学校にいる奴と才能について


 



 最近、とあるクラスの人間と将来について話し合った。


 ここは企業のグループディスカッションの場ですか? と疑問が湧くようなことをなぜ僕がしているのかは、話の流れで、としかいいようがない。


 そいつはなんでも将来税理士になりたいらしく、お金の計算ともなれば体からフラストレーションが巻き起こり、興奮せずにはいられないそうなのだ。正直、僕は彼の見た目から税理士のようないかつい職業というイメージはできなかったので、心底驚いたのだが。これがギャップ萌えというやつなのか、ムムム……。


 教室内には他にも、何か人より秀でたものを持っている人は、限りなく小さな範囲であるけれど、いることにはいる。観光ビジネスに興味持ってる人間、数学のガチオタク、心理学志望者、はたまた私と同じく小説家への道を歩もうとしている人も、いたりした。

 

 そうなんですよね。高校に入って、しかも同じクラスに、まさか私の同志がいたとは。「絶対、同じ趣味の人はいますから!」という高校勧誘でのセリフはまさに体現化されたものの、私とネタがかぶってしまうことにひどく不安を覚えるのだ。


 アイデンティティの消失、といえばいいのだろうか。自分の個性、「これだけは絶対他人には負けんだろう」という横柄おうへいさを揺るがす事態におびえてしまってる。


 待った、と俺は熟考する。俺にだって、何かあるはずだ。人よりも、何が優れているものが……。


 あ。


 このエッセイかもしれんな。


 学生で、しかも自分の身を晒し続けている随筆者なんてそうそういないな。うん。良しとしようか!


 ……宣伝にも気合い入れないとな。読んでくれなきゃ話にならんから。



    ※     ※     ※



 今月、読んだ小説の中で面白かったのは、『探偵は教室にいない』(川澄浩平/創元社)という本。タイトルからのご推察のとおり、学生×推理の王道パターンを沿っている感じである。が、中身はちょっと苦みが混ざっている。


 主人公は中学生のガキ! しかも性格がひねくれ者! そのくせ不登校! というなんとも救いがたいような男子生徒・鳥飼歩であるが、決してこれは悪口ではない。むしろ私の大好物。本屋でパラっと立ち読みしたところ、セリフのひねくれ具合、態度等々から、「これは、俺が読むべき本だな……」という宇宙からの交信をグッとキャッチしたような感じになった。わりと運命だったのかもしれない。


 ひねくれ具合というのは、彼が中学生にしては身の丈に合わない、偏屈を持ち合わせた言葉選びのことである。例えるなら、『ガリレオ』の湯川学の学生時代、みたいな。大人からしたら生意気なだけの中学生をイメージしてもらえれば。


 ストーリーとしては、海砂真史という女のコが、ふと生まれた謎を解き明かしてもらうべく、幼馴染の歩のところに行く、ミステリーのジャンルでいえば「日常の謎」に当たる推理小説だ。新人推理小説賞の中でも裁定が厳しいといわれている「鮎川哲也賞」を受賞しているので、大人向けにも見えなくないが、どちらかといえば中高生向けのような気がする。ライトノベルにいても違和感がない、逆に一般書籍で出しても大丈夫。それだけ設定がきちんと成り立っているのは僕が保証しておく。


 なにせ、この話はなんといっても、登場人物がちゃんと生きていることにあるのだ。小説内で登場人物の性格が混合することなく、個性が個性として際立っているのがいい。中学生ならではの心の動き、という感想ももちろんだが、やっぱり僕は主人公のけだるげな性格に惹かれる。


 ガリレオもそうなんだけど、捻くれてレスバの強そうな人好きなんですよ。度が強すぎるのはウザいだけだろうけどさ。


 やっぱ、そういう人ってちゃんと「自分」を持ってるんじゃないですか。自分はすぐ影響されて、あっちへフラフラこっちへブラブラ寄り道しちゃうタイプだから、真逆、いや理想像なのかもしれない。この歩くんもさ、出かけるときはタクシーを使い、ケーキは特定の店のものに限る。不登校ニートのくせして睡眠時間をきっかり決めているのも憎めない。かわいい子でしょう?


 僕もクソ真面目さを振り切れれば、何か変わるんじゃないかと思ったり思わなかったりする。






















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