【4月5日 入学式・始業式②】

学校の敷地内から出て、学生寮へと向かう。

寮は学校から少し離れたところにあるが、いかにも一般人が来なそうなところは学校の敷地内と同じだ。

「あぁ〜、憂鬱だなぁ。」

これから卒業まで何年もここで生活するのか。

悲劇だな。

「レッドフィールド君!」

「はいっ!」

慌てて振り返る。

声の主はアキハさんだった。

今朝もそうだったけど、無表情なところが怖い。

「えと……なにか……?」

恐る恐る聞いてみる。

「偶然見かけたものだから。驚かせたなら謝るわ。」

表情を変えずに彼女。

相変わらずの冷たい口調。

オレ、嫌われてんのかな?

「どうだった?」

「へっ……?」

いきなりなんだぁ?

どうって、何を聞いてるんだ?

「学校、楽しかった?」

あぁ、学校のことね。

そうだよな、アキハさんは学園長の孫だもんな。

生徒が学校をどう思っているか気になるんだろうな。

よし、ここは一発。

「楽しいですよ。サイコーです。」

そういってニッコリ営業スマイル。

こうやってご機嫌とれば、少しは表情変わるだろ。

しかし。

「本当にそう思った?」

彼女は全くの無表情。

こ、怖い。

だが、ここで退くわけにはいかん!

「もちろんです! こんなことでウソ言っても仕方ないでしょう。」

嘘八百。

よくぞここまで嘘を並べ立てたな、オレ。

自分自身感心しながら彼女を見る。

————!


「よかった。新入生の子にそう言ってもらえると安心するの。」

彼女はそう言って微笑んだ。

初めて見る彼女の笑顔。

自分の顔が熱くなっていくのを感じた。



「よぉ! 遅かったじゃないの。」

部屋に入るなり聞き覚えのある声。

「これからよろしくな♡」

そう言って声の主、ハルトはオレの肩をポンと叩いた。

そうか、二人部屋なんだな。

これでオレの落ち着ける空間は正式に無くなったわけだ。

まぁ、ハルトはいい奴だから黙っててくれれば別にいいんだけど。

「明日から早速授業だかんな。スケジュール表提出してきたか?」

は? スケジュール表?

「ハハハ、その顔からしてまだみたいだな。」

ハルトが笑って言う。

「いや、スケジュール表ってなんのことだ?」

ホームルームの間、全く上の空でいたからなぁ。

「仕方ない。ルームメイトの危機だ。ついてきたまえ。」

そう言って部屋を出るハルト。

オレは素直にしたがった。

そうするしかなかったからだ。

「時間が時間だからなぁ。」

そう言ってため息をつくハルト。

「付き合わせちゃって悪いとは思ってるよ。」

ムッとしてオレ。

「事務の先生はお帰りになったようで。いかがしやす?」

ハルトが半分ふざけて言う。

「もういいよ。明日になればなんとかなるだろうし。」

早く部屋に帰って寝たい。

それが本音だった。

「そんなこと言って。青春ってのはなぁ、一日一日が大切なのよ。明日やればいいじゃすまないの。分かる?」

得意気にハルトが言う。

青春ねぇ。

オレには睡眠のほうが大事に思えるんだが。

「そうだ! 一番確実な手があったぞ!」

人の話を全く聞かないハルトがポンと手を叩いた。

「いくぞ!」

そう言ってオレの手を引っ張って歩きだす。

「ねむい〜。」

オレはハルトに引きずられるようにして連れていかれた。


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私立魔法学園プリヴェイル 柴咲もも @momo_4839

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