虫刺されでかゆ~い!(鎮痒薬/虫よけのお話)

 人間は蚊が近づくと無意識に撃退を試みます。誰だって刺されたくないですから。

 昼間はまだしも、問題は夜。

 しかし奴らは闇夜に紛れ、寝込みをうかがい刺してくる……卑劣ッ!


 刺されてしまったら仕方がない。薬を塗ってかゆみを鎮めましょう。

 

 というわけで今回は、夏にお世話になる方も多いであろう、虫刺されのお薬についてお話します。



 まず、蚊に刺されるとなぜかゆくなるのか? ここからスタートしましょう。


「馬鹿にするな若造が! 蚊がかゆくなる毒を持っておるのじゃろ」


 厳密には違うんですよ。

 あと私は、もう世間的に若くありません…………おっと目から体液が。ごしごし。

 

 蚊は皮膚を刺すとき、吸いだした血液が固まらないように唾液を流し込みます。

 ぎゃひぃ、な事実ですね。


 唾液なんてマジ勘弁、と拒絶する体は『ヒスタミン』と呼ばれる物質を体内で生成し、外部からの敵襲を迎撃。


 防衛戦は苛烈を極め、戦場となる皮膚にも爪痕を残す。そのせいで赤く腫れたり、かゆくなったり……これが俗にいうアレルギー反応ってやつです。


 かなりデフォルメ・簡略化してお伝えしました。知らなくても生きていける知識なので、流し読みで構いません。


 ようするに、腫れやかゆみは、体の防御反応だと思ってください。


 ちなみに、花粉によるくしゃみや鼻水も、同じ仕組みで起こる症状です。



「即刻戦闘を停止せよ! そんな命令オーダーは下していない!」


 残念ですが、この設定は基本的にオートで解除できません。仕様ですご了承ください。

 ですが、困ったちゃんのオートシステムを緩和させる薬があります。


 それが『抗ヒスタミン』という成分。

 文字通り、ヒスタミンに抵抗して大人しくさせます。だからかゆみが鎮まるんですね。


 他にもかゆみに効く成分は様々。

 例えばメントールなんかのスーッとする成分は、冷たい刺激でかゆみを和らげます。


「かゆい部分に刺激を与えるなんて、そそそ、そんな趣味は持っておらぬ!」


 みなさんは経験ありませんか?

 かゆい場所を叩くと、少しだけかゆみを忘れることができるでしょう。


 理屈は同じです。

 異なる刺激を与えることで、かゆみから気持ちを逸らしてくれるのです。


 

いにしえより伝わりし破邪の封印……刺された場所に爪でバッテンをつければ、禍々しき痒みを退けん」


 こんな伝承を耳にしたことがある人もいるでしょう。

 あれも痛みでかゆさをごまかしているだけで、一時しのぎにすぎません。むしろ肌を傷つけるので、破邪の陣を敷いてはダメですよ。



 かゆみ止めには腫れに効く薬も配合されています。

 それがかの有名な『ステロイド』。炎症を強力に抑える成分です。


「うわさに聞いたことがある……一歩間違えば我が身を蝕む、諸刃の剣だと」


 あながち大袈裟でもありません。

 ステロイドは腫れに効果が高い反面、塗った場所の細胞増殖力や免疫力(菌や毒素に抵抗する力)を下げる、というデメリットがあるのです。


 高い攻撃力を持つが、防御力が奪われる。玄人向け上級アイテムみたいですね。

 実際、ステロイド薬をご紹介すると、身構える方も少なくありません。


 ですが、それは使用量を超えてずーっと使っていた場合。

 用法・用量を守って使う分には、非常に有効な手段なのです。


 外国の医療現場でも、初めに効き目の高いステロイド薬を使ってパッと治し、徐々に使用を控える「ステップダウン療法」が一般的なようです。

 早く治るに越したことはないですよね。


 もちろん、ステロイドが入っていないかゆみ止め薬もちゃんとあります。強い薬を使いたくない方は、こちらを利用してください。

 特性や使い方を理解したうえで、お薬を選びましょう。

 迷ったときは従業員に一言どうぞ。



「あのー、そもそも刺されたくないんスけど」


 ですよねー。では虫よけの話もしましょう。


 虫よけと言えば代表的なアイテムはスプレー。

 草むらなどに入るときにシューっと一吹きすれば、蚊も野性のポケモンも寄ってきません。


 昨今の製品は効き目がいい反面、年齢制限が定められている物も多々あります。

 お子様に使う場合は説明書きを読んでから試してください。


 ちなみに薬の相談する際に「大人が使う」「○歳の子が使う」と使用者の年齢を先に伝えておくと、絞り込みをかけてから商品をお勧めするので、話がスムーズになりますよ。



 本日のお話はここからが重要ポイントです。


 スプレーの効果を高めるために、汗を拭いてから使ってください。

 肌に定着する前に流れてしまうと、効果が落ちてしまいます。


 吹きかけた部分を手で塗り広げるのも大切。噴射箇所のムラをなくすためです。

 それに手のひらへの噴射は忘れがち。

 広げるついでに両手にも効果を与えると思えば、それほど面倒ではないかと。


 意外と知られていない使い方なんです。

 今回はこれだけでも覚えて帰ってください。



 お肌の弱い方やお子様には、ブレスレットやシールタイプがおすすめです。

 商品自体に効果がしみ込んでいるので、肌に負担をかけずに使えます。


 効果はスプレーより穏やかですが、重複装備が可能なので、虫耐性を高めたい方はブレスレット+パッチなどの同時使用もいいでしょう。より強固な防御力を獲得できます。


 外に遊びに行く方も、おうちで執筆や読書に集中したい方も、蚊やかゆみに悩まされない夏をエンジョイしてくださいね。

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