2
ここは、学校。
今は、昼休み。
隆之はハイテンションになっている。
「お前そんなにうれしいのか?林ん家行けんの」
「・・・・・・・・・・・・」
「あ、赤くなってら」
普通そうなるであろう。
佳代子は自分のことをどう思っているのか。
今一番気になることNO.1である。
からかわれながらも、太陽のように明るい隆之であった。
佳代子は明るい。いつものことだけど、今日はとりわけ明るい。
その理由は、単純だ。
珍しく足が吊らなかったからだ。
ただそれだけである。
にゃーおー
佳代子に向かってたずねたいことはたくさんある。
~小倉とかいう人とどんな関係なのか~
~その人にいつも何をしてもらっているのか~
子供の癖に何いってるの!と近所のお姉さんに言われそうだ。
かのメス猫はあたしのいい相談相手だ。
クリスマスまでに抜け駆けしといたほうがいいのかな。
隆之の心は揺れる。
いや、でもやっぱその日に言ったほうがいい。
揺れる。高波に乗った船のように。
どっちだ!?
船の中に自分の心。
酔いそうだ・・・・・・
肉体も、こころも、同時に頭を抱えた。
恋ひとつでこんなに悩む自分なんて見たことなかった。
「佳代子!」
「あ、美香ちゃん、栞ちゃん」
「集めておいたよ、この人数」
「・・・呼びすぎ」
名簿に13人の名前が。
「あのねえ、これじゃ17人も集まることに―」
「一人多いよ?」
「小倉君も来るの」
「そうなんだ」
別に、私はそれをたいそうなことだと思っていませんでした。
肉体も、こころも。
「あ・・・いってえ!!」
そんなときにまた足が吊りました。
「誰か助けてくれ~・・・」
こうしてクリスマスは私たちに向かって走ってきます。
にゃー
なぁーおー
みゃぁぁー
猫たちがどこかで集会をしている。
「しってるの?あの小倉君とかいう人」
「私の家の隣に住んでいるのよ、その子」
しらなかった。
「何?佳代子さんの知り合い?」
「んー・・・なんていうかもっとふかいかんけい?みたいな・・・」
おねえさんはかんがえている。
近所ではちょっとうわさのきれいな人だ。
少したって、おねえさんは言った。
「それはつまり、恋人同士ってことね!」 確信したようなひびきの声。
「そうなのかな?佳代子はなんとも思ってないみたいだけど」
「それは恋人同士だからよ。」
やっぱり子供のあたしにはわかんない。
「・・・佳代子?あたし手伝ってあげようか?」
「自分で治す・・・・・・」
「大丈夫?帰れる?」
「うん・・・・・・」
佳代子の足が吊った。
でも、今日はなんとなく様子が違う。
いつもそばに居るはずの隆之がいない。
「私も自分で治せるようにしなくちゃ・・・」
そのとおりである。
「林・・・・・・?」
「え?」
やっと治りました。でも、そのときに・・・
「自分で治したの?」
「うん」
私は誇らしげな顔をしているはずです、いまはきっと。
「じゃあ、俺の出番はもうないかもな」
「・・・・・・・・・・・・」
教室には私と彼しかいないはずです。
「一緒に帰る?」
そんなことを考えていると、不意に彼の声。
「・・・・・・うん」
思わず外を見るともう夜の帳が下りていました。
「ほら早く」
彼が私の手を握って引いています。
「ごめん」
あわててついていきました。
彼の手のぬくもりを初めて感じたときでした。
すごく冷たかった。
金管楽器をいじっていたからだろうか。
彼女の手はすごく冷えていた。
だからもう少し引っ張って自分の手と一緒に、自分のコートのポケットに入れてやった。
自分の顔は今赤くなっているだろう。
夜の暗さにまかせて、俺らは歩いている。家路を。
腕を組んでいるようだ。
彼らが家路を急ぐ。
寒い。
たぶん、手袋なんて持っていないんだろう。
隆之のこころはまた船のように揺れていた。
今、告っちゃおうかな。
あっちへ、こっちへ。
でもやっぱりクリスマスのほうが・・・
どっちへ?
