エピローグ
あれから15年くらいたった。
「久しぶり、何年ぶり?8年?」
会場でいきなり自分に話しかけてきた彼女の顔を見た。誰かと思って振り向いてみれば、奈緒だ。本当に久しぶり。
「・・・っ、奈緒!」
懐かしくなって俺は体の中心から言葉をあふれさせた。自分の顔が思わずにやけるのが分かる。そんな俺の様子を見た彼女は、自分も少々にやけながら言った。
「どう、仕事は?」
仕事。俺の今の仕事は、ぶっちゃけ奈緒が見つけてくれた。華の大学時代、偶然地元のカフェで奈緒にばったり遭遇、その時就職先のことで愚痴をこぼしていた俺に彼女が紹介してくれた。「哲哉の性格ならあってるんじゃない?誰かのために何かをやるっての」その時言われた言葉は覚えている。・・・え?その前の俺らはどうしてたか、って?
別に何もなかった。奈緒と俺は月日が経つにつれていつの間にか自然消滅していたし、お互い何も未練なんてなかったし。だから今はいい友達の程度で付き合っていると言ったら・・・それはそれでひどいかもしれないね。
「まあまあ順調さ・・・寝不足だけど」
「まあそれじゃあしょうがないよね」
奈緒とは違う声が背後から聞こえて、肩越しに振り返って見たら武内だった。なんと、自分が覚えている中学のあのころと比べてみたら見事に痩せている。そう、大体2分の1ぐらい。
「うわぉ、武内、久しぶりだけどいくらなんでもそれはお前痩せすぎだろ!シャレにならないよ」
俺のその反応を見て、武内はいかにも得意げにこう言った。
「へっへー、運動っていいねぇ」
「そういえば直美は?」
ふと気づいた奈緒が会場を見渡してその人物がいないのに気が付いた。本当だ、言われてみれば見当たらない。
「ああ、あの子は今ロスにいるよ。キャスターの現地派遣なんやららしいよ。ほら、あそこでまた大きな事故あったから・・・あ、倉田と斉藤だ・・・なんか斉藤でかくない?」
彼らを遠目に見つけながら武内が言った。あたりを見回して見ると、本当だ、いた。斉藤はあんなにチビだったのに、30センチは伸びたようだ。直樹は、さらに貫禄が出てきたようだ。まったくまだ20代だって言うのに。
そんなことを考えながら彼らを見ていたら、なんだか急に可笑しくなってきた。
あのころは、中学のころは自分達は本当にタダのガキだったなあ。人の気持ちを考えもせずによく人を傷つけていられた。それでも、あのころを懐かしく思うのはやっぱり自分が年をとったからだろうか。
ビールを啜りながら思い出した。そうだ、俺結婚したんだった。それを奈緒達に言うのを忘れていた。
目の前の酔いかけた奈緒はどんな反応を見せるだろう?祝福してくれるだろうか?
俺は口を開きかけた。
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