第5話 ネコ魔王とお風呂
私とニャー様はお昼からお風呂にやってきていた。
普段からニャー様にお昼に入浴する習慣があるどころか、入っているところを見た事がなかった私は以前に入る事を勧めた事がある。
その時、ニャー様はこう仰っていた。
「ネコ族は基本的に風呂、水を被るのを嫌にゃ。ニャーは風呂に入ってる時はいいにゃが……毛並み的に乾き難いのが気持ち悪いにゃ」
何よりネコ族は風呂に入らないでも臭く成り難く、毛のないネコ族は時折入る必要があるという不思議現象らしい。
確かにニャー様は臭くない、むしろ良い香りで興奮、いやいや、安心する匂いがする。
しかし、今日は海に落ちてしまわれて塩水のせいでべたつき仕方がなくお風呂にやってきていた。
同じように海に落ちた私もご一緒している訳だ。
というか、私が飛び付いたから一緒に海に落ちたという言い方もあるかもしれない。
「お召物を脱がれるのをお手伝いします」
「いいにゃ、それよりレティス、自分の着てるのを……にゃにゃ!? いつの間に脱いだにゃ!」
ニャー様が驚いて見つめる先には私が脱いだビキニアーマー一式と下着などを綺麗に畳んで置いているのを目を丸くして見た後、私を呆れたような半目で見つめてこられる。
ふっふふ、これでも王族でありながら身の周りの事は侍女に任せずに自分でやっていた成果です。
「これでも騎士だったのでテキパキする習慣が身に着いてます」
どうだ、とばかりに胸を張る私をまだ呆れを解除してないニャー様が下から上へと視線を動かす。
これでも騎士の男達の間では是非、拝んでみたい体とコソコソ話されてた私の無駄な肉が付いてないプロポーション。
屈んでニャー様のマントを取ろうと屈む私の胸を肉球で突いて言ってくる。
「どうして、この無駄肉があるのに、咄嗟に逃げたニャーを追って飛び付けたにゃ?」
「こ、これでも人相手でこの数年、誰にも負けておりませんので……ああん、優しくお願いします……」
はぁはぁ、と荒い息を吐く私を嫌そうに見つめながら肉球を離すニャー様を見て私は先程とは違う温度の息、残念に思う溜息を零す。
優しく、と言ってるのは止めて欲しいと言う事ではないのに……女性の止めても一概に止めろという示唆じゃない事もありますが、ネコ族であられるニャー様には難しいでしょうか……
これから時間をかけて知って貰いましょう!
手をワキワキさせる私から、やや視線を逸らしたニャー様が言ってこられる。
「レティスは色白過ぎるにゃ? 病気にゃ?」
「いえ、私は日焼けしない性質で肌を焼こうとすると赤くなるだけなので……」
そんな私を見て、フーンと言うニャー様はニャンハット、目と耳に水が入らないように設計されたネコ族のシャンプーハットを小脇に持たれる。
どうもネコ族の目から見ると色白なのは体が悪そうに見えるらしい。今までは人々に透き通るような青い瞳に輝く金髪の白磁を思わせる白い肌をした戦乙女と言われてきたがニャー様達にはそうは思われない。
無駄肉を付けた病気気味で鼻血と涎を垂らす人間のメスという評価だ。
1つずつ誤解を解いていくしかないと私は意気込みながらニャー様の背中を押して風呂場へと行こうとするがニャー様が振り返る。
「レティス、風呂に浸かる前にまずは顔を洗うにゃ? その涎はともかく鼻血が湯船に落ちたら赤くなるにゃ」
「……はい、分かりました」
1つずつ誤解を解いて行こう。
体を一通り洗い終えた私達は湯船に使っていた。
「にゃあぁ……上がった後の事を考えなければ風呂はやっぱりいいにゃぁ」
蕩けそうな顔をされるニャー様に萌えない選択肢がない私はギュッと抱きしめて胸の谷間に挟み込む。
挟まれた事で湿度が上がって不快指数が上がったらしいニャー様がじたばだされるのを楽しみながら体を洗って差し上げた時の事を思い出す。
胴体を洗う、首よりしたを洗う時は平然とされてたいたが、頭の番になった時のニャー様を思い出すと笑みが浮かぶ。
私に差し出すニャンハットを突き付けながら言ってこられた。
「ニャンハットを過信するのは厳禁にゃ! 万が一があるにゃ、注意するにゃ!……ニャーは耳に水が入ったり、目に石鹸が入ったら泣くかもしれないにゃ!」
そう言ってる段階で既に泣かれてたニャー様がいた。
当然のように萌えた。
思い出し笑いをする私にニャー様が声を荒げられる。
「にゃ! レティス、鼻血で湯船が赤くなり始めてるにゃ!」
ニャー様に言われて鼻血を噴き出している事に気付いて抱き締めてた手を離すと飛んで逃げるように離れられてしまう。
洗い場にいかれて洗い直されるニャー様を申し訳なさそうに見ていた私が近づいていく。
「お、お洗いします!」
「いいにゃ。レティスに洗わせたら何度も入り直しにゃ」
呆れるように溜息を洩らすニャー様に申し訳なさそうに目を伏せるがブラシを尻尾で掴んで背中を洗う姿を見て私は鼻から赤い噴水を出しながら仰向けに倒れる。
「尻尾でぇ! 可愛過ぎるぅ!」
幸せ一杯な私の耳にニャー様の嘆きの溜息が聞こえた気がしたがきっと気のせいと割り切り、私は幸せの余韻を楽しんだ。
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