【4月5日 入学式・始業式②】
学校の敷地内から出て、学生寮へと向かう。
寮は学校から少し離れたところにあるが、いかにも一般人が来なそうなところは学校の敷地内と同じだ。
「あぁ〜、憂鬱だなぁ。」
これから卒業まで何年もここで生活するのか。
悲劇だな。
「レッドフィールド君!」
「はいっ!」
慌てて振り返る。
声の主はアキハさんだった。
今朝もそうだったけど、無表情なところが怖い。
「えと……なにか……?」
恐る恐る聞いてみる。
「偶然見かけたものだから。驚かせたなら謝るわ。」
表情を変えずに彼女。
相変わらずの冷たい口調。
オレ、嫌われてんのかな?
「どうだった?」
「へっ……?」
いきなりなんだぁ?
どうって、何を聞いてるんだ?
「学校、楽しかった?」
あぁ、学校のことね。
そうだよな、アキハさんは学園長の孫だもんな。
生徒が学校をどう思っているか気になるんだろうな。
よし、ここは一発。
「楽しいですよ。サイコーです。」
そういってニッコリ営業スマイル。
こうやってご機嫌とれば、少しは表情変わるだろ。
しかし。
「本当にそう思った?」
彼女は全くの無表情。
こ、怖い。
だが、ここで退くわけにはいかん!
「もちろんです! こんなことでウソ言っても仕方ないでしょう。」
嘘八百。
よくぞここまで嘘を並べ立てたな、オレ。
自分自身感心しながら彼女を見る。
————!
「よかった。新入生の子にそう言ってもらえると安心するの。」
彼女はそう言って微笑んだ。
初めて見る彼女の笑顔。
自分の顔が熱くなっていくのを感じた。
◆
「よぉ! 遅かったじゃないの。」
部屋に入るなり聞き覚えのある声。
「これからよろしくな♡」
そう言って声の主、ハルトはオレの肩をポンと叩いた。
そうか、二人部屋なんだな。
これでオレの落ち着ける空間は正式に無くなったわけだ。
まぁ、ハルトはいい奴だから黙っててくれれば別にいいんだけど。
「明日から早速授業だかんな。スケジュール表提出してきたか?」
は? スケジュール表?
「ハハハ、その顔からしてまだみたいだな。」
ハルトが笑って言う。
「いや、スケジュール表ってなんのことだ?」
ホームルームの間、全く上の空でいたからなぁ。
「仕方ない。ルームメイトの危機だ。ついてきたまえ。」
そう言って部屋を出るハルト。
オレは素直にしたがった。
そうするしかなかったからだ。
「時間が時間だからなぁ。」
そう言ってため息をつくハルト。
「付き合わせちゃって悪いとは思ってるよ。」
ムッとしてオレ。
「事務の先生はお帰りになったようで。いかがしやす?」
ハルトが半分ふざけて言う。
「もういいよ。明日になればなんとかなるだろうし。」
早く部屋に帰って寝たい。
それが本音だった。
「そんなこと言って。青春ってのはなぁ、一日一日が大切なのよ。明日やればいいじゃすまないの。分かる?」
得意気にハルトが言う。
青春ねぇ。
オレには睡眠のほうが大事に思えるんだが。
「そうだ! 一番確実な手があったぞ!」
人の話を全く聞かないハルトがポンと手を叩いた。
「いくぞ!」
そう言ってオレの手を引っ張って歩きだす。
「ねむい〜。」
オレはハルトに引きずられるようにして連れていかれた。
私立魔法学園プリヴェイル 柴咲もも @momo_4839
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