爪紅点して

シナモン・タヌート

(詩)


紅殻格子の 鳥籠の内

そよ風吹きて 奪われし心

背高き君は 小首傾げて

ただ我を見る ただ君を見る

茶色の瞳 映る この身は

清らかなりて 夢見る如し


鼓動に合わせ 回る歯車

巻き込まれるは 朱色の襦袢

白肌露に 染めるは男

愛より深き ものを知らずに


眩む一時 玉の緒二本

堅く結びて 離れぬように

刹那を永遠に 変えんとするも

頬伝うのは 時の雫か

酷な運命を 恨む間に

恋という名の 沼に沈みて

朝の来ぬ夜を 請い願うのみ


誰かは知らぬ 男に抱かれ

瞼の裏で 君想う日は

張り裂ける胸 押し殺しては

出任せ紡ぐ 唇の毒

漂い流る 汗の香りは

いとかぐわしき 死への誘い


陽光に舞う 埃の如く

儚く浮いて 落ちるこの身か

君待ち顔の 狂女と化して

窓枠乗りて 童謡歌う


さあ


この身の奥に 愛を刻まん

君の手の中 舞い踊るだけ

燃え上がる夢 海老反る心

玉の緒五指に 絡めて喘げ

君より他に 要るものは無し

途切れる声で 睦言吐いて

朝日に消える 君の影抱く

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