4月10日 満開の──

 一面が、淡いヴァイオレットに染まっていた。

 雪車町地蔵です。


 藤の花が……満開と、聞き及びましたので。

 そっと持ち場を抜け出して、花見に行ってまいりました。


 藤棚のように整然とされたものではなくて、野に咲く山藤が、ただ自然のあるがままに咲き誇っているさまは、はらり、はらりと、心の中に情感という花びらを舞わせるには十分でございました。


 一枚の花弁も落ちることなく、そこにフジは咲いているのでございます。

 山々の雄大な自然が、緑が下地を塗りつぶす中で、あちらにひと群れ、こちらにひと群れと、フジが刺し色となりまして。

 そうして目の前では、わっと押し寄せるようにたくさんの山藤が、その可憐な花を咲かせているのでございます。


 これには私も、心のなかがえもいわれぬ感情でいっぱいになってしまいまして、もしもお酒があったのなら一口、筆と紙があったのなら一句読んでいただろうという、そういった心持でございました。

 このようにしていま、文字を認めていますのも、その心の動きを残しておきたいと、そう思うからに相違ないのです。


 藤の花は、摘んで衣をつけて油で揚げると、てんぷらになると言います。

 同じように、フジの実も食用となります。

 食べ過ぎれば毒ともなりましょうが、このように見つめ続けると、心にまでフジの色が移ってしまいそうで、或いは目の毒やもしれません。


 抜け出してきたことがて連れ戻されるときも、お酒が欲しいと世迷い言を言ってお説教をされました時も、私の心のなかでは、あの淡い藤色が揺れていたのでございました。


 桜散る散る、嵐山。

 なれど山藤、いまこそ満開。


 どうぞ読者諸氏さまも、この機に一つ。

 ご覧に行かれましたら、幸いにてございます。



(文体をころころ変えるんじゃあなぁい)

(感極まったものを伝えるにはこちらの方が適しているんですよ)

(描写力が足りない)

(課題ですね。それでは、アデュー!)

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