第2話 dead end happy trigger
幼い日の出来事だと思う。たぶんちょっとした子どもの約束事。
その約束は彼女を彼女にする原因で、それは僕が僕だと証明するもの。
十年前の大厄災。誰もが天災だと思ったその地獄がもしも人によって起こされていたら。終末を生き延び今は人類をただの観察対象として扱っていたら?
きっと人々はそいつを殺そうとするんだろう。悪魔だと罵りながら惨殺するのだろう。
だからそうなる前に約束を果たさなければいけない。彼女の願いを叶える為に。
——十年前。大厄災の四日前
蝉の声が響く真夏日だった。外には陽炎が立ち景色が揺らめいていた。
悲しい事にエアコンは壊れた。どうしようもないので扇風機で代用しておいた。申し訳程度の涼しさを感じながら窓の外を見た。
日の光を反射している見覚えのある髪の色。いや、流石にアイツだってこんな日に出てくるわけないだろ。
バンッと乱暴に家の扉が開かれた。こんな開け方をするのはアイツしかいない。
「ショーゴー!!いるんでしょー!遊びましょう!」
大声で自分の名前を呼ぶ。流石に無視するのは可哀想なので返事をしておく。
「おはよう、ティティ」
「うん、おはよう!」
一年前に引越ししてきた女の子ティティ。4歳らしい。らしいというのは本人が多分と言っていたからだ。
「こんな朝からどうしたのさ」
「わたしのゆめがきまったのよ!!だからショーゴに早く教えてあげようって!」
変な子だと思った。初めは親に言うものじゃないのか?と。
「で、夢って?」
僕がそう聞くと彼女は真っ白な笑顔を浮かべこう言った。
「わたしは
「ヴィランってあの…悪役の事だよね?普通はヒーローじゃないの?」
「ヒーローはなんかちがうなーっておもったの」
「へー」
ティティは変な子だ。やっぱり変だ。普通はヒーローに憧れるはずだ。
「……で、用ってそれだけ?」
「あと、ショーゴにたのみたいことがあるの!」
「頼み事?…まぁ、それは中で聞くからとりあえず家に入ってよ」
「うん!おじゃましまーす!」
ティティを僕の部屋に招き入れる。
「はぁぁ…あつかったー」
「そりゃそうでしょ。真夏だよ?」
「そうねー」
しかしティティが暑い理由はもう一つある。真夏なのにティティは上着を着ているのだ。
「…それで頼み事って?」
「あっそうそう!」
ティティは思い出したように声を出している服の中から銀色の銃を取り出した。
「…急に銃なんか出してどうしたのさ」
「んっとねー。ショーゴにはねこれでわたしをころしてほしいの」
「………は?」
殺す?僕が?ティティを?なんで?
「ごめん、なんで僕がティティを殺さないといけないの?」
「だってあくやくはやられなきゃいけないじゃない。だからよ」
ティティはあと、と言葉を付け足した。
「きいたことがあるの。しろがねのだんがんはあくをさばくってね」
しろがねは多分銀色のことなんだろう。だから銀色の銃。それに銀色の弾。
「だからショーゴにはそれでわたしをころしてほしいの。いいよね?」
多分いつものイタズラだろうと思い僕は首を縦に振った。子供心は白色で無邪気。彼女はそれを体現したかのような子供だった。
それから四日後。彼女は夢を叶えた。目指したものになった。
そして違うものにもなった。
悪役の英雄。それが彼女だ。世界を殺したのに世界を救った。
じゃあ彼女を殺す僕はなんなのだろうか。十年前の約束を果たせば僕は悪役を殺すヒーローになるのだろうか。
きっと違うのだろう。ヒーローを倒すのは悪役の役目だ。
だから僕は悪役で英雄の彼女を殺す。正義ぶって彼女を殺すのだ。
それが虚になった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます