を薬と言って飲ませたところ、60%以上の人が気分を解消したそうです。気の持ちようで左右するので、思い込みも強く作用するんですね。

 大人でも効果があるので、自己暗示をかけて飲めば効果アップですよ。


「私の子供は現実主義者リアリストだから、暗示が効かないのだ」


 若くしてそのような価値観をお持ちとは……堅実な将来を描いていそうですね。

 では、体調に関する予防法もお伝え致します。大切なのは二つ。


 まずは十分な睡眠。寝不足は神経のバランスを不安定にするので、酔いやすくなります。


 もう一つは適度な食事。空腹だと血糖値が低くなって脳の回転が鈍くなるため、満腹だと胃が振動の刺激を受けやすくなるため、吐き気が生じるらしいです。

 前もって食べるなら消化の良いものがお勧めです。脂っこいものは避けましょう。


 移動中はさっぱりしたもの、甘いものが酔いを防止してくれます。

 ただし柑橘系の食品は避けましょう。中に含まれているクエン酸という成分が、胃を刺激してしまうからです。

 ハーブやメントール系の爽やかな香りも、酔いを遠ざけてくれますよ。


 乗り物酔いが不安なら、薬で予防するに越したことはないでしょう。

 ではみなさま、楽しい夏をお過ごしくださいませ。

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