1月8日 テリーヌを作れとおっしゃるか

 お腹減り給え……

 雪車町地蔵だ。


 知り合いからいただいたテリーヌを、従妹がやけに気に入ってしまい私に作れとか無茶ぶりをしてくるので、適当にごまかすことにする。

 そもそも我が家に、テリーヌ皿はない。


 鶏ひき肉に小麦粉、パン粉、片栗粉、卵、それからいつもの酒醤油味醂砂糖、あとクリームチーズとタイム、ローズマリー、セイジ、バジルなど、その辺にあった鶏肉にあいそうなハーブを投入し、よく混ぜる。


 茹でたアスパラガス、ニンジン、ウズラの卵などを、こねた鶏肉で包み、ラップで巻いてしばらく冷蔵庫で寝かせる。


 味がなじんだら、ラップを巻いたまま電子レンジで火を通す。

 オーブン? 蒸し器? そんな面倒をやる余裕はない。


 火が通ったら、フライパンに薄く油を敷き、表面に軽く焼き目をつける。

 あとは美味しい感じに切ってやって、完成だ。

 いわゆるだが、なんとなくテリーヌっぽいなにかに仕上がっている。

 完成だ。

 完成と言ったら、完成なのだ。


 想定していたものと違ったらしく、従妹にはしばらくガンをつけられたが、最終的にはニコニコ食べていたのでセーフだろう。

 そも、材料的にまずくなる理由がない。


 今回はなんちゃってテリーヌだったが、読者諸氏はきちんとしたものを食べて、作ったひとに美味しいと言ってあげてほしい。

 それは何よりの、ねぎらいの言葉だから。


「前と同じテリーヌじゃなかったけど、美味しかったよ、あにーちゃん!」


 ……笑顔でこう言われれば、努力しないわけにはいかない。

 次は、きちんとしたテリーヌをご馳走しようと思うそりまちなのだった。



(で、味は?)

(不味くないって言ってるでしょう? 食べれますよ、おかずとして)

(チーズ入りハーブつくねなのでは?)

(それに反論するほどのパワーはないですね。それでは、アデュー!)

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