一人称に殺される「四」
ポケットの中に入っていた小銭は、私が現実の世界で入れていた小銭。ここでそれが使えるのは私がこの小説の舞台をリアルな日本としたおかげ。
宮姫と少しだけ話したあと「また来ます」と園芸店を出た私は、公園の自販機で買った缶コーヒーを飲みながら、カクヨムが私に体験させる現象について整理する。
①カクヨムに投稿、下書きした小説の中に飛ばされる→この考えは間違っていた。私が書いた小説が全て対象になる可能性あり。
②キャラクターに殺されないと私はその作品から出られない。
③私はキャラクターに、私が作者だと認識させることができる。(能力?)
①は今日、間違っていたことが証明された。私が今いる小説『妖蘭』はカクヨムに下書き保存すらしていない。つまりカクヨムは私が今まで書いてきた全ての小説に干渉できる可能性が高い。
③については、やや曖昧だけれどまずまず正解だと言えるはず。私は今日まで、四人のキャラクターに、私が作者だと認識させることに成功している。(そのうち一人は、私からではなく向こうから認識してきているけれど、あれは特例のはず。)
そして、②はあの生きたカクヨムロゴから直接言われたから正解だ……というか、正解とするしかない。(あんなものに逆らうほど、私は勇者ではない。)
「はっ、はっ……」
突然息が吸えなくなってしまったのは、過呼吸がおきたせい。いつだって過呼吸は突然だ。まぁ、考えがぐるぐるしだしたからそろそろ来るかもくらいは、思っていたけれど。
そういえばカクヨムに来る前、私は過呼吸をインフェリオリティー・エマージェンシーと呼ぶ未来世界の小説を書いていたっけ。あれはどうしたかな……。
過呼吸は脳の酸素を奪うから思考が曖昧になる。
今は今は、手で袋の代わりを作り過呼吸を止めることに集中しよう。
たくさん考えないようにしつつ、過呼吸について考えすぎないようにする。そうすれば、すぐに落ち着くはず。
落ち着くはず。
落ち着くはず。
落ち着くはず。
落ち着いてきた。
落ち着くはず。
よし、落ち着いた。
最近よく過呼吸になる私は、過呼吸の止め方も上手くなっていた。
「ふぅ、もしかして……」
控えめな深呼吸をして脳に酸素を戻していた時、ふと、この過呼吸はもしかすると本当の過呼吸ではなく小説的な、つまり私の空想の過呼吸なのかもしれないと言う考えがよぎる。私は小説世界の中以外で、過呼吸を体験したことがないからだ。
「どうでもいっか……あ」
私は走り出した。ある人物を見つけたから。彼なら、彼なら私を――――。
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