自問自答
雪霧
自問自答
「君は、人生についてどう思う?」
突然にそんなことを訪ねてきた彼は
挑戦的で
でも少しだけ悲しそうな
そんな笑顔を浮かべていた。
「人生?」
「うん、人生。」
そんなことを急に聞かれてもと言いたくなる。
それでも僕は、彼からのその質問に答えねばならない気がして
期待に…応えねばならない気がして…。
「人それぞれが生きるもの…かな。」
と、曖昧なことを言ってしまった。
「つまり?」
すぐに彼が、説明するチャンスをくれる。
「つまり、世界線ってのがあるだろ?」
僕は唐突に話を大きくする。だってそれが僕の答えだから。
「あるね。」
彼は真剣に聴いてくれている。だから僕も話ができる。大勢の前で演説をする著名人のように気持ちよく、熱弁することができる。
「世界線ってのは、いわゆるパラレルワールドで、今僕たちが生きている世界とは違う、でもほとんど同じ、絡み合っている世界のねじれだ。互いに不干渉でも、無関係ではない。人間の一生、つまり人生も同じじゃないかと考える。」
「なるほど、なんとなくわかってきた。」
彼は本当に理解が早い。だからこそ僕は彼にしかこんな話ができず、彼も僕にこんな質問を投げかけてきたのだ。
「そう、最初に言った通り、人生とは人がそれぞれに生きるもの。人が生きた過去、人の生きる現在、これからの未来、その一本一本が世界線のように絡まり、それぞれがいろんな形で関係しあっている。そういうものだと僕は思うよ。」
一通り語り終える。
この答えで彼の期待に応えられただろうか。
「うん、いいね。やっぱり君は面白い答えをくれる。だから質問したくなる。実に有意義だった。」
彼は満足げな笑みを浮かべ、そう言った。
よかった、僕の答えは彼にとっていいものだったらしい。
そこで今度は僕から彼に質問を投げかける。同じ質問だ。
「君は人生についてどう思うの?」
すると、彼は少し悲しい顔をして、僕の問いに答えた。
「人生とはジェットコースターのようなものだと思っている。」
「つまり?」
その抽象的な答えに、僕は具体性を求める。
「人生はね、始まったらもう過去には戻れない。乗ってしまったら降りることができないんだ。あとは死という落下にむけてのぼるだけ。」
そんなことだろうと思った。
彼はいつもこういうことを考える。
だから時折、寂しそうな、悲しそうな顔を見せるのだ。
それは誰にもわかってはもらえないから。
「それが、悲しいんだね。」
「うん、とても悲しい。僕たちは終わりを知って、そこに向かっているようなものだ。そこに死という終わりがあると知って。」
人生とは何か、死とは何か、考えるには僕らはまだ若いかもしれない。
でもこうやって、現実と向き合う時間は、悲しさを覚えることが多くても、有意義だ。
つまり
彼は僕
僕は彼なのだ。
自問自答 雪霧 @yukikiri3880
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