第53話 お土産は…M!
…山巡り冒険ドライブ隊が竹之高地の長兵衛家に戻って来たのは昼下がりを過ぎた頃であった。
「お帰り~!うわっ !? どうしたのみんなっ?」
玄関前の庭先でミツイが出迎えてくれたが、車からぞろぞろとサダジを除き泥玉マーブル人間と化したみんなが降りてきたのを見て驚いた。
「いや~道が悪くてさ、ちょっと車が途中でスタックしちゃったんでみんなに押してもらったら泥が跳ねただけだよ、大したことないさ!」
サダジはサラッと言ってのけ、マーブル人間たちのコメカミをピキらせたのであった。
「とにかくもう、今すぐお風呂の支度するから!…いや~大変大変!」
この頃の竹之高地に給湯器とかシャワーだのがあるはずも無く、ミツイはあたふたとお風呂の準備にかかった。
(大変だ!今すぐお風呂の支度!…っていうパターンは確か昔どっかであったような気が…?)
ミツイの行動を見て、王子はなぜか強いデジャヴ感に襲われたが、とっさにははっきり思い出せなかった。
…この日の夜には盆踊りが不動様の境内で行われ、一年中で竹之高地が最も華やかに賑わうときである。
今回は五郎作叔父が盆踊り唄を張り切って歌い、楽しい夜となったのであった。
…翌日、楽しかった竹之高地の暮らしに別れを告げ、王子が松戸に戻る朝が来た。
サダジやフミと一緒にボンゴ1boxに乗って帰るのである。
「王子!またらいんなもむけぃにいくすけな~!」
※訳(王子!また来年も迎えに行くからね~!)
キノが少し寂しそうに言った。
「うん!…ばあちゃんも元気でね~!」
王子もさみしさをこらえて笑顔で応えた。
…サダジが車に荷物を積み込んでいると、東勝さんがやって来て、
「叔父さん、土産にこれを持って行かないかい?」
と言って一升ビンを差し出した。
例のマムシが入っているビンである。
「こないだ王子と一緒に捕まえたやつなんだけど、マムシ酒にするのにちょうど良い頃合いになったから、要るなら持って行って下さい」
東勝さんの言葉にサダジは二つ返事で、
「そりゃあもちろん頂くよ!ありがとう」
と答え、ビンを受け取ったのである。
…みんなで朝御飯をいただいた後、ボンゴ1boxは本家や親戚の人たちに見送られながら竹之高地を出発した。
…車は山を下り、新潟平野に出ると国道17号を南へと、関東方面に向かって舗装路を気持ち良く飛ばし始める。
「…まさかマムシ連れて帰ることになるとは思わなかったよ!…うぅ気持ち悪い」
フミだけが足元のマムシビンを見てはぶつぶつ文句を言いながらの帰路であった…。
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