マオ・シャガットガートに殺される「一」
カクヨムが私を飛ばしたのは、過去に何度も来ている小説の中の世界。ラジオ局のようなセットは、私の連載小説『殺罰―さつばつ―』のあるエピソードの中。
殺罰予告編①「マオちゃんです」(バランスが悪くなるから『』では囲えない。)
これは殺罰の現時点での最後のエピソード。私が殺罰の連載を一時停止したくて、本来ここに来るはずだった第二部の冒頭になる話を消し代わりに差し込んだもの。
登場人物の一人であるマオが一人でいろいろと「メタい」視点から語るという、アニメとかにありがちな予告編だ。
昨日確認した際のPV数は……0。まだ誰にも見てもらえていない。
「また来たんですか、ネコロネコ」
「う……うん、ごめん」
マオは私に冷たく言い放つ。つややかな黒髪、真っ黒な黒曜石の瞳。そして上から下まで黒い服と、とにかく黒の並ぶマオではあるが私はその設定をまるで活かしきれなかったことをマオに会うたびに思い出す。
「せっかく来たんだから、話し相手くらいしてくださいよ。私はここから動けないんですから」
部屋の隅にある小さな冷蔵庫から、マオは私に日本語で『スプラッシュ』と書かれたジュースを取り出し私に渡す。マオの生きた世界は日本語が普及している。彼女が作中でよく口にするダジャレも、もちろん日本語。
でもマオは私に一度もダジャレを言ってくれない。きっと心を許してくれていないのだろう。
「私のフルネームは?」
「マオ・シャガットガート……」
「意味は?」
「猫って意味の言葉をいろいろな国の言葉でつなげただけ……」
マオの質問に私は答える。静かな威圧感を感じながら。
「私がどんな人にでも敬語で話す理由は?」
言葉に詰まる。確かにそれには理由がある。でも決して良い理由ではない。ボツになった第二部と第三部の間にある過去編で、マオの敬語を「敬語を使えば相手より自分が下に見られて守ってもらえると思っている」と批判したキャラクターがいたほどだ。
「別に答えなくていいですよ。じゃあ次の質問をしますね、貴女は私が嫌いですか? ネコロネコ」
「いや、そんなことないよ! むしろ好きなキャラクターだし……」
「好きなキャラクターを、こんなキャラクターにしたのは何故ですか?」
私はその質問には答えられなかった。殺罰は、公開していない部分まで含めるとたくさんのキャラクターが出てくる物語だ。マオは、その中でも特に鬱屈したキャラクターだ。作中でマオに対して他のキャラクターが冷たい視線を向けるシーンなども私は書いた。そして意図的に、読者から嫌われかねない行動も取らせている。
「ダリルダリル、あの子は本当に可愛いキャラクターですね。さすが貴女が強さをテーマにして作っただけあります」
「あ……ありがとう」
ダリルダリルというのは、マオと一緒に暮らしている不思議の国のアリスが大好きな、生体兵器の少女のことだ。
「アンネ、あれも素晴らしいキャラクターだと思いますよ。金属の両腕、改造に改造を重ねた外法の塊と呼ばれる身体。それでいてたまにノリの良いところを見せちゃう的な憎めない性格。さすが殺罰以前から何度も貴女の小説に登場してきたキャラクターなだけありますね」
マオが殺罰以前に私が書いた作品のことを知っているのは何故だろう。カクヨムが教えたのだろうか?
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