ムンクの叫びは俺が大事な番組を録画し忘れた時の自画像
夏休み前から行きたいと思っていた絵本作家レオ=レオニの展覧会に足を運んだ。なぜ夏休み中に行かなかったのかって? まあ、いろいろ立て込んでて、わざわざ都会に腰をよいこら上げる気力がなかったんですよ。この日は近くでやぶ用があったんでそのついでにってことで。
会場は新宿! うーん、都会! 暑い! 人多い! と三段縛りの地獄の中、僕は駅構内をうろちょろと歩き回っていた。端的に言えば、迷子になってしまったのだ。スマホのマップと駅の地図を照らし合わせて「よし、こっちだ!」と威勢よく歩き出した先は予想外の場に出たり、「じゃあ、こっちだ!」と野生の勘で方向転換するもまるっきり逆方面だったりで散々だ。自分の現在地が分からないんだから、どの方角へ進んでいいのか検討かつかないのだ。なんか、スマホを持っていながら道に右往左往するってよくわかんない行為だよなぁ(GPS機能を入れて現在地わかるようにしろカスという助言はごもっともなのだが、プライバシー保護上それをOFFにせざるを得ない)。今いる位置を把握しようと、すぐ近くの目に付いた「スタバ」って検索してみたら、地図上の至るところに「スタバ、スタバ、スタバ……」の情報が出てきて嫌になった。
汗を垂らしながらスマホと睨めっこしつつ、ようやく目的地にたどり着く。いやあ、方向オンチって困った難病ですなぁとか感じつつ、冷房の効いたビル内に入る。一階がレオ=レオニ作品のグッズ売り場になっていて、実際の原画とかを展示しているのは42階(!)まで上がるそうだ。もちろん、最新鋭のエレベーターが一瞬で乗っている客を上空近くまで押し上げてくれた。
客といえば、意外にも集客率は高かった。場所が新宿とはいえど、レオニの作品を鑑賞する人など中々いないのではと勝手に思っていたが、家族連れ、若い女性たちのグループ等々の方々が訪れているのを見て、世間で認知はされているのだなぁと嬉しく思った。仮にも、ごく一般的な教育を受けていたら「スイミー」の作品には通るもんね。
彼女らの会話を盗み聞きすると、どうやらアート系のお勉強をしている人たちのようで、「この色彩が……」とかどうとか専門的な用語を使い話をしている。いや、わからんね。俺は絵に関しては門外漢なのだよ。ただ単に、レオニの絵本が好きだっただけなのでね……。
だから、感想としては小学生レベルのものしかいえない。「すごい!」「天才!」「いいね!」「Twitterで広めておくよ!」……だめだな、こりゃ。
いや、決してバカにしているわけではないぞ。「自分とは何か」をテーマに
絵本を描いていたのは「なるほど」と手を叩いたし、反戦への思いを子どもたちへのメッセージにへしていたところとか面白かった。不思議な世界観の中に、愛着を持てるようなイラストやストーリーの発想力も、大いに感心した。
昔の話をする。幼稚園ぐらいだったかな。レオニが書いた「あおくんときいろちゃん」ていう話がちょこっとトラウマになっていてた。青色くんと黄色ちゃんの友達同士が仲良しすぎて合体しちゃって一つの緑くんになってしまう。おうちに帰ろうとしても、それぞれの子と同じ色を持つ親は「緑? 誰ですか? うちの子は青色です」「私の家は黄色の子なんですけど」って言われてしまい、親に子どもだと気づかれず帰れなくなってしまった二人はいっぱいいっぱい泣いてしまう。緑から出た涙はそれぞれの青色と黄色であって、元通りになりめでたしめでたしというお話。
まあ、昔の僕にとって親から否定されるのが何よりの怖いことだったから、温かいおうちに帰れなくなった、あおくんきいろちゃんに強く感情移入してしまったんだろうな。今だったら、「なに? 青と黄が合体? それって、セッ○スしたってことか? 許さん! 幼児同士が性行為を働かすなんて卑猥だ!」とわめくところだろうが。昔は純粋だったんだね。
ああ、妄想ばっかりで低能になりそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます