どうしても飛ばせない魔王との対談

ちびまるフォイ

ついつい聞いちゃう外道トーク

「クククク……ついにここまで来たようだな。

 殺す前に、すべてを貴様に教えてやろう」


「なんだと……!?」


「今まで倒してきた敵について考えたことはあるか?

 どこから湧いているのか。どうしてお金が手に入るのか」


「……いや」


「クククク……。あれはすべて人間なんだよ。

 もとはすべて人間だったものを私の魔法で魔物にしていたのだ。

 お金があるのもそのため。人間だったころの名残さ」


「なんてことを!! この外道め!!」


「ククク。それもこれもすべては必要だったのだ。

 強くなければ先へ進むことも、金を集めて武器を手に入れることはできない。

 そうして、ここまでたどり着くこともなかっただろう?」


「貴様、それでも――」


「それにまだ話すことがある」

「なに?」


「貴様は私を倒せばそれで終わりだと思っているかもしれんがそれはちがう」


「どういうことだ……」


「私は四天王の中でも最弱。私の上にはまだ3人控えているんだよ。

 それぞれ異なるタイプの力を使い、そうそう簡単には倒せない。

 まぁ、貴様ごときなら私だけでも十分だがね」


「そんなことが……!」


「そして!!」

「まだあるのか」


「貴様はこの世界が1つだとは思っていないかね?」

「なにを言ってる……!」



「貴様は知らないかもしれないが、この世界とは別の裏世界がある。

 四天王たちはその裏世界の出身だからこそ、強大な力を持っているのだ」


「どうしてそんなことを……!」

「いいだろう、教えてやる」


「さっき、私がパンツはボクサー派だと言ったな?」

「言ってない」


「その前だ。この世界の魔物は私が人間を魔物にしたと言っただろう?」

「ああ」


「当然、命乞いする人間も出てくるわけだ。

 『どうか許してください』などとな。

 見逃してやる代わりに、私の尖兵として使うことにしたんだよ」


「なんてひどいことを……!」


「私の手先となった人間は貴様の動きはもちろん、

 危険の多い裏世界へと足を踏み入れさせたりして情報収集をしていたのだ。

 どうやら、貴様は気付かなかったようだがな」


「くっ……! お前だけは許せない!!」



「続いて!!」

「まだあるのか」



「これから死にゆく貴様に私の魔力について教えてやろう」


「ほう……」


「私の魔力は四天王の中でも随一の範囲の広さと攻撃力を誇る。

 ただし、その代償として詠唱にかかる時間が長い。

 能力そのものは申し分ないが、この隙もあって四天王の中では下位なのだ」


「どうやら勝機が見えてきた」


「ククク。本当に能天気な奴だな。私がなんの勝算もなく話すとでも?」


「なに!?」


「詠唱と言っても特別な呪文をぶつぶつ唱えるのではないのだよ、私の魔法は。

 詠唱に必要なのは言葉。そう、こうして普通に話しているだけで

 すでに詠唱ははじまっていてアイドリング状態になっているのだ」


「お前!! それじゃ、最初から話していたのも

 すべて魔法詠唱を行うための作戦だったのか!!」


「当然だ。私は無意味なことと、歩きスマホだけは絶対にしない。

 ククククク、秘密を話すとなれば貴様も聞き入るだろうしな」


「覚悟はいいな、いくぞ!!」




「さらに!!」

「またか」


「貴様、世界の武器や防具がどうして先に進むほど

 いい感じの値段設定になっているかを教えてやろう」


「いやそれは……」


「変に手元にお金を持ちすぎても、金品目当ての野盗に襲われるからな。

 私の尖兵たちが先々の村に行って、値段を調整しているのだ。

 そうして、道中手に入れた資金をちょうど使い切れるようにしているのだ」


「何もかも自分都合で変えやがって、許さん!」



「けれども、しかし!!」

「まだか」


「実はこれは録画されている」

「そうか」



「ところで!!」

「……」


「最近、私に女の子が生まれた」

「話すネタ無くなってるだろ」



「クククク……。どうやら気付いたようだな……!

 しかし、貴様に私が倒せるかな?

 圧倒的な力で貴様に絶望というものを教えてやろう!!」


「いくぞ、勇者!! 覚悟しろ!!」


「フハハハハ!! かかってこい魔王!!

 言っておくが、私は第三形態まであるぞ!!」



魔王が攻撃をしかける瞬間、勇者は待ったと手を出した。



「ちょっと待て。もうすぐ四天王がここに到着する。

 あ、ああ、それとまだ話してない秘密が――ウボアアアアアアアア!!!」

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