そっちへ。
優柔不断だ。
また、彼は感情と一緒に頭を抱えた。ついでにはぁーっとため息をついた。白いもやが生まれて消える。
「小倉君・・・?」
はっ。
「あ・・・?」
「どうしたのさっきからひとりぼやーっと」
「・・・あ、いやなんでもない」
見抜かれそうになっている。
「顔赤いよ」
「え!?」
「寒いもんね」
「・・・・・・うん」 手はそのまんまだ。
言いたい。
好きだ、って言いたい。
でも、ムリだ。
そのかわり、隆之はポケットの中で彼女の手を力強く握り締めた。
クリスマスが今年もやってくる。
林家はかなりの人なのにそれをすっぽり収納してしまった。
17人。
集まったのがそれだけである。
しかし佳代子の家のリビングもでかかったので、それなりに助かった。
かなりの人です。 栞と美香はどうも、人を呼びすぎた!!と実感したようです。
私も思っています。
来すぎ。
でもみんな私の足を治した人たちなので・・・
断ってはいけない、と思った私でした。
にゃ~
「さくら!危ないから来ちゃだめ」
なぁ~お~
「あっちいってて」
佳代子は今日に限ってこれだ。
「何?林んち何かいるの?」
「猫」
「うわぁー、かわいい・・・」
にゃあ~
あ。
抱き上げられた。
この手は何だ!?
にゃぁ!
「あ痛!」
こっちも痛かった。床に落ちたから。
「ひー・・・小倉お前大丈夫かおい・・・猫に嫌われたか」
あれ?小倉さん?
ごめんなさい、少し右手引っかきました。
「ごめんね小倉君・・・うちのさくらが・・・」
「大丈夫、お前のせいじゃないし」
どうやら片思い中なのは俺だけか・・・。
今日はクリスマス・イブだ。
というか、人、多い!
いったい何人呼んだんだ?林は・・・
隆之はさくらに引っかかれた傷をおさえつつ、自分は時の流れに身を任せることにした。
飲んだり食べたりしながら、どこか忘年会のような時をみんな過ごしている。
酒はなし。ジュースしかない。
料理は佳代子と母の手作り。これがまたうまかった。
そして、みんなはだんだん歌ったり騒いだりと、宴会状態へと突入していった。
「林」
「はい」
みんなは二人に気づいていない。
「はいこれ」
紙包みだ。プレゼント。
「あ、ありがとう」
「あ、ここじゃなくてみんなが帰ってからあけて」
先に言っておいた。
「わかった」
みんなは気づいていない。佳代子はダッシュで自分の部屋に行き、机にそれを置いた。
戻ってみると、みんなはいつの間にか隆之を巻き添えにして歌っていた。
「あしーたがあるー、かよちゃーん、一緒にやろうぜ!」
すっかり極楽ムードである。
やれやれ、と思いつつ、佳代子は空いたお皿を台所へ持っていった。
程なくして、大量の水が流れる音がした。
聖なる夜・・・?
これをイエス・キリストが見たらどう言うだろう。
満天の星空の中を15人前後の学生がうろうろしながら帰っている。
今は夜9時を回ったところだ。
「どうしよう・・・今日明日親二人旅行に行ってるからなあ・・・」
佳代子の隣で隆之がぼやいた。
「泊まっていく?」
「いや、妹いるし・・・」
「連れて着たらよかったのに・・・」
「邪魔でしょうがないよ」
なんとなく二人は一緒にいた。
「あー・・・星が綺麗」
佳代子は隣にいる。
「あ、そだ、もし泊まるんだったら妹連れてきなよ」
「よくねえよ・・・あいつうるさいよ」
「楽しいじゃない」
佳代子は分かっていない。
普通は学校の男子を家に泊めたりするはずがないのだが・・・
隆之はそう思っていた。
脈がある。
これはいけるかも。
「どーすんの隆之?そんじゃ俺んち泊まってく?」
女子よりは男子に泊めてもらったほうがいい。
「あー・・・・・・・・・・・・」
優柔不断だ。
「そうする」
結局男子の家に泊まることとなった。
「じゃあね~」
「うん」
寒かった。
にゃぁー
「さくら」
寒い。
「オッケ、帰ろっか」
佳代子は暖かい。
部屋に戻ってみると、自分でおいた隆之からのそれが机の上にあった。
「あ、そっか。プレゼントもらってたんだ」
包装紙をといた。それは結構小さかった。
「わあ綺麗・・・」
そして同封されていたクリスマスカードをみた。
すると、そこには・・・こう書いてあった。
『好きです・隆之』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます