第4話 夢見心地の世界なら

わたしは世界を壊した。そして生存という幸せをばらまいた。

言葉にするのは簡単でも実行するのは難しいことだ。だからこそ予想もしなかったしできなかったんだと思う。それなら都合が良かった。わからないまま終わってしまえば楽だから。

悪役になるのは案外簡単だった。やるべきことが決まってたから。彼が驚いたのもわかるけどわたしには悪役がぴったりだった。

でも一つの予想外から悪役は英雄になった。私は彼の中で悪役で英雄になった。

自分で壊した世界を救った馬鹿。そうバカにされたのを覚えている。なにやってるんだろうとは思ったけれど彼といられるならどうでもよくなった。一緒に居られるだけで私はどんなことでも許すようになっていった。そんな自分が誇らしかった。

そんな日々を続けていたら十年が経っていた。けど彼の持つ銀色は未だに私を貫かない。私を向かない。悪役を裁くのは正義の役目だとみんなは口を揃えて言う。けど、私を裁くのは正義でもなんでもないただの人。世界の終わりを知っているただ一人の一般人。はたから見ればそれだけの人だけど私から見れば一番輝いてる大切な物。

十年間で人は変わったと思う。外から帰ってきた人は夢を見ながら街に沈んでいった。

その人は答えにもたどり着いてしまった。でもまだネタバレは禁止だから。バラそうとした悪役は退場してもらった。答え合わせを終わらしてその人は退場していった。

天国の空は今日も青色で清々しい。虚ろな彼は今日も私と一緒に世界の終わりを眺めている。


—ここから先の映像は大変乱れております。ご注意ください—


『フフ…あはは…アナタはダメよ…もうダメなの?わかるでしょ?』


ああ、分かっている。だからこれは正しい事なんだろ?


『えぇ…当たり前のことだけどね。だから守れない悪役には裁きがあるの』


こんなクソみたいな世界でお前はなにを願うんだ?


『うーん……最後に教えてあげたいけど…ま、いっか。教えてあげる』


『私はね、一緒にいたいの。大切な人とずっとずぅぅぅっと一緒にね』


そういうことか。やっぱりこの世界は夢だ。悪夢だ。地獄だ。天国だ。どの言葉でも今の世界を言い表せない。だから俺は監獄がぴったりだと思った。


『答え合わせはここでおしまい。じゃあ、さようなら。馬鹿で役立たずな悪役さん』


銀色の銃に指がかけられる。そして少女は真っ白で純粋な笑顔を浮かべ無造作に引き金を引いた。


——飛び散る血と太陽のような笑顔はノイズのように蝕んでいった。誰でもないたった一人の少年のために——



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