男同士の愛を愛する男の話 




 いつか前のエッセイで僕は男子校通いであることを公表していたが、あれから僕の元に「お前はホモなのか?」という手紙が大量に届いていたのでお答えすると、残念ながら(?)ホモではない。


 逆に、僕が超の付くほどの女好きなのはあまり大声では叫べない。しかし私は本気であるぞ。夢の一つに「女の子とイチャイチャいろんなことする」というのを掲げるぐらいにね。実現するかどうかは置いといて。


 男子校をホモの巣窟と考えている人もいるようなので訂正してくが、私が認知している限りでそういう性癖を持った人はいない。


 繰り返す。『認知している限り』である。だから、もしかしたら、そっち系の人はクラスの中でいるのかもしれない。


 まあ、仮にいたとしても「私は男の子が好きだ」と公表するのはいささかはばかられるものだ。よくないことに、今のご時世で好意的に受け取ってくれる方はそういういない。



 ところで、僕の仲良いクラスメイトに少々イカれた奴がいる。そうだな、名前を仮に「太子」としておこう。はっきりいって変人だ。男なのに、男のアイドルグループを育成するゲームをやっている。


 彼はどうやら、男同士の恋愛に興味を抱いているらしく、腐女子ばりの妄想癖だ。


 例えば、うちのクラスに仲の良いM君とH君がいる。Mはちょっとぽっちゃり気味の男子で、逆にHは小学生並みに背が低い小柄な女の子のような人だ。二人はいつも一緒にいて、談笑をしているのだが。



「絶対、あの二人デキているよね!!」



太子は僕に興奮した口調で問いかける。

「だって、いつもベタベタしているんだよ!!」


「はぁ……」と僕はいつも空返事をするだけに留めている。


 この間など、太子の持っている『ひつじのショーン』の筆箱をHが「かわいいね」と褒めたので、



「Hのほうがかわいいよ」



とわりとガチめのトーンでいってしまったらしい。


「あれ、絶対H引いてたよ……」と太子は後に反省していた。そりゃそうだろ。男が男に「かわいいね」っていう状況からみてもカオスだ。



「まずい……このままだと、MとHの仲に嫌な亀裂が入ってしまう……」


「お前も入れて、三角関係になるんじゃないの?」


「それはダメだ! 俺は二人の仲を向こうから眺めるのが好きなの! 二人の恋を応援するだけなんだよ! そんな、俺が輪を乱すようなことは……」



 ……こいつ、完全に腐れ切ってるな。


 なんか、こういう性格の人三浦しをんのエッセイでさんざん読んだぞ。腐女子ならぬ腐男子か、てめえは。



 最近は、また新たなカップルを見つけたと報告してきた。サッカー部(イケメン)のTと丸刈り坊主で皆から「キン○マ」と呼ばれているYの関係。


「見てよ、あの二人! いつもTがYの上に乗っているんだよ。休み時間になるたびに。あれ絶対、当たってるよね!(何が、とはいわずもがな……) これね、意外とYが『攻』でTが『受』なんじゃないなってヤバいわ、もう……」



 そう考えてしまうお前の脳みそのほうがヤバいと思うんだが。やれやれ、と僕はなんの反論をする気も失せていたのだった。














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