第5話 恐怖の練習期間(続)

目を覚ますと自分の部屋にいた。

今度は間違いをしていなくて安堵するとフライパンをたたく大きな音共に起きなさいという声が響いてくる。

「あと五分、、すー」

眠気に勝てず、また眠りにつく。


姉さん達とよく一緒に遊んだ公園だ。

「ハル?、どうしたの?」

二人の顔がフィルターがかかったように思い出せない。

「姉さん達は僕が守るから」

「ハルちゃんは恥ずかしいことをよくそんな大きな声で言えるね〜」

「ハルちゃん言うな。ていうか、僕はハルじゃない。悠里だって」

「読み方が違うだけだって」

「それ結構ダメだよ。人の名前間違えてるようなものじゃん」

「ハルちゃんのお姉ちゃん達が呼ぶ愛称だよ」


すっかり目が覚めると頰を温かい雫が流れている。

「な、に、、ないてる、んだよ。僕は、、こん、な、の、、姉さ、んが、、見た、ら、、、笑われ、る」

目を何度も擦るが止まらない。

「悠里?もうみんな出たわよ」

扉が開き向くと、エレナが立っていた。

「「あっ」」

「ご、ごめん。私に起こされるのがそんなに嫌だとは、、」

驚いたエレナは扉を強く閉めた。

「ち、違うッ、誤解だっ!」

「なんで泣いてたのよ」

「いや、、なんというか、、、夢で昔のこと思い出したんだよ。それで懐かしくて、、」

止まったはずの雫が再び滴り落ちる。

「あ、、遅いから見に来たと思ったらエレナちゃんが悠ちゃんを泣かしてるっ!」

ノックもせずに入って来た綾羽が僕に抱きつく。

「違うわよッ!なんで私が悠里を泣かすのよっ!」

「そうだよ、僕は泣かされてない。エレナにも言ったけど少し昔のこと思い出しただけだっ」

「エレナちゃん、ダメだよっ。いくら悠ちゃんが他の女の子にモテるからって八つ当たりしたら」

「違うッッッッ!なんで私がこいつのことが好きで無駄にモテてるところに苛立って泣かしたみたいな感じになってんのよッッッッ」

「違うの?」

「違うわっ!」

「悠ちゃん?なんでそんな悲しい顔してるの?大丈夫、私がずっと一緒だからね」

綾羽が僕の頭を自身の胸押し付けてきた。

「く、くるひぃ」

「だ、か、ら、なんでいつも抱きしめてんのよっ‼︎」

「エレナちゃんはまな板だもんね」

「ななななッ!、私の胸見て憐れむなぁッッッッ!」

(この二人の会話って永遠にループするよな)

「あんたも黙ってないで何か言いなさいよっ!」

「いや、、僕が、言っていいものでもない気が、、、」

「そう、あんたも私の薄っぺらくて小さなまな板を見て哀れんでるのね」

「お、落ち着いて。誰もそんなこと言ってないよっ」

「何をしてるんですか、二人は」

とチフ達が部屋に入ってきた。

「悠里くんを呼びに行ってくるって言うから待ってたけど全然帰ってこないし、、」

「「よくよく考えてみれば、、「あんたのせいじゃないッ(悠くんのせいじゃない)!」」

「よし、寝よう」

三人まとめてチフ達に三時間説教され、その後は腕立て300、腹筋300、背筋300という地獄を味わった。


教室に入り、自分の席は座ると映司が話しかけてきた。

「よっ」

「ああ、おはよう」

「どうだ?ハーレムの気分は」

「ハーレム、な。そんな幸せなら良いんだけどな」

「なんだ、その顔。まるで自分の破滅が来ることを分かった上で今の生活に馴染もうとしてるみたいな感じだぜ?親友よ」

僕のことを見透かしてるかのような真剣な目で見てくる。

「・・・」

「まさか、まじ、なのか?」

「な訳あるかっ」

「だよな。ま、困ったことがあったら相談してくれよ。俺たち親友だろ?」

「ああ、そうだ、な」

「みんなぁ、座って〜。悠里くんが転校してきたばかりだけどまた新しく仲間入りする子が来たから」

「き、綺麗」

とクラスメイトの女子が言った。

翡翠色をした髪、睨まれただけで燃えそうな灼眼の少女が入ってきた。

「初めまして、アメリカの方から来ました。ロニエ・シグトゥーハです。以後お見知り置きを」

(嫌な予感がする)

席から立ち、後退る。

「どうしたんだ、、、」

映司の言葉は途中で途切れ、まるで時間が止まったみたいに静寂になる。

「私の能力が効かない、、ってことは貴方も適合者ってこと?」

「適合者?なんだよそれ。あんた、一体みんなに何をしたんだよっ!」

「時を止めたのよ」

「時を止め、た?」

「ええ。改めて世界の秩序を守るための守護機関"ユートピア"No.5、"ビショップ"ことロニエ・シグトゥーハ。よろしく」

「世界の秩序?ユートピア?ビショップ?あんたさっきからなに訳のわからないこと言ってんだよ」

「はぁ、先自己紹介してくれない?」

「僕は、霧宮悠里」

「霧宮、悠里?ってことは貴方が最高重要監視対象の適合者ね」

「?」

「どっから説明しようかしら、.ま、これは一番に説明しておくわ。守護機関"ユートピア"は私たち適合者即ち

六年前に起きたプリンセスホテル、、いえシンギュラー症候群の感染者と呼ばれる特殊能力者を保護する組織。この世界及び亜空間を我々が"神"と呼ぶ存在が生み出し、現実世界が歪みを生じているのよ。それを防ぐには六人の支配者で"神"とこの空間を時空の狭間に封じ込める必要があるわ」

「ごめん、理解できない」

「貴方は、あと数ヵ月すれば絶命する。でも、"神"を倒せば死ぬことはない。だから私たち"ユートピア"に協力しなさい」

「聞いてなかった?言ってることが理解できないんだって。六年前の事件がまるで僕の夢だったみたいじゃないかっ!」

「そう言ってるのよ。ここは破滅し、絶望した貴方が創り出した本来の世界とは異なる世界よ」

「僕が、創り、出した、、?」

「ええ、全てを失った貴方が」

「う、嘘だっ!」

「信じるか信じないかは貴方の想像に任せるけどこのままじゃ貴方は自分の夢によって殺されるだけ。良い返答をまってるわ、

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