7月15日 ひまわり畑で捕まえて

 蒼い空。

 流れる雲。

 水平線。

 見渡す限りの、向日葵。


 背の高い向日葵が、ゆっくりと風に揺れる。

 出先で見つけた黄色の畑。

 太陽を追いかける花の中に、スッと影が消えていく。


「見えないと不安ですか」

「どうですかね。せめて、手をつないでいれば」


 そんな会話に、意味があったかどうか。

 日差しに目が眩んだ隙に。

 影は、いなくなってしまう。


 探して回るけれど、ちっとも見つからない。

 熱射の中で、汗が滴る。

 向日葵が揺れた。

 そこにいるのかと手を伸ばせば、風がすべてを揺らしてしまう。


 ああ、はじめから独りきりだっただろうか。


 そんな感情が芽生えて、棒立ちになった時。

 小さな笑い声が聞こえた。


 振り返って。

 崩れ落ちそうなぐらいに、安堵する。


「どうすれば、あなたは安心しますか」

「手を、繋いでくれれば」


 蒼い空。

 流れる雲。

 水平線。

 見渡す限りの、向日葵畑で。


 私は、差し出された手を取った。

 はにかむ。

 眩しい笑顔が、向日葵のように。



(ポエット!)

(たまにはね、こういう日もありますよ)

(だがおぬしは殺す)

(アイエエエエエ!? それでは アデュー!)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る