死にたがり少女の幸せ理論

楠木黒猫きな粉

第1話 特別なハナシ

当たり前の話をしよう。すでに一般常識になってしまった地獄の話を。

この世界は死んでいる。十年前の大厄災。世界中に死が降り注いだ。

その結果世界人口は一千万を切ったのだ。

しかし、星が終わろうとも人は終わらなかった。

生きる術を与えられたのだ。

たった一人の年端もいかない少女から。

少女はこう言った。


「アナタ達を生かしてあげる。この場所には死は落ちないようにしてあげる。だから、精一杯生き汚れてね?」


その一言を言い終えた瞬間に世界は救われた。どうしようもない悲劇から救われた。

人々は生の喜びに歓喜し死んでいったもの達を悲しんだ。

もうこれで犠牲は増えないと思った人々は余分な物を破壊して色々なものを育て始めた。

初めは四苦八苦していたものの慣れてきてからは他のものにも手を出し成功を収めた。


それを眺めて虚ろな笑みを浮かべる僕に少女は聞いてくる。


「無知って素敵だよね。幸せなんだもん」


ねぇ?と言って隣から覗き込んでくる少女の顔は笑顔だった。


そう、この世界は終わっている。ぼくと彼女だけが知る終末風景。

この世界じゃ僕は悪役なんだ。僕たちは悪役だ。


僕達は知っている。


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