足がつったら(執筆時中学一年生)
1
佳代子です。
私はしょっちゅう足が吊ります。
自分では治せません。必ずほかの人を巻き込んでしまいます。
私はしょっちゅう人に迷惑をかけています。
「いたっ!」
また足が吊った。
「大丈夫?佳代子・・・次、体育だよ」
「なっ・・・治せない・・・」
「あーあ、またかぁお前は!かしてみろ」
高校では体育のある日に限って足が吊る。
佳代子の足、でもこれは日常茶飯事だ。
でも、ある意味彼女は足が吊ることで周囲の友人と深い絆で結ばれているのだ。
今佳代子の足を揉み解している彼、小倉隆之もその一人だった。
「痛いいたいイタイ・・・」
「このくらい自分で治せるようになってほしいよ全くもう・・・」
「ごめん・・・痛い・・・毎回迷惑かけて」
「ヒマだからいいんだけどね」
みんなが私を特別な目で見ることはありません。
私の周りはいたって平和です。
全世界がこんな風に平和だったら、もう二度と戦争なんか起きないのです。
それが、私の今の願いです。
それに私は、今まで私自身のことを恋愛対象にしている人はこの人たちの中にいないと思っていたのです。
私は本当に恵まれています。
木枯らしの吹く、12月。クリスマスがもう近くに迫ってきています。
今年は友人をみんな招待して、クリスマスパーティを開こうかなと思っている最中です。
「送って行ってやろうか?」
「いいよ、迷惑かけるから。先に行ってて」
「俺も急がなきゃ」
隆之が走って去っていく。
佳代子はしばしひとりとなった。体育館へ急ぎたいけど、また足が吊ったらやばい。過去に何回そんなことがあったっけ。
痛む足を引きずり、ゆっくりと歩き出した。
人は私にやさしいです。
でも、いつまでも迷惑をかけることは出来ません
。 ヒトはひとりで生きていくことは出来ないといいます。でも・・・
私はもっとしっかりしなければいけません。
いつか仲間に背を向けられることがあるでしょう。
足を自分で操らなければ。
「林佳代子。欠席か?」
「いえ、あのヒトはまた足が吊りました」
「またか」
出席簿の佳代子の遅刻欄にはたくさんチェックがつけられている。
「いったい何回遅刻したら気が済むんだろうな」
別に佳代子は体育が嫌いではない。だったら、なぜ・・・?
そのとき。
「・・・遅れてすみません」
「お前はよく足が吊る。なぜだ?」
体育の教師・中原は腰に手を当てていて、目が三角の状態である。
「わかりません」
「・・・運動不足だからだ」
足が吊るのは仕方ない、と私は思っています。
でも、そのたびに人に迷惑をかけてしまいます。
成長したい。 そんな気持ちが私にはあります。
「林」
「はい」
部活が終わった。という、そんな格好をしている隆之がそこに影を落としていた。
「一緒に帰ろうぜ」
「・・・うん」
ふと気づくと、あたりはもう真っ暗だった。時刻は7時。
佳代子は吹奏楽部が終わったところである。
「運動部じゃなくてよかったんじゃない?」
「そうね」
佳代子が運動部だったら、始終足が吊って部活をやる暇がない。 それでは足つり部である。
「まだ足痛い?」
「慣れてるから」
大丈夫、の言葉が迷子になって出てこなかった。
彼は私のことをどう思っているんでしょうか。
私は恋愛対象なんていないけれど。
男女の枠を超えて友になれること。
作り上げてきたその絆はもろく、ガラスのように繊細です。
いつまでも大事にしたいと思っています。
クリスマスの近づいた夜の街に、家路を急ぐ二つの影がある。
吐息は白くなって散っていき、やがて見えなくなる。
雪の降りそうな曇った空。でも雲の白さも分かる。
聖なる夜を前に、二つの影は少し間をおきながら歩んでいく。
ひとりは少々足を引きずっている・・・
佳代子だ。とすると、もうひとりは誰だろう?
にゃ~お~
足元に何か居る。猫だ。
なぁ~お~
「あ、さくら」
「あ~?」
「うちの猫ちゃん」
「あ、はいはい」
佳代子はそういって猫を抱き上げた。
「小倉君は始めてだよね、さくらに会うの」
「うん」
小倉君って言うんだ。 じゃあ下の名前は?
抱き上げられたさくらは耳の上を掻いた。
「寒そう」
「早くつれて帰ってコタツの中にいれてやったほうがいいんじゃないの?」
「そうかも・・・っと・・・いてっ!!やばっ!!」
「あ!?また?」
佳代子の足が吊った。
佳代子はよく足が吊る。
今日はたしか小倉とかいう人にまた助けられて帰ってきた。
その光景がちょっと恥ずかしくてよく見てなかったけど。
目に焼きついた。
まだ子供のあたしにはよくわかんない関係みたいだ・・・
「ごめんなさいね、うちの子ったら・・・」
「いえ、いいんです・・・・・・」
寒さのせいだろうか、隆之は頬が赤い。まるで寒い中を走ってきたように。
でも、実際にはほとんど走っていなかった。
「ごめんね、小倉君・・・またあした」
「さようなら」
隆之は感じていた。
彼女はただの友達なんかじゃない。
ベッドの中で考える。
「はあ・・・・・・」
どうやって佳代子に打ち明けようか、この想い。ずっと前からなのか?それが今日のあれで爆発したのか?まったく・・・
隆之の考えていることは深い。
にゃー
「あ、さくら」
なぁーおー
「いってくるね」
にゃーおー
今日は体育がないはずだ。
佳代子は少しハイテンションだ。
足が吊らなくてすむからかな。
「ねえ、どうするよ?今年のクリスマス」
「佳代子ん家でしょ、やっぱ。広いし」
「じゃあほかにも5人ほど誘っといて、美香ちゃん」
「All light!」
キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン
「あ、鳴った」
「じゃ、また後で打ち合わせよう」
「小倉君も来る?」
「え?」
「クリスマス、私ん家」
「行く」
即答かよ。
林家のパーティに行けることが決まった。
俺は今最高に幸せだ~!・・・たぶん、緊張もしているけれど。
7人が集まる予定です。
うまくいったらいいな、と思っています。
12月24日のことです。
私の周りは、いい人がたくさん居ます。
「いて!足吊った!」
佳代子の足が吊った。
にゃあー
「さくら・・・どーしよー・・・こうなったら!!」
どうやら佳代子は自分で治すつもりらしい。
「なおれーなおれーなおれー・・・・・・」
こうして、今日も更けていきます。
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